エピローグ
【★☆★新作、投稿しました!】
先日の短編が好評だったので、連載版はじめました!
タイトルは――
『転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」』
ページ下部↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://ncode.syosetu.com/n6260hz/
アクト・エイジと彼の育てた原石達が、世界を救ってから……かなりの年月が経過した。
ギルド、天与の原石。
その本部は今、王都で一番の冒険者ギルドとして確固たる地位を築いていた。
ギルドマスターの椅子に座るのは、銀髪に黄金の瞳を持った少女……。
「【ヘンリエッタ】ギルマス! 失礼します」
ヘンリエッタ……。それがアクトとフレデリカの娘の名前だ。
ふたりの特徴と、そしてこのギルドを受け継いだ少女は、居住まいを正し、「うぉっほん」と偉そうに咳払いうぃする。
「は、入るのじゃ!」
じゃ、と古風なしゃべり方をするのは、なめられないため。
偉大なる親を持つがゆえに、ヘンリエッタは、それにふさわしい人物にならないと駄目だと思っている。
だから、なめられないようキャラを作ってるのだが……。
入ってきたのは、受付嬢の少女。
胸のプレートには【ニィナ・インヴォーク】と書いてあった。
「大変ですヘンリエッタさん! Sランク冒険者の方々が、またやらかしてしまいました!」
「なっ!? ま、またあいつらか……!」
天与の原石は父の功績があるからか、たくさんの優秀な冒険者達が集まってくる。
それはいい。だが……。
「リーフと黒銀を呼べ……!」
「はいっ!」
そこへ現れたのは、黒髪にニコニコした表情の少年、リーフ。
そして、黒コートに銀の仮面をつけた、黒銀。
ふたりはこのギルドのツートップ、Sランク冒険者である。
「ぬしら……またやらかしたのか?」
「え、俺何かやっちゃいました?」
とぼけたツラをするリーフ。
報告書に目を通して、ヘンリエッタがため息をつく。
「村ごと敵を消し飛ばした……と書いてあるのじゃが、事実か?」
「はい!」
「はいって……」
なにを元気よく返事しているのだ……!
ま、まあ敵を倒したからよしとしよう……。
次に、ヘンリエッタは、銀仮面をつけた少年を見やる。
「黒銀よ……おぬしは作戦中に途中で帰った、と書いてあるのじゃが……?」
「……敵は倒しました」
「いや、うん。勝手に帰るなよ。どうして帰ったのじゃ?」
「……定時だったので」
「冒険者に定時なんてあるかっ……!」
はぁ~……とヘンリエッタが大きく深くため息をつく。
どうにも癖の強い連中ばかりが、この天与の原石に集まってくる。
父のように、スマートに彼らを導いてやりたいのだが……。
力量の足りていない自分には、それができない。
「……まあよい。以後気をつけるように」
「はい!」
「……もう帰って良いですか。休憩時間なので」
この……! はぁ……とヘンリエッタがため息をついて、手を振る。
ふたりが出て行く。
「全然うまくいかないよ~……」
父は、凄い人だった。強くて、かっこよくて、カリスマ性に富んでいた。
あの父のようになりたいのに……自分はどうにも、こんなんである。
「どうすればパパのようになれるんだろ……」
と、そのときだった。
コンコン……
「エッタ。私だ」
「! パパッ!」
ドアを開けて入ってきたのは、黒髪に黄金の瞳を持つ男……。
アクト・エイジだ。
……ただし。
かつての彼のような、いつもにらむような顔つきではない。
ニコニコと微笑んでいる。かつての彼を知るもの達が、今のアクトを見たら驚くだろう。
好々爺もかくや、といった感じの雰囲気を纏っている。
ヘンリエッタは父に飛びつこうとして、自制心を発動。
こほん、とヘンリエッタは息をついて言う。
「エイジ協会本部長。どうしたのですじゃ?」
ギルマスを引退したアクトは、今、ギルド全体のまとめ役になっていた。
と言っても、実務はほぼやっていない。ギルドの顔として座っているだけで、運営はおのおのの裁量にまかせてる。
それでうまくまわっているのだから、父の人徳、そして適材適所に人材を派遣する眼力のなせる技だろう。
「エッタがちゃんとやってるかなって」
「もう……過保護すぎですじゃ……。わしは……わしは……うまくやっております…………」
うまくいってるというわりに、ヘンリエッタの表情は暗い。
アクトは苦笑すると、娘の頭をなでる。
「気を張る必要は無い」
「でも……」
「私の背中を追う必要なんて全くない。君には君の、私には私の、それぞれ最適な道がある」
だから、私のマネはしなくていいんだよ、父は言ってくれた。
ヘンリエッタは……それを聞いてほっとした。
少し気が楽になった。
「ありがとう、パパ。わたし……がんばる。自分なりの、天与の原石を作る!」
……追放者救済ギルド、天与の原石。
そのギルドの形は、世代が交代したことで全く変わってしまった。
でも変わらないものがある。
それは、いつだってどんな人材も受け入れて、彼らの才能を磨いて、彼らの輝ける舞台を作ってあげること。
形は違うかも知れないけど、ヘンリエッタは確かに、アクトの遺志を継いで、ギルマスの椅子に座っている。
「ヘンリエッタさん! またリーフ君と黒銀さんが!」
受付嬢のニィナが入ってくる。
アクトの横を通り抜けて、ヘンリエッタが走り出す。
アクトは、暗躍することが多かったが、娘はどうやら表に立って部下を守るほうが、性に合ってるらしい。
ニィナとともに出て行く娘の背中を見て、アクトは微笑む。
そしてギルドを出て行く。
みんなが本部長を見かけて、頭を下げてくる。
アクトは笑顔で手を振りながらギルドを出ると、そこには、愛する女が立っていた。
「あなた。エッタはどうでした?」
「苦労してるみたいだよ」
「まあ……でも、大丈夫でしょう。わたくしたちの娘ですから」
走り、遠ざかっていく、未来ある若者たちの背中を、アクトとフレデリカは見守る。
この先も、ずっと。
アクトたちが望み、作りあげた平和な世界で生きる彼らのことを……。
《おわり》
これにて完結です!
ありがとうございました!
コミカライズ企画がまだありますので、その際は番外編を投稿するかもしれないです。
とにもかくにも、最後まで読了ありがとうございました!