表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/229

63.鬼姉妹、ウワサの悪徳ギルドマスターの元を尋ねる6【バカムス】



 ギルドマスター・アクトの前から去ったバカムスが、その後どうなったかというと……。


「この、愚か者がぁああああああ!」


 バカムスは屋敷に戻ると、開口一番、当主たる父に叱責された。


「なんて! 愚かなことをしてくれたのだ貴様ァ……!」


 執務室にて。

 バカムスは父から、鉄拳を頬に食らった。


「い、痛いです……父上……なにを……?」


「あのアクト・エイジの所属するギルドだぞ!? その構成員になぜ手を上げるようなマネをしたぁ!」


 父の動揺っぷりは常軌を逸していた。

 その顔には、この世の終わりのような絶望と、マグマのような憤怒とが同居している。


「……何を恐れているのですか? あんな平民風情に……?」


「このばかが! 貴族社会で生きているくせに、【アクト・エイジには手を出すな】という文言を知らぬのか貴様!」


 そんなこと、初耳だった。


「くそっ! バカムス、おまえは追放だ! この家から出て行け!」


「なっ!? なぜです!?」


「ええいうるさい! とにかく! 貴様は私の家とは何の関係もないゴミだ! とっとと屋敷から……」


 と、そのときだった。


「失礼いたします」


 がちゃがちゃ、と鎧をならしながら、騎士が入ってくる。


「ヴァーグ男爵。あなたの息子には、殺人・強姦未遂の容疑がかけられています」


「なっ!? ど、どうして……それを……」


 まだ犯行から数時間と経っていないのに、騎士団に嗅ぎつけられてしまったのだ。


「さらに街のゴロツキどもと共謀し、各地で悪事を働いていたこともすでに判明しております」


「なっ……! ば、バカな……全部パパの権力で隠蔽してもらったことなのに……!」


「わ、私とそこのバカはむ、無関係だぞ! そいつはすでに男爵家を追い出された身!」


 ヴァーグ男爵は青い顔をして首を振る。


 だが騎士団は冷静に告げる。


「あなたにも逮捕状が出ております」

「な、な、なんだとぉお!?」


 騎士は冷たい目でヴァーグ男爵を見下ろしながら、男爵が過去に犯した犯罪の数々を、読み上げていく。


 それらは権力をもって握りつぶしたはずだった。


 だが、その全てが騎士団にリークされていた。


「ち、父上~……これ、どうなるんですかぁ~……」


「どうなるもこうなるも、我が家は……終わりだ……」


 男爵家としての位も、屋敷も、将来も……バカムスはたった数時間で、全てを失ったことになる。


 それもすべて……。


「この、バカ息子めぇえええ!」


 怒り狂った父が、バカムスを殴り飛ばす。


「うげぇええええええ!」


 倒れ伏した息子に馬乗りになって、暴行を振るう。


「貴様の! せいだ! アクト・エイジに! 手を出した! くそっ! ばかが! 死ね! 死ね! 死ねぇえええ!」


 ……父に口汚く罵られ、ボコボコに殴られる。


 騎士達は慌てて父親を捕縛し、そのまま連行する。


「…………」


 連れて行かれる父を見て、ようやく、自分がケンカを売った相手が、いかに恐ろしい相手だったのかを実感した。


 相手は、物の数時間で、貴族から社会的地位を全て奪うことができるほどの……怪物だったのだ。


「おら、さっさといくぞバカムス」

「いや、だ……。嫌だぁああああああ!」


 バカムスはその場から逃げようとするが、騎士に簡単に捕まってしまう。


「なんでだよぉ! 平民の女をおそうくらい、貴族なら誰でもやってるじゃあないか! なんでボクだけが捕まるんだ! なんで!? どうして!?」


 騎士達は哀れみの目を貴族のバカ息子に向け、ため息をつく。


「今回ばかりは、相手が悪かったな」


「きっちり罪を清算してこい……まあ、もっとも、釈放された後に、社会的な居場所が残っているとは思わんが」


 騎士すらも、アクト・エイジに恐れをなしているようだった。


「そこまで……だったのか……そんな相手に……くそ……ああ……ボクは、なんて……バカなことを……くそ、くそおぉお……」


 バカムスは騎士に連行されていく。


 今回の件で彼の家は爵位剥奪。

 当主はそのまま余罪がボロボロと判明して終身刑。


 ……そして、後日釈放されたバカムスの行方を、その後知るものは、誰も居ないのだった。

【※読者の皆様へ】


「面白い」「続きが気になる」と思ってくださったら広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大丈夫だバカムス君、夢だった冒険者として一からやり直せばいいじゃあないか。王国じゃ足が着いているから他国でたくましく頑張ってくれ。
[一言] 今更読み返して探す気にもなりませんが、似たような話をまたやってるような
2021/02/10 00:05 退会済み
管理
[一言] バカムス釈放されるの?あれだけの事したのに?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ