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紅の章 第百十七話 蕗伎と祥伽

 光騎士が血を吹いて倒れた。

 祥子の悲鳴があたりに響く。

 その騎士の後ろにいた将軍は前に立つ若者を見た。

 一方、祥伽もまた前に立つトモダチを見てため息をついた。

「蕗伎、腕は治ったのか?」

「まだまだ複雑にボキボキ。こんな短時間で治るわけないじゃん。俺、普通の人間だよ?」

 利き腕でない左で戦う蕗伎はそれでももう騎士を数人倒していた。

 まだ余裕を持った顔をして。

「普通の人間が、人を襲わない」

「ああ、そっか。普通じゃないな。暗殺者だから」

 蕗伎は照れたように顔を掻いて笑うと、刃を祥伽に向けた。

「ねえ、祥伽、祥伽と兄貴をここで殺したらこのまま引き下がるよ。美珠にこれ以上迷惑かけないようにね。そしたら騎士だって死ななくてすむんだけどな~」

「俺だって死ぬ気はない」

 祥伽は懐から銃を取り出すと、蕗伎に向けた。

 冷たい光沢を見て蕗伎はを緩める。

「そうこなくっちゃ」

 一つ蹴りだし飛び掛ってきた蕗伎を将軍がなぎ払う。

 蕗伎はそれをかわすと、今度は右足で地面を蹴り、祥伽に剣の切っ先を向けて飛んだ。

 けれどすぐに将軍の左手に握られた剣がそれをはじく。

「馬鹿ボンは厄介な奴に狙われるようになりましたね」

「馬鹿ボン言うな!」

 祥伽は将軍の剣戟を縫って銃を撃ちはなった。

 けれど蕗伎はそれを避け、将軍の右手を切りつけた。 

 間一髪将軍が退くと、再び祥伽の銃が襲う。

 軌道は完全に蕗伎の左腕だった。

 蕗伎は左腕を持ち上げた。

 目で追えない速さの弾丸を剣で受け止めたのだ。

「わ、もったいないことしちゃった。避ければまだ使えたのに」


 蕗伎の焦りのない声が祥伽の耳に届いた直後だった。

 また祥子の悲鳴が漏れた。

 自分達が戦う反対からも黒服が数人近寄っていたからだ。

「将軍、そのおかしな奴、任せたぞ!」

「は」

 祥伽の銃は黒服を狙うが、数が多かった。

 すぐに弾が切れ、補充しようとする黒服が祥子たちへと走り寄った。

「っち!」

 祥伽が母を守ろうと立ちはだかると闇の中で何かが伸びてきてすぐに黒服の悲鳴がきこえた。

「な、なんだ?」

 祥侘が目を凝らすと暗闇の中で何かがうごめいた。

「ご無事か?」

 現れたのは黒い甲冑に巳を包んだ一団。

「暗黒騎士団」

 暗守は祥伽に一度頭を下げると、率いてきた部下と供に彼らを守ることに徹するようだった。

「ああ、こっちの分が悪い。でも、こっちだってやらないとダメなんだ」

 蕗伎は自分達の分が悪くなってもどこか楽しんでいるようだった。

 自分達と旅をしていた時と何一つ変わらない顔だった。 

「蕗伎」

「ん、何? 祥伽」

 すでに真後ろにまで迫っていた蕗伎が振り上げた剣を見て、その大きくできた隙に将軍が刺そうとした。

 けれどそれを祥伽が止めた。

「よせ、こいつは友達なんだ!」

 相手が敵だと分かっていても命令を聞いた将軍は一瞬躊躇した、それを見て蕗伎が笑みを漏らし、将軍の肩に切りかかる。

 血が祥伽と蕗伎の顔を汚す。

「ぐ!」

「将軍! 蕗伎! お前!」

 怒鳴ろうとした祥伽の頬に冷たい金属が当たった。

 今、将軍を傷つけ、その血で汚れた蕗伎の剣。

 祥伽と蕗伎の目が合う。

 驚愕に見開かれた祥伽の瞳と怜悧な蕗伎の瞳。

「蕗伎。本気で殺すのか」

「そうだよ。だってそれが俺の絶対聞かなきゃいけない命令だから」

「お前!」

 祥伽は銃を向けた。

「それ、弾がないの知ってるよ?」

「どうかな。今、補充した」

 祥伽が引き金をひこうとし、蕗伎もまた刺そうと剣を一度引いた。

 そして最後にお互いの名前を呼び合った。

「蕗伎!」

「祥伽!」


今回は、「殺し合い」です。


銃と剣を向け合った二人、この後生き残るのは!



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