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紅の章 第百話 帝王

二人はお互い穏やかな表情を浮かべたまま、暫く風に吹かれていた。

「私がいつ下働きの女だって気がついたの?」

「旅の途中だ。だから、この国にもう一度やって来た。美珠がちゃんとあの戦闘を切り抜けてここへ帰れたのか確認するために」

「心配してくれたんだ」

「ああ。トモダチだからな。そんな友達を置いて俺は逃げたしまった。これでも結構心配してたんだ」

「団長達が助けてくれたの」

「そうか。給料分は働かさないとな」

「充分働いてもらってます」

「あいつらいくら貰ってるんだ?」

「え?」

 そういわれると分からなかった。

(国明さんに聞いてみようかなあ。大体普通の官吏っていくらぐらいなんだろう)

「そうだ、今日、夜になったらこっそり酒でも飲むか。いい酒を持ってきたんだ」

「飲む飲む!」

 盛り上がる二人の後ろから声が聞こえた。

 低いけれど心地よい、そして優しい声だった。

「美珠様、祥伽様、お探しいたしました」

(まずい!)

 美珠は抜け出したことがばれて慌てて取り繕うとした。

「あら、暗守さん、ごめんなさい。」

 振り返ると暗守と国明がいた。

(国明さんまで!)

「国明さんも、もしかして探してくださったんですか?」

「ええ、席にいらっしゃいませんでしたので」

 その笑顔はいつもの嫌味を言うための笑顔ではなく、男に連れ出された愛する人を心配していたものだった。

「ごめんなさい、この王子様が気分が悪いなんていうものだから」

「そう言って姫を連れ出したが、姫を落とす前に見つかってしまったか」

 祥伽が大人の男を気取って言った言葉が、あまりの祥伽の実態と離れている言葉で美珠は噴出した。

 すると祥伽はチラリと美珠を睨んで、話を自分達からそらそうと国明に声をかけた。

「まあ、夜の帝王のあんたには負けるだろうが」

(だから違うんですよ!)

 祥伽の隣であからさまに口を尖らした美珠を見て国明は別に取り繕うわけでもなく、社交的な笑みを浮かべた。

「いいえ、帝王ではありません。むしろ私の愛する人のほうが色々な意味で帝王ですね。彼女はどれだけ私が餌をまいておびき寄せても、他に興味が沸くと私を押しのけてそちらへ行ってしまうのですから。それを追う私の身にもなってもらいたいものです」

 隣で暗守はフッと笑いを漏らした、

「何だ、お前でも手に負えないほどの女か」

「ええ、あの人を自分の腕の中に納められるのなら何もいりません。私にはあの人だけなのです。が、あの人は私一人がどれだけ捧げても満足できないのです」

 美珠は最後に国明と目が合い、顔から火が出そうに照れてしまった。

(そんなことありません! 私だって国明さんの腕の中にいられることが幸せなんですよ)

「国を守る騎士が何もいらないとは。一度機会があればお前の恋人を見てみたいものだな。よほどの魔性の女なのだろう」

 祥伽の言葉に美珠も国明も暗守でさえも声をあげて笑ってしまった。

 その後、二人が連れ戻されて静かに席に戻ると祥侘はしっかりと見つかってしまった弟の頭を叩いた。


ありがとうございます。

早いもので、もう百話となりました。

今後ともお引き立てよろしくお願いいたします☆

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