表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/229

91.東の四天王VS最強勇者パーティ4



 ギルドマスター、アクトによって再び輝きを取り戻した、極東勇者パーティ。


 北壁に攻めてきた、東の四天王ジャキを、彼らは迎え撃とうとしていた。


 極東の勇者は5人。

 木火土光、そして水。

 それぞれの得意な属性をそなえた、剣士たちだ。


 木蓮もくれん火賀美ひがみ土門どもん日光ひかり水月すいげつ


「カス蝿どもめ! このぼくを邪魔するとは良い度胸だ。死ね!」


 バッ……! とジャキが片手を上げる。


 その瞬間、上空に4つの魔法陣が展開される。


「召喚魔法のようです、火賀美ひがみさま」


「ふん、お手並み拝見といこうじゃないの」


 魔法陣が輝くと、そこから4つの、巨大な結晶体が出現する。

 

 それは丸み帯びており、虫の卵に見えなくもない。


「目覚めよ、四蟲王しちゅうおうよ!」


 ジャキの命令に応じるように、巨大な蟲の卵が孵化する。


 四匹の、見上げるほど巨大な蟲たちがあらわれた。

 クワガタ。カマキリ。バッタ。そしてカブト。


「四天王の魔力をたっぷり吸い込んだ、蟲の王たちだ! 一匹が特級魔族に匹敵するほどの猛者だぞ! どうだぁ!」


 だがこの異形なる蟲たちを前に、火賀美を始めとして、誰一人として動揺していなかった。


「な、なんだよその冷静な態度は!」


 火賀美は不思議と、恐怖を抱いていなかった。

 さもありなん、もっと強い勇者ばけものパーティが、そばにいたからだ。


「いくらデカくても、所詮は蟲。やるわよ、あんたたち」

「「「はい、火賀美さま!」」」


 火賀美と水月は刀を抜く。

 日光と木蓮は杖を。 

 土門は腕に手甲をはめる。


 その瞳には、純粋な敵意が浮かんでいる。

「気に入らない……その憎たらしい目を、恐怖に染めてやれ! 四蟲王たちよ!」


 最初に動いたののは、山と錯覚するほどの巨大なカブト。


 大山金剛カブト。

 文字通り、巨大な山のごとき大きさと、その巨体に見合わぬ機敏さを持つ。

 

 勇者達に向かって、凄まじい速さで走ってくる。

 猛牛なんて比ではないくらい、圧倒的なパワーを秘めた突撃チャージ


「土門、受け止めなさい」

「心得た! ぬううん!」


 土門は両手を広げ、腰を下ろす。


「まさか受け止める気かい? 無駄無駄ぁ……! 君は山を持ち上げられるとでもいうのかい?」


「そんなこと、おれには無理だ」


 大山金剛カブトが、土門をひき殺そうとする。

 地面が激しく揺れ、立っていられないほどの衝撃波が発生する。


 地面や木々がめくり上がり、土埃で視界が不鮮明となる。


「はは! ばーか、全員まとめてぺしゃんこだ!」


「それはどうかしらね」


「なっ、なにぃいいいいいいいい!?」


 ジャキは目をむいて、信じられない光景を見ていた。


 非力な人間が、両手で、山のようなカブトムシを正面から受け止めているではないか。


「あ、あああ、ありえない! あの質量を受け止めるだと!?」


「ローレンス様のようにゃいかねーけどよ、おれだって……鍛えたんだ。火賀美さまを、仲間達を守る、壁となるために!」


「くっ……! お、おいカブト! 何してる! 踏み潰せそんなやつぅ!」


 だがカブトは微動だにしない。

 命令を無視しているわけではない。凄まじいパワーで、カブトが押さえつけられているのだ。


「土門。そんな蟲、踏み潰しなさい」

「承知!」


 土門は腰を落とし、片足を天高く持ち上げる。


「【属性武装エンチャント・エレメント】!」


 勢いをつけて、地面を強く踏みつける。

 どごん! と大きな音を立て地面が沈む。

 クレーターができあがり、衝撃で地面の土や岩が舞い上がる。


「ぬぅん!」

 

 土門は飛び上がり、その体に、岩たちがくっついていく。


 やがて彼は巨大な岩の巨人へと変貌した。

「属性武装【大地の巨人】!」


 カブトを凌駕するほどの巨人の出現に、ジャキも、そしてカブト自身も驚愕していた。


 巨人はそのままカブトを踏みつける。

 と、同時に岩でできた巨人の体が紅く染まる。


 岩の中で、大地の凄まじいエネルギーが爆発する。

 それは火山の噴火を彷彿とさせるような、激しい大爆発を起こした。


 あとには無傷の土門だけ。

 跡形もなく、カブトは消し飛んでいた。


「属性武装……なんだ、それは……?」

「バカなあんたに教えて上げるわ」


 火賀美は勝ち誇った笑みを浮かべていう。

「アタシたち極東の剣士は、自然からエネルギーを借りて戦っている。属性武装は自然と剣士とが一体化することで、より強大な力を得る奥義よ。知らないの?」


「まあそれも、アクト様に教えてもらうまで、火賀美殿も知らなかったでござるがな」


 苦笑する水月に、顔を真っ赤にして火賀美が叫ぶ。


「う、うっさいわよ……!」


 アクトは極東の伝承を読み解き、【属性武装】の存在を見つけ出したのだ。


「アクト殿はやはり凄い。部下のために、最適な強くなる方法を、どんな手段を用いてでも見つけてきてくれるのだから」


「ま、まあ……あの人が凄いのはわかってるけど」


 ぎりっ、とジャキは悔しそうに歯がみする。


「アクト……エイジ。やはり魔王様の覇道を邪魔するのは、貴様かぁ……!」


 北の四天王、イリーガルをたおした超勇者ローレンス。

 彼を見いだし、人外の化け物に育てた人物こそがアクトだ。


「くそ! おいお前ら! なにぼさっとしてる! 全員でかかれぇええ!」


 残る蟲の王は、クワガタ、カマキリ、バッタの三匹。


日光ひかり木蓮もくれん水月すいげつ。終わらせなさい」


「「「属性武装エンチャント・エレメント!」」」


 3人の剣士に変化が訪れる。


 日光は光の翼を得る。

 木蓮は樹でできた竜へ。

 そして水月は、水の鎧を身に纏う。


「【日輪の天翼】」


 日光ひかりが命じると、彼の背中から生えていた翼が広がる。


 無数の羽が空中に展開され、クワガタの周囲を取り囲む。


 光の羽は鏡のような働きをし、太陽の光を反射させる。

 圧縮した太陽光線は、容易くクワガタの体を貫く。


 それが羽の数分、つまりは無数のレーザーとなってクワガタを蜂の巣にした。


「【樹海の竜神】」


 今の木蓮は木でできた巨大な竜。

 彼から根っこが生えて、地面に突き刺させる。


 その瞬間、周囲に生えていた木々が生き物のようにうごめき出す。

 

 根っこが高速で、まるで触手のように動き、カマキリの体を捕縛。

 そのまま栄養を凄い勢いで吸い取り、カマキリを塵にかえた。


「【氷紋の剣聖】」


 水月は水の剣士。

 だが進化した彼女は、氷の力を身に付けていた。


 ほかの剣士達と違って、彼女にあまり変化は見られない。


 彼女は剣を抜いて、そして、鞘に収めた。

 その場にいる誰もが、何が起きたのか理解できなかっただろう。


 ……水月の背後に、氷付けになったバッタが立っていた。


 そして次の瞬間には、粉々になって砕け散った。


「水月、なにいまの?」

「なに、時を少々凍らせただけでござる」


「時を凍らせるって……はぁ。そーいえば、あんたも化物ローレンスの仲間だったわね」


「化け物と書いてローレンス殿と読むのはやめるでござるよー」


 極東の勇者達は、実に平然と、ジャキの秘蔵っ子達をたおした。


 ぺたん……とジャキがその場にしゃがみ込む。


「何だよ……やばいのは、ローレンスだけじゃなかったのかよ……」


 火賀美は哀れむように、しゃがみ込むジャキを見下ろす。


「ちょっと前なら楽勝だったでしょうね。まあその……運が悪かったわね」


 ジャキの敗因はただ一つ

 極東勇者が、アクト・エイジと接触してしまったこと。


 ただ、それだけだった。

【※読者の皆様へ とても大切なお願いがあります】


少しでも「面白い」「続きが気になる」と思ってくださったら、


広告下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をお願いします!


作者のモチベーションが上がりますので、なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ジャキさん「どーしてこーなった…orz」 火賀美ちゃん「その気持ち、よーくわかるわよ…(遠い目)」
[気になる点] クワガタ!カマキリ!バッタ! なんか分身して予算がガタガタになりそうなコンボ。 そして速度が速そうかと思いきやあっさり潰されたカブト。
[気になる点] >日光が命じると、彼女の背中から生えていた翼が広がる。 あれ?東勇者って水以外男性の逆ハーパーティーじゃなかったっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ