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番外編 勇者パーティのその後



 アクトの娘、ヘンリエッタはその日、めかし込んでいた。

 

 屋敷を出てギルドへ向かっていると、背後から抱きしめられた。


「エッタ!」

「わわっ! う、ウルガーおじちゃん!」


 勇者パーティの元メンバー、槍使いウルガーがそこにいた。

 片腕は義手である。魔王ドストエフスキーとの戦いで欠損した腕は、結局治癒術師ルーナをもってしても、再生できなかったのである。


「ふはは! エッタ、久しぶりじゃあないか!」

「う、うん……おじちゃんもね。スカウトのたびご苦労様。良い人材いた?」

「ああ。これがそのリストだよ」


 ウルガーからリストを受け取る。

 ヘンリエッタは普段王都から動けない(ギルドの仕事だけで手一杯)。


 めぼしい人材を見つけてくるのは、ウルガーの仕事だった。

 ローレンス勇者パーティは、魔王討伐後に解散した。


 みな、散り散りになったけど……ウルガーだけはギルド職員として残った。

 こうして、未熟なギルマスを支えている。


「ありがとう。たすかるよ!」

「なんのなんの。可愛いエッタのためだからね!」


 ウルガーは恋人はおろか、家族もいない。

 だからか、アクトの娘を溺愛してるのである。


「おーい! ウルガーさーん!」

「おお! イーライにルーナ! それにミードも!」


 魔法使いイーライ。治癒術師ルーナ。弓使いミード。


 三人がヘンリエッタたちのもとへやってきた。


 か弱い見た目だったイーライは、もうすっかりたくまくしなっている。

 今は別の冒険者ギルドを一人で立ち上げて、そこでギルマスをしていた。


 ルーナは、イーライと結婚した。彼と二人でギルドを回している。


 ミードは故郷へ戻り、エルフたちと一緒に里の復興をめざしてるとのこと。ちなみに結婚している。


「みんな変わらんね」

「あんたもね」


 ルーナがあきれたようにため息をついた。


「さ、いこうじゃないか。我らが、リーダーの【墓参り】に」


 ヘンリエッタはうなずくと、王都の外へと向かう。

 馬車に乗ること1時間あまり。


 小高い丘の上にそれがあった。


【超勇者ローレンス、ここに眠る】


「やあローレンス。また君に会いに来たよ」


 ウルガーが代表して、お供え物のボトルワインをおく。

 ヘンリエッタが持っていた花束を添えた。


「ローレンスさん。今も世界は、平和です」


 ローレンス。享年は、22。

 死ぬにしてはあまりに若い。若すぎた。

 彼の死は、なんと老衰だった。魔王を討伐した後、彼の体は急激に衰えた。

 死ぬ間際、22だというのに、見た目は完全にしわしわのおじいちゃんだった。


 アクトの推察によると、ローレンスのあの超人的な強さは、寿命を前借りしたからだという。


 通常の人間が一生をかけて消費する、生命エネルギーを、圧縮していた。

 だから強かったけども……短命だったのだと。


「ローレンス……」

「うむ! なんだみんな来ていたのかー!」


 ……背後から子供の声が聞こえた。

 振り返ってみると、まだ10にとどかないだろう年齢の少年が、にこやかに笑いながらやってきた。


「ローレンス……」

「いや、ちがうぞ! 今は、ローレンだ!」


 ……そう、あろうことかこの子供、実はローレンス本人だ。

 ローレンスが死んだ翌日、一人の赤ん坊が産まれた。


 そして生まれるなり、こう言ったのだ。

『ここはどこだ! アクトさん? あくとさーーーーーん!』


 と。

 アクトがすっとんで言って、鑑定眼を使ったところ……。


「まさか君が、転生してるとはね……」

「しかも死んだ翌日に転生するとか、化け物よね……」


 そんなわけで、超勇者ローレンスは死亡したが、その転生体であるローレン少年は、こうして元気に生きているのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人間辞めてるなぁーローレンス
[一言] 短命ではあったが、幸せな人生をおくったんだな…、ローレンス…。 ってええぇぇぇぇぇぇぇ!? なんで!?なんで死んだ次の日に産まれた子に転成してんの!? ワケワカンナイヨー!
[気になる点] なんかキルト・リーフと並んでギルマスの頭痛の種の匂いしかしないのだがw。 これに獣人の料理人を連れた魔女が加わればトラブルメーカー四天王だろうな。
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