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169.父と娘
俺ことアクトは、黒幕である天羽と最後の戦いを繰り広げていた。
月面にある天羽の神殿にて。
俺はフレデリカを霊装……身に纏うことで超越者と対等に戦うことができていた。
「…………」
俺の拳が、天羽の胸の中心を捉えている。
やつの最大最強の一撃を、真正面から打ち砕いたのだ。
「おめでとう……君たちの勝ち、だ……」
俺の体に天羽が寄りかかっている。
やつは異次元の強さを持っていた。だが……俺たちはそれを上回ることができた。
ずるり……と天羽がその場で崩れ落ちそうになる。
霊装がとけて、フレデリカが俺の隣に出現する。
天羽のことを正面から抱きしめていた。
「……なんだい、フレデリカ？」
「……最後くらい、看取らせてください」
「それは……元飼い主である僕を、心配して……かな？」
しゃがみ込むフレデリカの表情は、俺からは見れない。
だが、彼女の体は震えていた。
「勘違い……しないでくださいまし」
「ほぅ……勘違い？」
「ええ。わたくしは……ただ……あなたがきちんと死んだかどうか見届けたいだけです。死んだふりされては……迷惑ですからね」
声が震えている。
やつは元飼い主の死を悲しんでいるのだ。
……俺の手についていた血は、霊装が解けるとともに消えた。
けれど……罪は消せはしない。
人に手をかけたという罪は、この先一生。
「ああ……まったく……君たちはお似合いだよ……」
震える手で、天羽がフレデリカの頭をなでる。
「よくやった……がんばったね、我が愛しの娘」
天羽は小さく微笑むと、フレデリカの頭をなでてやる。
彼女はうつむいて、大粒の涙を流していたのだった。
