88.東の四天王VS最強勇者パーティ【ジャキ1】
悪徳ギルドマスター、アクトが勇者達と七獄を潜っている、一方その頃。
魔王国中央にある、魔王城にて。
「呼んだかい、魔王様ぁ」
謁見の間に現れたのは、幼い子供だ。
背中から虫のような翅を生やし、頭には触角が見える。
「【ジャキ】よ。貴様に一つ、お使いを頼みたい」
「お使い?」
「そうだ。人さらいだ」
パチンッ、と魔王が指を鳴らす。
目玉に翼を生やした魔物が、ジャキの前に現れる。
目から光が発生し、空中に映像を作る。
写っていたのは、鬼の幼女、【カナヲ】だった。
「このクソガキをさらってくるの?」
「うむ。この子供は、どうやらわしの血を引く存在のようだ」
「へー……なるほど、後継者ってわけだ。んで、どこにいるの?」
目玉から、さらなる映像がうつる。
アクトの住んでいる街と、その地図だ。
「この街を襲撃し、鬼女を連れてこい」
「えー、それだけぇ? おいおいおいおい魔王様ぁ、ボクこんなクエストじゃ燃えないよぉ~もっと難易度高いゲームじゃないとさぁ」
ジャキにとって人間の襲撃など、児戯に等しい。
「ボク最強なんだからさぁ、もっともっともぉっと難しいゲームじゃないとつまらないよぉ」
「ほぉ、大した自信だ。ならば、北壁を襲い、人間達を蹂躙し、領土を取り戻すことも付け加えよう」
カナヲ奪還、そして北壁奪還。
ふたつの難易度の高いクエストを前に、ジャキは愉しそうに笑った。
「いいねぇ! これくらいの難易度じゃないと! 心が躍らないよぉ!」
人を滅ぼせという命令を前に、ジャキが浮かべたのは、文字通り邪気のない笑みだった。
人間を殺すことに、何一つ罪悪感を覚えている様子はない。
「じゃ、行ってくるよ魔王様」
「待て、ジャキよ。おぬしにこれを授ける」
魔王の手には、黒い球体が握られていた。
手のひらに載ったそれは、浮かび上がると、ジャキの前へとやってくる。
「なにこれ?」
「対超勇者用の決戦兵器だ」
魔王が来たるべき厄災のために用意しておいた兵器。
全部で4つあり、そのうちのひとつ、邪神竜ヴィーヴルは、相手に取られてしまった。
それは四天王であるイリーガルが、ヴィーヴルを秘密兵器だと気づかずに追放してしまったことが原因。
魔王はあらかじめ、決戦兵器を渡しておくことにしたのだ。
「ハッ! こんなのなくっても、ボク楽勝でたおせますけどぉ~?」
せっかくの厚意を、ジャキは無下にしようとしていた。
ぴきり、と魔王の額に血管が浮かぶ。
「……調子に乗るなよクソガキが」
怒りで、謁見の間が震える。
ビキビキと床にひびが入り、建物と、空が鳴動する。
「おーこわこわ。はいはいわかりましたよ、もってきゃいーんでしょ」
調子にのったジャキが、黒い球体を手に取る。
「こんな物使わなくて楽勝なのに」
「大した自信だな。ならば、失敗したときは……どうなるかわかっているな?」
「失敗? おいおい魔王様ぁ。ボクが失敗するだって? ありえないっつーの!」
ポケットに手を入れて、ケタケタと笑う。
「そう言ってイリーガルも失敗しよったわ」
「あんな雑魚とボクを同列に語らないでよ。四天王最弱のイリーガルとさ」
ジャキの体から、黒い靄が発生する。
それは生き物のようにぐにゃぐにゃと形を変える。
「ボクは負けない。なにせ最強の盾と槍がボクにはあるんだからねぇ」
「そうか。ならば敗北は許さぬ。疾く任務に向かえ」
「はいはーい。わっかりましたー」
「念を押すようだが、絶対に負けるでないぞ」
「うっさいなー。わかってるってーの。ボクが負けるわけないじゃーん」
黒い靄がジャキを包み込み、そして次の瞬間には消えていたのだった。
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