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97.悪神、悪徳ギルドマスターに目をつける

書籍版、6/12にGAノベルから発売します!

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 ギルドマスター・アクトとの対決を終えた後……。


 悪神ドストエフスキーは【主】の前に跪いていた。


 そこは、黒水晶でできた宮殿だ。

 玉座に座るのは、彼らを束ねる【主】。


「申し訳ございません、わが主様……」


【主】に、先ほどのアクトとの戦いの顛末を報告したのだ。


 彼は額に汗をかく。

 端から見れば、完全に自分の敗北だったからだ。


「私が無様をさらしてしまったせいで……悪神の格を落としてしまったこと……本当に申し訳なく思っております……」


 すると【主】は薄らと笑みを浮かべて、こう言った。


「いいえ、あなたはよく頑張りましたよ。【嫉妬】さん」


 ドストエフスキーが見上げる。

 そこにいたのは、【自分と全く同じ顔をした男】の姿だ。


 その場に第三者がいたら困惑したことだろう。

 なにせ同じ顔をした男が二名、その場にいる。


 一名は、アクトと相対していた男。

 もう一名は、その彼の主である男。


「あなた私の【影武者】としてよく頑張っていました」


「ハッ……! ありがとうございます……!」


【嫉妬】と呼ばれた男は、悪神の部下にして影武者。

 ゆえにうり二つの外見を持っていたのだ。

 本物のドストエフスキーは優雅に微笑みながら言う。


「あなたのおかげで、あの男の力を解明することができましたしね」


「……我が主よ。あのアクトとか言うギルドマスターは……何者なのですか?」


 嫉妬は、信じられなかった。

 世界の半分を消し飛ばす超高性能爆弾。


 確かに起動したはずだった。

 超勇者とその仲間達、そして世界も破壊したつもりだった。


 ……だがアクトが行使した謎の能力のせいで、全てが【元に戻った】のだ。


「ただの男ですよ。その身に【時王の眼】を宿しただけのね」


「時王の眼……未来と過去を見通すだけの眼に、あのような力があるのですか?」


 実に楽しそうに口の端をつり上げながら、ドストエフスキーがうなずく。


「ええ。ですが、誰もが使えるわけではありません」


「アクト・エイジだからこそ使える、ということですか?」


「そうなりますね。現状、この地上では……という条件がつきますが」


「は、はあ……」


【嫉妬】は主が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。

 ただ、現状アクトの放った反則技が、あの男にしか使えないことに安堵した。


 そう何度も、世界を元通りにするみたいな技を、使われては困る。


「わが主。アクトの使ったあれは……なんなのですか?」


「おそらくあれは、【時空間遡行じくうかんそこう】でしょう」


時空間じくうかん……遡行そこう?」


 聞き慣れぬ単語を聞いて首をかしげる。


「簡単に言えば時間を巻き戻し、空間を修復する能力です」


 ドストエフスキーは懐から魔石を取り出す。


「例えばこのように、魔石を砕いたとします」


 ぐっ、と指先に力を入れる。

 パラパラ……と魔石が砕かれて落ちる。


「時空間遡行を使うことで、数秒前……つまり魔石が砕かれる前まで時間を戻します。するとどうなりますか?」


「……魔石、砕かれる前の状態に戻る?」


 ええ、とドストエフスキーがうなずく。


 時間を巻き戻す能力。

 その恐ろしさに、【嫉妬】は戦慄を覚える。


「そんな力があったら……無敵ではありませんか」


 たとえ死んだとしても、時間を戻せば何度だってやり直せるわけだから。


「そんな万能の力ではないでしょう。あまりに強いその力、代償もかなりの物でしょうね。でなければ、もっと連発するでしょうし」


 直近でアクトが時空間遡行を使ったのは、二度。

 ジャキ戦。そして、イランクス戦の二回。

 奥義の効果、および汎用性を考慮すれば、確かに使用回数は少ない。


「でも……時間を戻す力なら、どうして【時間を戻された】と我らが自覚できるのでしょう? おかしくないですか」


 時間を能力発動前まで戻されたら、【能力の発動】を見ていない時間まで戻るはずだからだ。


「あくまでも【空間】を対象とした術式だからでしょう。術者のいる空間内部の、壊れた人や物の【状態】を戻しているだけです」


 人の意識までも、戻すことはできないらしい。


「嫉妬くん。君の活躍により、能力の解明ができました。改めて感謝しますよ」


「い、いえ……! お役に立てたみたいでしたら、幸いです」


【嫉妬】は安堵する。

 宝玉は奪われ、四天王の一人を欠いてしまった。


 さらにこの姿で、人前からオメオメと撤退してしまった。

 悪神の格を下げるようなマネをしたのだ。

 叱責は免れないと、そう思っていたからだ。


「お疲れ様でした」

「え……?」


 そのときだった。


 パァン……! と大きな音とともに、【嫉妬】は弾け飛んだ。


 まるで水風船を地面に落としたみたいに、地面に紅い血だまりができた。


【嫉妬】は、訳のわからぬまま死亡してしまったのだ。

 部下の命を摘み取ったというのに、ドストエフスキーには何の動揺も見て取れない。

 彼が死ぬ刹那まで、表情に殺意も殺気も感じ取らせなかった。

 また、部下をその手で殺したとしても、そこに嫌悪も後悔も見て取れない。


 純粋なる悪。

 それが、悪神たるゆえんだ。


「さて……七つあるカードの一枚を切ったことで、とても有益な情報が手に入りました」


 音もなく、ボロ布を纏った六枚の男女が出現する。


 彼らはフョードル・ドストエフスキーがギルドマスターを務める追放者ギルド【七つの大罪】のギルメンたちだ。


「アクトくん。君はとてもとても有能な人材だ……素晴らしい……」


 ドストエフスキーは懐から通信用魔道具を取り出す。

 

 記録されたアクトの映像を見てつぶやく。


「是が非でも、君を手に入れたくなりましたよ……アクト・エイジくん」

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[気になる点] ドストエフスキーが見上げる。 そこにいたのは、【自分と全く同じ顔をした男】の姿だ。 その場に第三者がいたら困惑したことだろう。 なにせ同じ顔をした男が二名、その場にいる。 ⇒影武者はい…
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