表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

155/229

155.信頼と成長



 俺と超越者との戦いに、部下のフレデリカが現れた。


「馬鹿者が……貴様に頼んだのは、地上の防衛だろう。なぜここに来たのだ?」


 銀髪のメイドが、ふっ……とうれしそうに笑う。


「良かった」

「なにがだ?」


「帰れ、とは命令しないのですね」


 ……言われ、確かにそうだと思った。


「マスター。わたくしはあなたの忠実なるしもべ。あなた様の望みがわたくしの望み。あなた様が帰れとご命令なさるのでしたら、今この場で去りましょう」


「……ふん。勝手なことを」


「余計なことを、とは言わないのですね。ふふ♡」


 まったく、この女は面倒だ。

 こちらの言葉を勝手に全部翻訳してくる。……あながち間違えではないとこがたちが悪い。


「へえ。フレデリカ。久しぶりじゃあないか」

「あら、元マスター」


 元々この女は、天羽の元で護衛をしていたのだ。


 俺が天羽の元での修行を終え、出て行くときに、こいつの身柄をもらいうけたのである。

「主人の命令に逆らうなんて、番犬が堕ちたものだね」


 天羽の言葉は神経を逆なでするようなものだ。


 かつてのフレデリカならば、確かに主人の命令には絶対従っていたろう。


 フッ……とフレデリカが余裕の笑みを浮かべる。


「残念ですが、わたくしはもう番犬ではございません。わたくしは外に出て、アクト様と出会い……変わったのです」


 彼女は俺を見て微笑む。


「マスターとともに過ごしたこの年月は、わたくしを番犬から一人の女にしてくださりました」


「そっか……君もまた、才能の原石の一つだったわけだ。それを彼が磨いたと」


「ええ……おかげでわたくしは、生きる理由を見いだしました。生きてて、楽しいって、そう思えるようになりました」


「だから、親であるボクはもう不要ってわけだ?」


 フレデリカは今度は天羽を見据える。


「違います。わたくしはあなたが不要だとは思っておりません。あなたがいなければ、わたくしはアクト様とで会い、変わることができなかった。だから、感謝はしています」


 けれど、と彼女が続ける。


「アクト様の歩む道を、邪魔するというのなら……わたくしは実力を行使し、あなたを排除します」


 腰のナイフを抜いて彼女が構える。


「乗り越えさせて貰います、元マスター」


「そうかい。……そりゃあ、重畳だ」


 天羽が微笑みを浮かべる。それは、いつも浮かべているような、感情の読めない笑みじゃなかった。


 どこか、慈しむような笑み。目の前にいる女が、強く成長したことに対する、喜びを感じてるかのような……。


 父性を思わせるような、笑みだった。


 一瞬だけフレデリカがひるむ。だが戦意は喪失していない。


「戦えるな?」

「ご命令とあれば、手足がちぎれようと」

「そうか……なら……」


 俺はフレデリカの隣にたち、拳を構える。


「俺を手伝え、フレデリカ」

「イエス、マイロード」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ