表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/229

36.ローレンス勇者パーティの(宣伝)活動



 ギルドマスター・アクトの住む国の、すぐとなり。

 砂漠の国フォティアトゥーヤァ。


 ウォズという漁港の街は今、【魔族】による襲撃を受けていた。


 魚人型の魔族【カープキング】。

 筋骨隆々の体に、真っ赤な鱗が特徴的だ。


『ぬはは! 弱い! 弱いぞ勇者パーティよ!』


 漁港はカープキングによる襲撃を受けていた。

 建物は壊れ、人々は血を流して倒れている。


 フォティアトゥーヤァの勇者パーティは、カープキングひとりに全滅したところだ。


「くそ……なんて……強さだ……まるで歯が立たない……」


 勇者とは、各国王から魔王を倒すために選ばれし存在。

 どの勇者も非常に強く、最低でもSランク冒険者以上の実力は有している。


 ……フォティアトゥーヤァの勇者も、決して弱くはない。


 だが……。


「まだ、やれる! おれはみんなを守る!」

『弱いな、貴様』


 一瞬でカープキングの姿が消える。

 気づけば勇者の真横にいて、顔面を掴まれると、一気に地面に押しつぶされる。


 凄まじい衝撃とともに、勇者の頭部が破壊される。

 地面はまるで巨象でも落ちてきたのかと錯覚するくらい、大きな穴ができていた。


「そんな……勇者様がやられるなんて……」

「……こんな化け物、勝てっこない……」


 パーティメンバーたちは、みな絶望の表情を浮かべる。


『弱すぎるぞ人類。こんなものか……いや、私が強すぎるだけか』


 カープキングが手を広げる。

 空中に無数の水球が出現した。


『死ね』


 高圧の水流が、無数の槍となって周囲に降り注ぐ。


 それは石でできた建物も地面を容易く貫通し、あっという間に蜂の巣に変えてしまう。


 絶え間なく続く破壊の音がピタリとやむ。


『これでこの街も仕舞いよ。勇者も実にあっけなかったな……む?』


 そのとき、カープキングは気づく。


 倒れ伏す街の人たちを、守るように、光の壁が出現していることに。


『なっ、なんだとっ? 私の【水流連射砲ハイドロ・ガトリン】を受けて無傷だと!? なんと強固な防御魔法……いったい誰だ!?』


 杖を構えているのは、まるで女と見まがうほど、華奢な男の子だった。


「みんな、大丈夫! ぼくたちが……勇者パーティが来たから!」


『新手の勇者パーティの登場だと……なるほど』


 彼の隣には、2名の男女が現れた。


 銀髪の槍使い。

 やんちゃそうな見た目の女弓使い。


「やぁやぁ我こそは勇者パーティが一番槍! ウルガー! 覚えておきたまえ魚くん?」


『調子に乗るなよ人間ごときがぁ……!』


 パンッ! とカープキングは手を鳴らす。

 すると、海から無数の卵が出現する。

 それは数え切れないほどの、魚型モンスターへと変化する。


 鋭い歯が特徴的な、【飛翔魚フライング・ピラニア】。Aランクのモンスターだ。


『ゆけ眷属達よ……!』


 飛翔魚たちが凄まじい速さで、勇者パーティのもとへ跳んでいく。


「ここはボクのショータイムさ!」


 たっ……と銀髪の槍使いウルガーが迅雷のごとくスピードで翔る。


 バチュンッ……! という音ととともに、あれだけいた飛翔魚が、一瞬で全滅した。


『なぁっ!? なんて速さ……!』

「ふっふーん、もっと驚いてくれてもいいんだよ君ぃ~?」


 だが調子に乗っている隙に、カープキングが新たな眷属を召喚する。


 顔をもたげたのは、水竜だ。

 Sランクのドラゴンで、一見するとウミヘビのようであるが、しかしれっきとした竜種である。


『殺せ!』


 氷のブレスを吐き出してくる。


「フッ……甘いよ君ぃ!」


 ウルガーはブレスの直撃を受けても、しかしびくともしなかった。


『ば、バカな!? 竜種の氷ブレスを受けて、なぜびくともしない!?』


「それはボクのガールフレンド・イーライたんの結界魔法が強力だからさ! ね、イーライたん~♡」


 魔法使いの少年が、戸惑いながら言う。


「えと……だからぼく女の子じゃないんですけど……」

「ちょっとウルガー。調子のってんじゃねーよ!」


 弓を構え、ミードが矢を放つ。

 それは流星のごとき威力とスピードを持って、水竜の土手っ腹を貫通させる。


「おいおいボクの活躍を取らないでおくれよ!」


 カープキングは、信じられないものを見る目で、新たに現れた勇者パーティ達を見やる。


『なんだ……こいつらは……次元が、違いすぎる……』


 魔族の召喚した強力な魚類型の眷属達を相手に、圧倒的な力の差を見せつける。


 みるみるうちに、水竜をはじめとした眷属達は、数を減らしていった。


「もーおわりかい? たいしたことないねえ君ぃ!」


 残るはカープキングただひとりとなった。


『調子に乗るなよ……槍使い!』


 ダンッ……! とカープキングが素早い動きで接近する。

 目で追える速さではない。


 だがウルガーはその動きについてくる。


「くっ……! 一撃が重い……!」


 カープキングの攻撃を捌いてはいるものの、致命傷を負わせるまではいかなかった。


『ふはは! どうしたこの程度かぁ!?』


 拳を槍でガードするも、ウルガーは弾かれる。


「ちぃ……! なかなかやるようだねぇ」

『当たり前だ! 私は上級魔族! そこいらの雑魚魔族とは違うのだよ!』


 だが、彼らに絶望の表情は見られない。


『なぜだ!? なぜそうも平然としていられる!? 上級魔族だぞ!?』


「だからなによ」「そうだ! ぼくたちには、まだ勇者がいるんだ!」


 と、そのときだった。


「遅くなってスマナイ、みんな!」


 街の奥から、金髪の大男が現れた。

 その瞬間……ぞくり! とカープキングの背筋に、悪寒が走る。


 本能が叫んでいた。

 この男は今ここで、必ず始末せねばならないと。


「ケガ人の救助をルーナと済ませてきた! 街も、街人たちも全員無事だ!」


 カープキングは、背後の街を見て愕然とする。


『ば、ばかなばかな!? あれだけ壊したはずの街が、どうして元通りになっているんだぁ……!?』


「ルーナ! 勇者の彼の治療を頼む!」

「わかったわ」


 杖を持った少女が、頭を潰された勇者の死体の元へ向かう。


 聖なる光が強く瞬くと、そこにいたのは、元通りになった勇者の姿だった。


「し、信じられない……お、おれは……生きてる、のか……?」


 ルーナは安堵の吐息をつく。


『なんて凄まじい治癒力……まさか、聖女か貴様!?』

「別に、普通のヒーラーよ」


『そんなわけないだろっ……!』


「うむ! ルーナ! よくやったぞ!」


 金髪の勇者が黄金の大剣を引き抜いて、カープキングに向かって悠然と歩いてくる。


「おれは勇者ローレンス! 今から君を倒させてもらおう!」


 ……ヤバいと彼は内心で動揺していた。


 この勇者パーティのメンバー達は、みな規格外の強さ、能力を持つ。


 そんな化け物揃いの連中のリーダーなのだ、当然、ローレンスという男の強さも、推して知るべし。


 本能が、逃げろと警鐘を鳴らす。

 だが同時に、ここでこいつを殺さねば、長たる魔王の最大の障害となり得ると。


「では、いざ尋常に……勝負!」


 ローレンスは大剣を片手に、構えを取る。


『う、うわぁああああああ!』


 カープキングは魔力で体を強化し、ローレンスに接近する。


 ウルガーのとき以上に素早く、そして強力な拳をたたき込む。


『か、固い! なんて堅さ! まるで大木を殴っているようだ……!』


 ローレンスは構えを取ったまま微塵も動かない。

 補助魔法を使ってもらっている様子もない。


「ではさらばだ魔族よ!」


 ローレンスは上段の構えから、大剣を振り下ろす。


 黄金の魔力が斬撃とともに放出された。


 それは凄まじいまでの破壊の光となって、一直線上に伸びていく。


 光は雲を割り、海を引き裂く。

 激しい光の奔流に飲まれ、カープキングの体はボロボロと崩れていく。


『上級魔族を、一撃で……これが……勇者ローレンス……なんという……強さ……』


 光から一瞬遅れて、激しい爆音が周囲に響く。


 水平線の彼方まで光は伸びていった。

 真っ二つになった海。そこへ、海水がワンテンポ遅れて、なだれ込んでくる。


「ま、やるじゃないかローレンス。ボクには劣るけれどねっ!」


「うむ! そうだな! ウルガー! よく敵を引きつけてくれた! ありがとう!」


「ったく、調子狂うなぁ~もう」


 そこへ、助けてもらった勇者達が、ペコペコと頭を下げる。


「ありがとう、ローレンスさん! あんたがいなかったら終わっていた! ありがとう!」


「ごめんなさい、他国の勇者であるあなたたちに、迷惑をかけて……」


 ローレンスは首を振って、笑顔で言う。


「気にするな! 困っているものがいたら助ける! それが勇者だろうっ?」


 フォティアトゥーヤァの勇者パーティは、ローレンス達に何度も頭を下げる。


「あ、あんたら凄いな……どうやったらそんなふうに強くなれるんだ?」

「それとも、最初からめちゃくちゃ強いの?」


 ローレンス・パーティの強さに驚き、そしてその秘訣に興味を抱いた。


 力強く首を振って、ローレンスは答える。


「おれは今こうして勇者をやっていられるのは、アクトさんに育ててもらえたからだぞ!」


「「アクトさん……?」」


「ああ! 冒険者ギルド【天与の原石】のギルドマスターだ! 彼が居なければ今のおれはいない!」


 にわかには信じがたいものであったが、しかし、ローレンス達が圧倒的な力を持つことは事実。


「ぼくたち元は天与の原石のメンバーなんですよ」

「そう! アクトさんは、あたいたち弱者に手を差し伸べ、才能を伸ばしてくれるすげー人なんだぜ!」


 ローレンスたち化け物を育てた、ギルドマスター・アクト。


「アクト・エイジ。一体、どんな凄い人なんだ?」


 やがてアクトの噂は人から人へ、街から街へと、広がっていく。


 このように、勇者ローレンスが各地で活躍することで、彼らを育てた天与の原石、ひいてはアクトの力の宣伝となるのだった。

【※読者の皆様へ】


「面白い」「続きが気になる」と思ってくださったら広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ちゃんと宣伝成功してる
[気になる点] カープキングの攻撃を捌いてはいるものの、致命傷を負わせるまではいかなかった。 カープキングの攻撃を捌いてはいるものの、 ↑カープキングが攻撃中 致命傷を負わせるまではいかなかった。 …
[一言] 木の強度認識のズレが面白い。弱いと思っている方は 合板やMDFのイメージなんでしょうか? 生身の勇者なら金属のイメージよりも弾性を強く 併せ持つ生の巨木の強度の方がしっくりきます。 大きな拳…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ