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紅の章 第百十二話 祥伽の思惑

「ちょっと、祥伽これは冗談ですまないんじゃないかしら?」

「別に冗談で済ませるつもりはないさ」

 祥伽は美珠の頭に銃を突きつけたまま、相馬に声をかけた。

 祥伽の中での美珠の一番はこの男だったから。 

「お前達の夢は何だ?」

「え?」

 相馬は突然の言葉に詰まったが、すぐに答えを口に出した。

「俺は美珠様の作られる国を補佐する。美珠様の隣に常に立って」

「お前は?」

 後ろにいた珠利は剣を構えながら美珠を心配そうに見ていた。

「お前にはないのか? 夢は」

「うるさいなあ! 美珠様を命かけて守ることだよ。だから離して! かすり傷でもつけたら許しはしないよ!」

「珠利」

 二人の言葉は涙が出るほど嬉しい言葉だった。

 二人がこれほど信念を持って自分に接してくれているとは思ってなかった。

「へえ、お前は?」

 目が会ったのは国明だった。

「美珠様の治められる国を平穏にし、美珠様とともに民と騎士と心豊かに暮らせる国を作ることだ」

「へえ、どいつもこいつも美珠美珠と、ご大層なことだ」

 すると祥伽は銃の安全装置をはずした。

 その衝撃が美珠へと伝わってくる。

「お前達の夢を奪うのも楽しそうだ。そうだろう? 美珠が消えればお前らの夢は消える。叶わなくなるわけだ」

(祥伽何を言って)

「自分達も夢を奪って生きてるんだ。同じだろう」

「何のこといってるのさ!」

 相馬が叫んだ。

 すると祥伽は騎士達をからかうように見ていた。

「そうだろう? 女だからこの国の試験には受けられない、そのことと、この姫が誰かに殺されてお前達の夢が叶わなくなることに違いが何かあるのか?」

「え?」

 問い返したのは美珠だった。

 すると赤い瞳とぶつかった。

「お前は人の夢を叶えたいと思ってるんだろう! だったら気持ちを貫け。人の顔色を見てする政治など傀儡だ」

「祥伽」

「お前の国には優秀な女が埋もれてる。官吏になりたくてもなれない女がいるんだ! それでも夢を捨てきれずに勉強してる。そいつのためにお前は何をしてやれる!」

(自分がしてあげられること)

 そんなこと一つしかなかった。

 そして祥伽の先ほどの言葉が泉のように湧いてくる。

「王族の特権……」

「お前は周りを困らせたくないと思っているんだったな。そんな遠慮する相手など、お前の国づくりには邪魔なだけだ。排除しろ!」

 美珠は勇気を出そうとした。

 これだけの人の前で命令などしたことはない。

 けれど必要なことだった。

「大丈夫だ、お前が馬鹿姫だと言われて嫌われようが、俺はお前を嫌わない。この国に住むことが困難なら俺が秦奈国へ連れてってやる」

 その言葉が妙に嬉しかった。

 きっとどんなことになってもこの国を離れたりはしない。

 けれどそんな風に言ってくれる友達がいる。

 ありがたいことだった。

「ありがとう。女性を雇ってていう命令はできないけれど、それに向けた命令はしてみる」

 美珠が決意して頷くと祥伽は美珠の頭から銃をおろした。

 それと同時に美珠は息をひとつ吸い込んだ。

「今すぐ、重臣会議を開いてください。私からお話があります」

「美珠様! 大丈夫?」

 相馬は美珠に駆け寄ると祥伽から引き離し、美珠を国明に押し付けた。

 美珠は国明と目を合わせたが、今は恋する女の子には戻れなかった。

 今は跡継ぎと騎士団長。

「国明さん、父をそして重臣を」

「はい」

 美珠のその目を見て国明も団長として頭を下げ走っていった。

 一方、祥伽は騎士団長たちに取り囲まれ、手を挙げた。

「少しふざけていただけだ。部屋でおとなしくしてる」


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