番外編 あなたと旅行
娘のヘンリエッタに、俺のギルド、天与の原石を預けてからしばらく……。
ある日のこと、王都、自宅にて。
「今……なんと?」
俺の嫁となった、フェンリルの女、フレデリカ。
彼女は唖然とした表情で固まっていた。
今彼女は朝のコーヒーを俺に出してくれたところだった。
「二度も言わせるな」
「いま! なんと……!?」
手をついて叫ぶフレデリカ。
ヘンリエッタを産んでから、少しはおしとやかになったと思ったんだが。
たまに昔のように興奮することがある。 やれやれだ。
「温泉にでも二人で行こうかといったのだ」
「いきます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳が痛むほどの大声で返事してきやがった。
まあいい。
「やったやったっ! マスターと、旅行! 温泉旅行ぅうううう!」
ぴょこっ、と犬耳と尻尾が生えて、ぐるんぐるんとその場で回転する。
うるさいやつだ、声といい、動作と良い。
「はしゃぎすぎだ」
「だってぇ……! 温泉旅行だなんて久しぶりじゃ無いですか!」
「そうだったか?」
「そうですよ!!!! しかも二人きりなんて……! ……しかしどうして今?」
「ギルド運営はもうエッタに一任してだいじょうぶそうだからな」
それに……。
俺の目に、嫌な未来が見えたのである。
今ここに俺がいない方がいいと判断したのだが……。
まあそこまで言わなくて良い。
「ということで、出かけるぞ」
「はい! はいっ! やったぁああああああああああああああああ!」
ほんとに騒がしい女だ、やれやれ。