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42. 悪徳ギルドマスターと集う「ざまぁ」された者たち3【イランクス⑦】


 ギルドマスター・アクトの住む街の外壁。

 それより離れた場所にある森の中にて、異形化したイランクスは隠れ潜んでいた。


『アクト……貴様に復讐……してやるぅう!』


 悪神ドストエフスキーに力を与えられた代償に、理性を失ってしまった。

 今彼の頭の中にあるのは、アクトへの強い憎しみ。


 ギラギラと血走った目で見る先には、外壁を囲むようにして、大量の【化け物】たちが取り囲んでいた。


 それは一言で言えば、影でできた魔物だ。


『【影の軍勢ダーク・レギオン】……うひゃひゃ! あの悪神めぇ、わしにぴったりの力をくれたじゃあないかぁ!』


 影の軍勢。それは月明かりのもとでのみ発動する。


 影からモンスターを作るスキルだ。


 森の中でイランクスは潜み、せこせこと影の軍勢を作り上げた。

 あとはモンスターたちを使って、街を襲わせるのみ。


『どうだアクトぉ! わしの仲間たちはぁ! 強いぞぉ! 無敵だぞぉ! なぁおまえら!』


 イランクスの周囲にも、影で作ったモンスター達がいる。


 だが、彼らはイランクスに応じなかった。

 それも当然だ。


 彼らは物言わぬ影だ。創造主たるイランクスの命令に従うだけの人形。


『殺せ! アクト・エイジを! あいつの街も、住民も、みーんなメチャクチャにしてやれぇ……!』


 野獣のように吠えるイランクスの命令で、影の軍勢が動き出す。


 ザルチム達も現場に配備している。


 影の軍勢の弱点は、イランクスがやられると解除されること。


 ゆえに彼は森に引きこもって、蹂躙劇が終わるのを、見守ることにしたのだ。


『ぎゃははぁ! さぁ、殺戮ショーを間近で見学するとするかなぁ……!』


 軍勢達の視覚を、イランクスは共有可能である。


 そこに広がっていたのは、影の軍勢によって、破壊された町並み……では、なかった。


『なっ!? なんだこれはぁ……!?』


 街の外にいつの間にか、大量の冒険者達が、武器を持って戦闘を開始していた。


「化け物どもめ! この街はやらせないぞ!」

「おれたち天与の原石を、なめんじゃねえ!」


 ……戦っているのは、アクト・エイジのギルメンたちだ。


「ギルマスのために、わたくしたちが街を守るのです!」


 赤い髪を翻しながら、冒険者ロザリアが剣を振る。


「ギルマスに受けた恩を返す最大のチャンス!」


 妖精のミザリィが、魔法をぶっ放し、敵の数を減らす。


 ロザリア・パーティを初めとして、天与の原石のギルメンは、一致団結して、影の化け物から街を守っていた。


「おれたちもいるぞー!」


 大剣を振り下ろすと、黄金の嵐が発生する。

 それは影のモンスター達を紙のように吹っ飛ばした。


 黄金の勇者ローレンス。


「ハッ……! ボクも忘れてもらっちゃあ困るね、きみぃ!」


 槍使いウルガーが、銀髪をさらりとかきわけて言う。


「ウルガー! なんだおまえもアクトさんを助けるために付いてきたのだな! うれしいぞ!!」


「あんだけボクはいかないからねー、とか言ってたくせに~」


 仲間に茶化されて、ウルガーは「う、うるさいよ!」と顔を赤らめる。


「ボクはあのギルマス嫌いだけどね……ま、育てて貰った恩がいちおうあるし? いつまでも返さないのはボクの流儀に反する!」


「ウルガーさん、やっぱりいい人ですね! 尊敬です! ギルマスの次に!」


「おら手を休めるんじゃねえ!」


 勇者パーティの魔法使いイーライ、テイマーのミード。


 アクトが才能を見いだし、立派に育った勇者のパーティが、恩返しのために駆けつけていた。


「ちょっと押されてるじゃない! まったく、やっぱりアクトにはアタシがいないと駄目みたいね!」


 街の外壁の上に乗っていたのは、小柄な少女。


「あ、あれは! S級1位ギルド【血の栄冠】のギルドマスター・ミリア嬢だ!」


 ミリアはバッ……と手を振る。

 その瞬間、彼女の持つ能力【破軍】が発動。


「さぁ……! 下僕ども! キリキリ働きなさい! アタシの未来のだ、旦那……ごにょごにょ……アクトに借りを返すためにね!」


「「「おっしゃー! 頑張るぞ、アクトさんのためにー!」」」


 ……あれだけいた影の大軍勢が、みるみるうちに数を減らす。


 その場に集っていた、ザルチム達は、怯えていた。


『き、きいてないぞ……! こんな展開!』


『一方的な蹂躙劇になるんじゃなかったのかよ!』


『やってられっか! おれは逃げるぞ……うぎゃっ!』


 逃亡を図ったザルチム達は、ローレンスの剣で瞬殺された。


「おれたちは街を、アクトさんを守る……! そのためにならどこへだって駆けつける! 命だって捨てられる! ハァア……!」


 ローレンスの放った黄金の一撃は、影のモンスターを一掃する。


 ロザリアをはじめとした手練れ達は、余裕で敵を倒していく。


 また腕に自信のないものであっても、ミリアの破軍によって基礎能力がプラスされた結果、誰一人傷付くことなく戦闘を進めていた。


『……ふざ、けるな。なんだ、これは……』


 あの場に集まっている全員が、口々に、アクトのためにと言う。


『アクト・エイジのために、あんなにも大勢の人間が……味方となって駆けつけたというのか……?』


 自分の周囲を固めていた、影の人形達に尋ねる。

 だが、彼が作った都合のいい部下たちは、誰一人、答えてくれない。


『どうしてこうなった……? なにが間違っている? わしは……わしは……なぜ、アクトみたいに、なれないんだよぉお……!』


 と、そのときだった。


「久しぶりだな、イランクス」


 自分を守っていた影のモンスター達が、いっせいに消える。


 銀髪の犬耳女が、その手に氷のナイフを持っていた。


 そして、その背後からは……鋭い目つきの、青年。


 かつて、自分がギルドから追放した男……。


『アクト・エイジぃいいいいいいい!』

【※読者の皆様へ】


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「影の軍勢」が正しいならルビは「シャドウ・レギオン」ではないでしょうか? ルビの「ダーク・レギオン」が正しいなら「闇の軍勢」ではないでしょうか?
[気になる点] 他の方からも同じ感想が書かれていると思いますが、今後を期待してあえて書きます。初期の頃のキレの良い展開がなく、だらだらと説明ばかりで小説としての魅力がなくなっています。 初期の頃の楽し…
[一言] 更新ありがとうございます、いつも楽しみにしています
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