145.教え子達の、活躍
アクト・エイジに育てられた勇者パーティたちは、魔王の城へと乗り込んだ。
魔神ドストエフスキーの部下、七つの大罪の待つ部屋へと訪れたのだが……。
「まったく。いつもながら凄すぎるね、君は」
大剣を背負った大男、勇者ローレンス。
彼は固い魔王城の壁ごと、中にいた強大な敵七体を一気に消滅させたのだ。
「うむ! 急ぐからな! 七人も相手してられん!」
「すごいですローレンスさん! さすがアクトさんのお弟子さん!」
魔法使いの少年、イーライ。
桃色の髪に、一見すると美少女に見える風貌。
かつては弱いからとパーティを追放された彼であったが、今ではローレンスの異次元の強さを見てもびびらないくらいには、精神的に成長を見せていた。
「ったく、力をあんま使わないでよね、決戦の前に」
回復術士ルーナが失ったローレンスの体力を回復させる。
「ん? どうやらこっちに通路があるみたいだぜ」
弓使いのハーフエルフ・ミードが、その卓越した聴力によって隠し通路を発見。
「よし、では参ろう!」
ローレンスは仲間を引き連れて半壊した魔王城へと進んでいく。
ミードの見つけた部屋の入り口をくぐり、奥へと進んでいく。
「どうやら七人全員を倒さないととけない呪術がドアにかかってたみたいね。呪いごと粉砕してあるけど」
「破壊の限り尽くしてる……もうあんたが魔王っすよぉ~……」
溜息をつくルーナの後ろに、魔族の女ヴィーヴルがついてくる。
彼女も超勇者を倒すための作られた最終決戦兵器なはずなのだが……。
この中で一番弱いのがヴィーヴルである事実に、彼女自身が戦慄する。
「む! なんだこの部屋は!」
ローレンス達がたどり着いたのは、広いホールのような場所だ。
壁一面には無数のドアがついてる。
空を見上げると、天井が見えないくらいに壁がそびえ立っている。
「どのドアをくぐれば良いのだろうね」
「こんな数の中から正解のドアなんてわかりっこないっすよお!」
しかもドアが自動で開いて、そこからドロドロとした液体が流れ出す。
じゅっ……と、液体が地面に当たった瞬間に、固い地面を溶かした。
「ひぃ! もたもたしてたら死ぬっすぅう! 早く見つけてぇ!」
「うむ! イーライ!」
「はい!」
ローレンスに言われてイーライが前に出る。
精神を集中させ、周囲に魔力の波を放つ。
酸が押し寄せてくるなかで、彼は実に冷静だった。
「わかりました。これはすべて幻術で作られています!」
「ま、まじっすか? じゃあこの酸にふれてもだいじょうぶってこと?」
ヴィーヴルが不用心に、酸を指でつつく。
じゅぅうううう!
「ほんげぇああああああああああああああ!」
「強力な幻術です。実際に痛みを感じるほど」
「とけるぅううう! 腕がぁああああ! 体がぁああああああ!」
イーライは杖を振りかざす。
それはかつてアクトとともにとりにいった、神器と呼ばれる最強の武器のひとつ。
ともすればサクラの枝のような杖を、彼は頭上にかざす。
「いきます……! 【満開】!」
イーライのかけ声とともに、杖の枝に花が咲く。
それは桜吹雪となって周囲に散らばる。
幻術で作られたドアがすべて消えていき……やがて、一つのドアだけが残る。
「なんつー高出力の魔法……。イーライさんが本来持つ魔法力を、完全に引き出してる……っす」
いつの間にか怪我が治っているヴィーヴル。
イーライは完璧に敵の幻術を見破って見せた。
「よくやったぞ、イーライ! おれは鼻が高い!」
ローレンスに褒められ、イーライははにかむ。
「アクトさんのおかげです……ぼく、ここまで、強くなれました!」
ローレンス達が笑顔でうなずく。
仲間の成長は、一番近くで見てきた彼らがよく知っている。
「よし、いこう!」