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短編

頭の上にある数字が見える

作者: 小鳥遊 悠治

 それは正直どうでもいい数字だった。

 まばたきをした回数だったり失恋した回数だったり文字を書いた回数だったりした。

 そんなどうでもいい数字が他人の頭の上に表示されている。僕以外にそれが見えている者がいるのなら目を閉じる以外でその数字が見えなくなる方法を教えてほしい。まあ、それはさておき。僕の頭の上にある数字はなぜかずっとゼロのままだ。他人の数字を見ると数字と一緒にその数字が何をカウントしているのか分かるのだが、僕の数字を何度鏡で見てもそれが分からない。試しに自分を殺そうとしたが、なぜかそれはできなかった。わざと海に飛び込もうとすると海から遠ざかり、赤信号の時、横断歩道を渡ろうとすると回れ右をしてそこから離れた。僕はどうにかして死のうとしたが何かに妨害されたり奇跡が起こったりしたせいで僕は死ねなかった。

 もうどうでもいいや。そう思った時、僕は成長しなくなってしまった。これが不老不死というやつだろうか? そういえば、僕は誰の子で今までどうやって生きてきたのだろう。分からない、僕は自分が分からない……。誰かと話した覚えもないし何かを食べた記憶もない。もしかすると僕はすでに死んでいるのかもしれない。だが、そんなことはなかった。彼女が僕を見つけてくれたおかげで彼女が僕の手を握ってくれたおかげでそれは違うと断言できたし、僕は全てを理解できた。彼女は僕に真実の鏡を渡してくれた。その時、ようやく僕の数字の意味が分かった。誰かに認識してもらった回数。それが僕の数字の意味。

 交通事故で意識不明の重体。その間、僕は無意識のうちに魂だけの状態でこの世を彷徨っていた。彼女は僕の学校のクラスメイトでとなりの席だった子だった。何十年も経っていたような気がしたが現実では数日しか経っていなかった。僕は僕のクラスの担任や生徒たちに同じ質問をした。しかし、全員同じ答えを述べた。「その子は普通の子だった」と。では、なぜ僕を見つけられたのだろうか。残念ながら、それは今でも分からない。なぜなら彼女は僕が目を覚ましたその日に転校してしまったからだ。いつか彼女にお礼を言える日が来るといいな。

「……私はいつも君のそばにいるよ」

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