181.勝利
俺ことアクト・エイジは、すべての黒幕である、超越者の天羽を討伐した。
そして……地上では。
魔王ドストエフスキーを、今しがた、ローレンス達がたおした。
「…………」
「マスター、終わったのですね?」
月面にて。
俺とフレデリカは並んで座っている。
銀髪の駄犬メイドが、うれしそうに微笑んでいる。
「なぜわかる」
「わかりますもの、あなたの忠実なる部下ですからっ」
ぶんぶんと尻尾を、アホみたいに振るフレデリカ。ふん……。まさに犬だな。
「マスターには未来が見えたのですよね。ローレンス達が勝って、笑っている姿が」
「……まあな」
俺は天羽によって、時王の目を植え付けられた。
でもやつに与えられた力を、奪われた、はずだった。
けれど俺には未来が……見えた。つまり目が戻ったということ。
どうして……? まさか、天羽が俺のために……?
人類を破滅に導こうとした黒幕が……?
いや、どうでもいい。
「終わったぞ。帰る」
「YES、マイマスター」
俺はフレデリカを連れて、離れたところで倒れてるヴィーヴルのケツを蹴る。
「ぎゃんっ!」
「いつまで寝てる」
「うう……え!? お、終わったんすか!?」
こいつ、途中で気絶してやがったな。まあいい。疲れたのだろう。
「ああ。こっちも、あっちもな」
青く輝く星を指さしながら、ヴィーヴルに言う。
彼女は目を丸くして、「す、すげえ……!」とわめく。うるさいな。
「帰るから運べ、馬」
「馬!? 邪竜なんすけど!?」
「やかましい。帰るぞ」
「ええー……もうちょっと休ませ……あ、やめて、わかりましたからお尻蹴らないでっ!」
やれやれだ。