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23.追放ヒーラーと愚かな勇者【バルカン①】



「【ルーナ】、てめえはもう勇者のパーティに要らねえんだ。出て行け」


 その少女はルーナと言った。

 アクトのいる王国とは、別の国の勇者のパーティで【回復術士ヒーラー】を担当していた。


 ダンジョン探索を終えて、街へと戻って、一泊した翌日。


 朝食の席で、リーダーにして勇者バルカンから、突如として追放を言い渡されたのだ。


「そんな……どうして! アタシ、すっごく頑張っていたのに……」


「簡単だ。てめえがパーティ内で役に立っていないからだよ。回復ならうちの【聖女】のメアリーがいるからな」


 勇者バルカンの隣には、豊満な肉体の、妖艶な美女が座っている。


「メアリー加入前ならいざ知らず、回復術士の上位互換である聖女がパーティにいるんだ。もうお前は要らねえよ」


「そんな……ひどいよ。今日まで一緒に、冒険してきた仲じゃない……」


 ルーナとバルカンは同じ村出身の、いわゆる幼馴染みというやつだ。


 ふたりは共に冒険者となり、今日まで頑張ってきたのだ。


「幼馴染みのよしみでよ、今日まで手元に置いといてやったけどよ、実はおれとメアリー……昨日から付き合いだしてな」


 バルカンはメアリーを抱き寄せると、白昼堂々と熱烈なキスをする。


「つーわけで、もうおまえは邪魔なんだ。悪いな」


 別にバルカンを異性として見ていなかったから、男を取られてショックとは微塵も思わなかった。


「でも……あんた大丈夫なの? アタシがいなくなったらヤバいわよ」


「は……? んだよいきなり」


「確かに治癒の力では、メアリーのほうが上よ。けど気づいてないようだけど、あんたたち弱すぎるのよ。だから補助魔法でアシストしてやってたのよ」


 ルーナの告げた真実を……しかし、バルカンはぷっと笑う。


「なーにバカなこと言ってるんだよ。おれたちが弱い? ざけんなよ」


「そーよぉ。バルカンはとぉっても強いじゃない。きっとこの小娘、嘘ついてるんだわ」


「いや嘘じゃないんだけど……」


 ルーナは治癒ヒール以外に、腕力上昇などの補助魔法を習得していた。


「そもそも回復術士がなぜ補助魔法を覚えるんだよ。治癒専門職だろ?」


「だからそれは、あんたが弱すぎるから、ゼロから補助魔法を覚えたんじゃない!」


「あーもう見苦しいなぁ! ハッキリ言えよ! おれのことが好きなんだろ!? だから出て行きたくないから必死になんだろ!?」


 まるで見当違いな発言に、ルーナは呆れてしまう。


「残念だけどてめえみたいなガリガリのチビ女には1ミリたりとも魅力を覚えねえんだよ! あれしろこれしろってガミガミうるせえしよお。その点メアリーは違う。美人だしおしとやかだし言うことなしだ!」


 それは自分に女としての魅力がないから、追い出すと言われているようなものだった。


 長年付き添ってきた幼馴染みとの絆よりも、ちょっとばかり外見の良い女との恋愛を優先したのである。


 ……とてもショックだった。


「……わかった! 出てくわよ!」


 涙を流しながら、ルーナは宿を飛び出す。

 がむしゃらに走りながら、街を抜ける。


 弱すぎる勇者の幼馴染みを支えようと、ゼロから補助魔法を習得した。

 けどそれが、急にどうしようもなく、無駄な行為に思えた。


 ……結局、世の中見た目が全てなのだろう、努力は評価されないのだろうと、そう思っていた。


【彼】に、出会うまでは。


「ルーナ。俺の元で働かないか?」


 彼は【天与の原石】と呼ばれるギルドで、ギルドマスターをやっているらしい。


「ゼロからそのレベルの補助魔法を習得するなど、余人には到底できないことだ。その努力は賞賛に値する」


 ギルマスのアクトは、真っ直ぐに、自分の瞳を見て言う。


「貴様が欲しい。うちでその腕を存分に振るって欲しい」


「……でも、アタシ、チビだし、ガリガリですし、見栄えよくないですよ?」


「バカ言うな。貴様、人の価値が外見だけで決まるわけないだろ? 大事なのは使えるかどうか、ようするに中身だ。貴様は、凄まじい可能性をその身に秘めている……どうした、なぜ泣く?」


 彼女は深々と、頭を下げた。


「ありがとう……ございます……【ギルマス】。アタシ、ここで頑張ります!」


 かくしてルーナは【天与の原石】所属となった。


 後に彼女はメキメキと頭角をあらわしていく。


 ……一方で、ルーナの補助魔法に支えられていた勇者バルカンは転落していく。

【※読者の皆様へ】


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― 新着の感想 ―
[一言] いつの世も人を見る目は大事だよな。
[良い点] 転落後の堕落人たち視点が面白すぎる
[良い点] テンポと題材、本当に好きなんです。 [気になる点] >現在色々と試行錯誤中です。 うーん、今回のはちょっと、、、 ゼロから補助魔法覚えるのにどれだけの期間が必要だったのか分からないけど…
2020/12/31 15:45 退会済み
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