146.仲間たちの活躍
勇者ローレンス達は魔王の城へと乗り込んでいる。
イーライのおかげで次の部屋への入り口を発見。
前へと進んだローレンス一行。
次の部屋の前へとやってくる。
「これなら楽勝っすね!」
ヴィーヴルが楽天的な意見を出す。
「みんなちょーパワーアップしてるんすからぁ! これなら魔王の城のトラップも、魔王だってちょちょいちょいで突破っすよー」
「そりゃどうかしらね」
回復術士のルーナが呆れたように言う。
今まで敵は本気で勇者たちを殺しに来ていた。
ヴィーヴルのようにお気楽でいたら足をすくわれる……。
「さ、次の部屋に入ろうっす~」
「あ、こら! 待ちなさい!」
ルーナの制止を無視してヴィーヴルが中に入る。
……その瞬間、ヴィーヴルはこと切れる。
「む! どうしたのだ! ヴィーヴル!」
「返事がないね、ただのしかばねのようじゃあないか」
槍使いウルガーの言う通り、ヴィーヴルは完全に死んでいた。
じっ、とイーライが部屋全体を見渡して、敵の罠を見破る。
「入った途端に即死する呪いがかかってます」
「それは問題だ! イーライ! ヴィーヴルの回収を!」
イーライは重力魔法を使い、ヴィーヴルを部屋の外へと運び出す。
「ルーナは蘇生を!」
「問題ないわ」
ルーナはこつん、と持っていた杖で、ヴィーヴルの頭をつつく。
「かは! はぁはぁ……え、自分、どうなったんすか?」
ヴィーヴルが不安げに周りを見やる。
にかっ、とローレンスが笑って答える。
「死んだ!」
「死んだぁ!?」
「だが生き返った!」
「命が安すぎる!?」
進化した勇者パーティにとって、蘇生はそれほど難しい技術ではない。
特に進化したルーナにとっては、死んですぐの存在であれば、ほぼノーリスクで蘇生できるのだ。
むろん魔力がある限り、という縛りはあるが。
「魔王の部屋はこの呪われし部屋の向こうにあるようだね」
ウルガーが槍の先端で、部屋の奥を指す。
「おれが部屋ごと消し飛ばす!」
「部屋を消すってやばいっすね……」
いや、とウルガーが首を振る。
「君は体力を温存しておきたまえ。この呪いの解く方法はある」
ウルガーが鋭い視線を部屋に向ける。
「呪術には発動の際に核を必要とする。ルーナの解呪の魔法で呪いを解くよりは、その核を破壊した方が効率がいい」
パーティメンバが、ぽかんとした表情になる。
「な、なんだね?」
「ウルガー……おめえ、勉強嫌いじゃなかったのか?」
ミードに指摘され、さら、と自分の銀髪をなでる。
「ま、リーダーが脳みそ筋肉馬鹿だからね、サブリーダーの僕がちゃんと頭脳労働しなきゃってもんだろ?」
メンバーたちは感心していた。
ウルガーはかつて、戦って目立つことばかりを考えていた。
しかし彼は自分の役割を理解したのだ。
前に出て戦うこと、そして、リーダーを補佐すること。
「うむ! 頼もしいぞウルガー!」
「ウルガーさん、すごい成長です!」
「ま、ギルマスのおかげなんだろうけどね」
イーライが褒め、ルーナが苦笑する。
彼に適した役割を、アクトが示してくれたからこその成長だった。
「ま、ギルマスには凱旋パーティで、金一封でも与えようじゃあないか。なあリーダー?」
彼の眼にはおびえはない。
負けるなんて微塵も思ってないのだ。
アクトが示した未来を、誰もが信じているから。
「そんなわけで、ミード。核をつぶしたまえ」
「おうよ」
部屋の中には、底なし沼のような闇が広がっている。
どこに核とやらがあるのかわからない状態。
それでも、弓使いのミードは一切焦らない。
もうかつてのように、理不尽に蹂躙されるだけの存在じゃない。
彼女もまたアクトの手で才能を磨かれ、強く成長したものの一人。
暗闇の中、呪いの痕跡をたどって、遠くから射貫くことくらい造作もない。
ミードは短弓を構えて発射する。
魔法の矢は正確に、最小限の力で、呪術の核をつぶしてみせた。
ずぉおお……と闇が引いていく。
「す、すんげえ……なんにも見えない闇の中で、的を見つけ出すなんて。距離も方向もわからなかったのに」
ヴィーヴルが仰天している。
だがミードもふくめて、だれも驚いていない。
パーティメンバーたちはお互いがお互いの力を信頼している。
彼女が出来ると言ったのならば、それを信じる。
ローレンスを中心に、アクトが描いたチームの輪は、この程度の困難を前に揺らぐことはない。
「ゆくぞ、みな!」
ローレンスと仲間たちは進んでいく。
その瞳に勝利と未来を携えて。
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