表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/229

151.勇者、魔王と相対する



 悪徳ギルドマスター、アクトが、黒幕との死闘を繰り広げる……一方その頃。


 勇者ローレンスは魔王を討伐するため、魔王城に乗り込んでいた。


 魔王となった悪神フョードルのもとへ向かうローレンスとその仲間たち。


 道中の罠、待ち受ける敵を、彼らはことごとく排除していった。


 そして……。


「む! ここだな!」


 ローレンスたちは城の最奥部へと到着した。

「ど、どうしてわかるのだね?」


 サブリーダー、槍使いのウルガーがローレンスに尋ねる。


「うむ! 勘だ!」


「勘って……根拠を示したまえよ……まったく」


 だがウルガーも、そしてみんなもわかっていた。


 この常識を超越する勇者……超勇者がそう言ってるのだから、本当にここが魔王の居場所であることを。


 みなローレンスのあり得ない力、彼が引き起こすあり得ない事象を、重々承知しているのだ。


「いよいよ……最後の戦いですね」


 魔法使いイーライが、緊張の面持ちで言う。

 イーライ、ウルガー、ルーナ、ミード。そして……ローレンス。


 誰もかけることなく、彼らは魔王の前までやってこれた。


 みな、アクトが選び、磨き上げた、正義の光を放つ宝石たち。


 アクトは、自分たちを信じて送り出した。


 未来を見通す目を持つ彼が、である。


 それはすなわち、敬愛するギルドマスターが、ローンレスたちの勝利を確信しているということだ。


「みな、聞いてくれ!」


 ローレンスがウルガーたちを見渡す。


 その顔は一切曇ることはない。


 そう……なぜなら、彼らには最高の師匠がいて、帰りをまっててるから。


「ここまで来たら、もう何も言わない。ただ一つだけ……勝つぞ!」


 言うまでもない、とばかりに、ウルガーたちがうなずく。


 彼らの瞳におびえは見られない。気の弱いイーライですら、強く前を向いている。


 誰もが未来を信じてる。

 自分たちが魔王を倒して、平和な世界を取り戻すことを。



 アクトが、よくやったと褒めてくれることを。


「いくぞ!」


 ローレンスが魔王の間へつながる扉に触れる。


 ぱっ、と扉がかききえる。


 ローレンスたちは武器を手に中に入る。


 赤い絨毯の轢かれた、重々しい雰囲気の室内。


 最奥には椅子に座る、悪神フョードル。


「……その扉には、何重にも封印を施しておいたのですがね」


 うめくように悪神がいう。


「む! そうだったのか! それはすまない! 開けたいと思ってふれたら開いてしまった!」


「剣を使わず、厳重な封印を粉々に砕いてみせるとは……。く、くくく! あははは!」


 悪神がニヤリと笑う。

 その目には狂気が宿っていた。


「待っていましたよ、あの憎きアクトの選んだ、勇者たちぃ……!」


 悪神から立ち上るのは、邪悪なるオーラ。


 少し前の彼らだったら、見ただけで死んでいただろう。


 だが、今の勇者たちは、その程度のオーラを前にしてもおびえることはない。


「おれは勇者ローレンス! 魔王! おれは君を倒しに来た!」


 ローレンスは剣を片手に堂々と名乗り上げる。


「おれは争いを好まない! 人間の世界から手を引いてくれるというのなら、おれは剣を振るわない!」


 剣を持ってないほうの手をのばし、ローレンスが言う。


「君も! 一緒に幸せな世界を作らないか!」


 だが……ローレンスからの問いかけが、終わる前に……。


 ぼっ……とローレンスの腕が吹き飛んだ。


 ……瞬時に再生される。治癒術士ルーナの高速再生魔法だ。


「交渉決裂……かしらね」


「ま、だろうね」


 ルーナとウルガーが溜息をつく。

 もとより話し合いなど、わかりあうことなど不可能なのだ。


 魔王と勇者は、油と水のような物。


「君は戦うというのだな! 残念だ! 実に、残念だ……!」


 ローレンスから、殺気が立ち上る。


 本気で敵を倒し……殺そうとする。


 意識を戦闘に傾けただけで、城が……大気が、地面が震える。


「いくぞ魔王!」

「こい、勇者ぁ……!」


 聖と邪、ふたつの力が今、激突する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ