166.目指すべき勝利の形
【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
アクトが月面で黒幕の天羽と戦いを繰り広げる一方。
地上では魔王ドストエフスキーと超勇者ローレンスとの、最終決戦が繰り広げられている。
世界最高の勇者ローレンス。彼は人間を遥か超越する力を持っている。
相対する魔王は膂力こそローレンスに劣る物の、無限の再生能力を持ち、人間ローレンスの体力と気力を、その手数を持って削っていった。
すでに二人の戦いは人間のレベルを遥かに超えている。ローレンスの仲間達は彼らの戦いに参加できていないでいた。
魔王は一人で、勇者には仲間が居る。ローレンスの、弱点ともいえる仲間が。
魔王はローレンスではなく仲間にも平気で攻撃を与えようとしてくる。その都度、槍使いウルガーと弓使いミードが、後衛組を守っていた。
だが……それも限界が訪れる。
「ぐっ……!」
「ウルガーさん!」
ウルガーの右腕が吹き飛ぶ。魔王の触手が腕を切断してきたのだ。
「ウルガー!」
「ルーナ! 僕はいい! ローレンスから目を離すな!」
回復術師ルーナの魔力はもう底をつきかけ、精神力はすり減って、もういつ気絶してもおかしくはない。
余計なものを回復するくらいなら捨てろ、ウルガーはそう言ったのだ。
ルーナはぐっと歯がみしてローレンスへの補助と回復に専念する。
すでにローレンスは何度も死んだ。彼は超勇者であるが……人間なのだ。限りある命なのだ。
それでも何とか戦えているのは、ルーナによる高速の蘇生術があるからである。
だがそれも限界がある。蘇生のたびに魔力と精神力をごっそり持って行かれる。
蘇生・回復のタイミングを間違えれば、自分たちは敗北する。一番負担がかかっているのは言うまでもなくローレンスだが、失敗できないという点でルーナにもかなりのプレッシャーがかかっていた。
魔王はローレンスパーティの要がルーナにあると理解したのか、執拗にルーナを狙ってくる。
片腕を失ったウルガーは必死になってルーナを守る。ルーナはそんな痛ましい姿を見ていられなかった。
失血死という単語が脳裏をちらつく。ウルガー。嫌なやつだった。いつだって自分が目立つことばかり考えて、仲間のことを全く考えない、嫌なやつ……。
でも……。
でも今は……。
「ルーナ!」
びくんっ! とルーナが体を萎縮させる。
ローレンスが前を向いたまま言う。
「大丈夫だ! ウルガーを治療しろ!」
「で、でも……!」
「おれは、大丈夫だ!」
大丈夫なものか。ローレンスが一番死に近い。彼が捨て身で戦って、ようやく魔王と拮抗している状況なのだ。
自分の回復がなければ、彼はあっという間に死んでしまう。そう、自分が死ぬ状況であっても、彼は仲間を助けろと言ってきたのだ。
「大丈夫だ! おれは勝つ! 忘れたのか! おれたちの陰に、誰がいるのかを!」
はっ、とルーナは気づく。そう、日の当たるところにいるルーナ達。その陰にはいつだって、あの口の悪い自称悪徳ギルドマスターがいた。
あのギルマスが作り上げた、最高の勇者とその仲間達。
そう、自分たちはタダの勇者パーティじゃないのだ。
世界最高のギルマスが作り出した、世界最強のパーティ。史上最強の勇者なのだ。
「この程度で負けるはずがない! おれは! おれの! 責務を! 全うする! ぬぅうううううううううん!」
さらに勇者が己の命を削って、攻撃を開始しだした。
回復のすきを作るためだ。
「ごめん……ローレンス! ごめん……!」
ルーナがウルガーに治癒を施す。
魔王の与えた傷はふかく、またじわじわと命を奪うのろいまで付与していた。
ルーナはほぼ一瞬でそれらを解除し、またローレンスへの治癒を再開する。
「ばか……やろう……僕のことなんて捨て置けば……」
「そんなこと、できるわけないでしょ……!」
彼らは長い時間を過ごし、ともに戦ってきた仲間なのだ。
「誰一人かけてもだめなの! あの人が……ギルマスが! 待っているのは、あたし達全員なんだから!」
ウルガーは己の過ちに気づく。自分が犠牲になって、世界が、ギルマスたちが生きていればいいと。
「ああ、すまなかった……ねっ!」
ルーナめがけて跳んできた触手を、ウルガーが片腕で操った槍でつく。
右腕は魔王の触手に食われてしまった。しかも厄介なことに、存在そのものを食われてしまってるようだ。
蘇生は、できない。だが血が止まり、体力も回復したウルガーは、猛攻をはじめる。
そう、誰も欠けてはいけない。自分たちは負けない。求めるのは、ビターエンドではないのだ。
完全無欠の、ハッピーエンドなのだから。
【★☆★とても大切なお知らせ★☆★】
新作投稿しました!
タイトルは、
『神眼持ちの【獣医令嬢】は破滅を回避し田舎で静かに暮らしたい〜バッドエンドな未来を回避するため、辺境で町医者はじめたら、何故か獣の国の王子様と神獣モフモフたちから溺愛されてます〜』
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