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紅の章 第十一話 姉貴分

「美珠様、夕飯食べよ?」

 珠利は自分の夕食をわざわざ食堂から運んで美珠の部屋を訪れた。

 美珠は本を読みながら夕食を取っていた。

「夕食中まで勉強?おいしくないよ?そんなの!」

「今日は一日、ゆっくりしたから。」

「まじめだね。美珠様は。」

 珠利はそういって美珠の頭を撫でて、前に座ると自分の夕食をかきこんでゆく。

 美珠はいつも姫ではなく妹のように接してくれる珠利が好きだった。

「珠利はいいね。私もそんな性格になりたい。」

「え?」

「珠利みたいに何でも笑えるようになりたい。広い心が持ちたい。」

「広くなんてないよ。」

 そうまじめな顔で言ったあと、頭を掻いた。

「広くはないけどさ、無神経なんだよね。ハハハ、よく上官にそれで怒られるんだよね。もっと気を遣えってさあ。」

「ホント、ガサツ女は、もっと気を遣えってんだ!」

 相馬は食事を終えたのか、部屋に来ると三人分のお茶の支度を始めた。

「はあ?何でヒヨコに気を遣わないとなんないのさ。馬鹿じゃないの?」

「何?未来の上官にたてつく気?」

「あんた、将軍にでもなる気?」

「なって見せるさ、その時にはヒヨコなんて呼ばせないからな!このガサツ女。」

すると珠利は不機嫌そうに立ち上がってトレーを持ち上げた。

「珠利?」

「ヒヨコの分際で偉そうに。さてと、仕事あるから戻るね。」

「お茶は?」

「ん。いいよ。ヒヨコ、自分で飲みなよ。道代さんのお茶、おいしかったけど、ヒヨコのお茶薄いんだよね。」

「折角入れてやったのに。」

「自分で飲んでみな。じゃあ、美珠様よく噛んで食べるんだよ。」

 珠利は美珠にだけ笑みを向け手を振って出ていった。

「あいつ、本当に勝手だね。さっさと食べてさっさと帰ってさ。」

「忙しいのに、きてくれたんだよ。」


 珠利は食堂に戻るとトレーを置いて自室へ戻ろうとした。

 騎士とは違い兵士は無法地帯といってよかった。

 上官の命令を聞くという統制面では整っていたが、仲間の絆というものは皆無。

 珠利の視界には嫌な笑みを浮かべる兵士たちが数人いた。

「おい、また上官に取り入ってきたのか?」

 その言葉を珠利は無視していた。

 すると男たちは珠利について歩いてくる。

「なあ、どうやって、その特別待遇もらったんだ?いいなあ、俺も女の体があれば特別待遇になれたのになあ。」

 男たちが笑うと珠利は一度立ち止まった。

 けれどすぐに歩いてゆく。

「今も、将軍とやってきたんだろ?どうだ?俺たちも相手してやるぜ?」

 珠利は何も言わず、ただ部屋の扉を閉めた。


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