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159/229

159.声



 俺は黒幕である天羽あもうとの最後の戦いに挑んでいる。


 強大な敵を前に、俺とフレデリカはなすすべがなかった。


 時王の眼を奪われ、もう駄目だと思ったそのとき、俺の耳にやつの声が聞こえたのだ。


「イランクス……なぜ、貴様が……?」


 イランクス。俺をギルドから追放した人物だ。


 後に、悪神の手先となって俺を倒しに来たという過去がある。


 やつは今、鉱山奴隷として捕まっていたはず……。


『ふんっ! だらしない。なんだその無様な姿は!』


 どこからか、やつの声がする。それに俺の姿が見えてるような言い方だ。


「自分の力っす!」

「ヴィーヴル……」


 勇者パーティのパシリ、邪神竜ヴィーヴルが、後ろに控えている。


「自分の新しい能力、それは、意識のリンク! あらゆる人との五感情報を共有することが、できるんす!」


「つまり……ヴィーヴルの見ている情報を、他者とリンクさせることができると?」


 フレデリカの言葉に、ヴィーヴルがうなずく。


「アクトさんの戦いを、地上の人たちがみんな見てるっす!」


「……馬鹿が。なんでそんなことを」


 すると……。


『みな、あなた様のお役に立ちたいからですわ!』


「ロゼリア……」


 ヴィーヴルが地上にいるロゼリアの声を、俺に届ける。


 俺のギルドのエースである彼女が、俺を見ていると言うことは……。


『ギルマス! がんばってください!』


 弟子のユイが、応援する。


 ユイだけでない。俺のギルド、天与てんよの原石の連中の声が届く。


『負けないでギルマス!』『あなたならできる!』『アクトさーん! がんばってー!!!!』


 ギルド連中以外の声も聞こえてきた。


 町長、国内外のえらくなったやつら。そいつらが、みな俺を後押しする。


「なぜ……だ。俺を応援する義理など、貴様等にはないだろう? 俺は……俺のために、貴様等を利用しただけにすぎないのに」


『ふん! 何を勘違いしてるのだアクト・エイジ!』


 イランクスが不敵に笑ってるように言う。


『愚かな貴様に教えてやろう。みな、貴様のくさい芝居を、理解してるのだ。自らが悪役となって、追放する。そうすることで遺恨を残さず、新しい場所へ行けるように。その優しさを、やつらは理解してるのだよ』


 ……驚いた。


 まさか、こいつが、よりにもよって俺を理不尽に追放したやつが。


 俺を……理解してるとは。


『すまなかった、アクト・エイジ』


 そんなふうに、やつが俺に謝罪する。


『貴様を追放したのは、わしの間違いだった。でも……今は後悔していない。なぜなら、貴様は新しい場所で、こんなにもたくさんの、優秀な原石を磨き上げてきたのだからな』


 俺の中にたくさんの人たちの声が届く。みな俺を応援している。みなが、俺に立ち上がれと勇気をくれる。


 ……俺のやっていることは、正しい行いのなのか。


 俺はずっと迷っていた。


 原石を拾っては磨き、そして世に放つ。

 そうしていけば、世界は強くかしこいやつらであふれて、いずれ世界が平和になるとそう信じてやってきていた。


 でも迷いが無いわけじゃ無かった。

 この世界に住む人たち全員の才能を、磨き上げるのは無理だと。そんなことして意味が無いのでは無いかと。そう思って。


『貴様は間違っていない。アクト・エイジ! 貴様の行いは世界を着実に平和にしている! 後もう少しだ! もう少しで貴様の理想の世界に、誰も傷つかない、優しい世界が出来上がるんだ!』


 だから、とイランクスが言う。


『こんなところで諦めてるんじゃあない!』

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