157.新事実
フレデリカの氷の力を受けて、天羽が氷塊に閉じ込められる。
はあはあ……とフレデリカが肩で息をする。
「や、やりましたよ、マスター! あなた様の的確な指示のおかげです!」
フレデリカは額に汗をかいている。
正直奴も限界なのだろう。
俺はフレデリカに、限界以上の力を要求した。彼女はそれに200%の力を以て応えた。
奴の頑張りは評価したいが、しかし肉体に負荷をかけてしまった。
「まだだ。安心するのはまだ早い」
「そのとおりさ」
ぱしゃっ、とフレデリカの氷が解除される。
天羽はにやりと俺たちに笑みを向けてくる。
「そんな……これでも、無事ですって?」
「無事ではないかな。見た目以上に消耗してるよ僕は。……正直君たちには驚かされてばかりだよ」
すっ……と天羽の顔から笑みが消える。
「だからこれからは、本気でやらせてもらおうかな」
ごっ……! とフレデリカが、気付いたらもう地面に転がっていた。
時王の眼の動体視力で、かろうじてやつの速さが目で捉えられた。
「フレデリカ!」
「余所見はいいのかな?」
ボッ……! とまたも次の瞬間、俺はフレデリカ同様に地面を転がっていた。
がっ、どがっ、と俺たちはボールのように飛ばされていく。
天羽の動きが、読めない。
膂力は変わってないが、スピードが格段に上昇していた。
俺たちは立ち上がることもできず、ただ翻弄されるばかり。
俺が指示を出す前にフレデリカか俺のどちらかを潰される。
連打につぐ連打。俺はどうすることもできず、地面に転がる。
「よく頑張った方だよ、凡人にしてはね、アクトくん」
「凡人……だと?」
そのとおり、と天羽がうなずく。
「君は凡人さ。君の周りの天才たちと違って」
「そんなことはない……! マスターは天才です! 唯一無二の最高のマスターです!」
フレデリカが否定する。だが天羽は、首を振る。
「いいや、彼はあまりに凡俗だ。パワー、スピードは並。魔力量もそんなだし、魔法の才能も無い。特別なものは、何もない」
「違う! マスターには、時王の眼が……!」
いいや、と天羽が笑う。
「違うよ。時王の眼は、彼固有の才能じゃない」
「どういうことですかっ?」
天羽は、俺を見て言う。道ばたに堕ちている、潰れた虫を見るような目で。
「簡単さ。アクトくんの持ってる時王の眼は……僕が彼に与えたものだからね」
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