162.凍る時《せかい》
俺はフレデリカと霊装……一体化した。
月面での、黒幕 天羽との最終決戦。
この最後の戦いの場において、時王の目を失うという最大のピンチ。
俺は仲間たちと、そしてフレデリカと紡いできた絆の力を武器を手に、やつの前に立っている。
「まさか君が、霊装を身につけるとはね。驚嘆に値するよ」
天羽は……笑っていた。
どこかうれしそうだった。妙なやつだ。
『ゆきましょう、マスター。やつを一刻も早く倒さねば、地上で超勇者ローレンスたちが魔王と戦っておりますゆえ』
「わかっている。魔王への魔力供給源でであるこいつを殺さないかぎり、ローレンスたちの勝利はない」
ここで、決める。これが本当に、最後のチャンスだ。
天羽はにやりと笑って俺たちを見やる。
「その意気やよし。だけどかなうかな? 時を飛ばせるボクに、君たちがどう立ち向かう?」
天羽がまた能力を発動させた。
時間を消し飛ばし、結果のみを残す、最強の能力。
だが……。
「俺たちにはもうきかん」
「なっ……!?」
俺は天羽の目の前にいる。
驚いたやつの顔面に、拳の一撃をお見舞いする。
どごん! という大きな音とともに、天羽がピンボールのように飛んでいく。
「あり得ない……確かに時は飛ばされた。君たちは止まったときのなか、動けなかったはず……」
天羽がもう一度、時飛ばしを発動させる。
だが結果は変わりない。
俺は今度は、氷のナイフを使って天羽に切りつける。
「ぐっ……! なんだ……何が起きてる……理解せねば、未知を、理解せねば……!」
「どうした、天羽。いつも余裕のおまえが、今はすごい動揺してるじゃあないか」
天羽は超越者だ。
やつは長い長い時を生きている。その頭脳には様々な経験が蓄積されてるのだろう。
そんな天羽にとっても、予想外の出来事が起きてる。
生まれて初めての、未知に対する恐怖心を覚えてるのだ。
「こっちから行くぞ」
世界が……凍り付く。
何もかもが、凍結していた。
天羽が微動だにしないなか、俺だけが動く。
そして、天羽の体に氷のナイフを突き刺した。
「ぐああああああああああ!」
ぶしゅっ……! と天羽の肩から血が噴き出す。
「ばかな……接近を知覚できなかっただと……!?」
「凍り付いた世界では、おまえも動けないのだよ」
「凍りついた……ま、まさか……!」
天羽が呆然とつぶやく。
「君は……時を止めていた。否……時を、凍結させていたのか!」