137.勇者パーティ、遊びに来る3
俺の部屋に集まっている、ローレンスおよび極東勇者パーティ。
「おれたちは、四天王を全て倒した! これより、魔王討伐に向かう!」
大男、ローレンスが力強く言う。
魔王。邪悪なる者共の王。
やつは魔王の国の奥にいる。
魔王を守るのは、4つの結界。
それぞれ、四天王が持つ装置を基点にして、結界が張られており、ローレンス達は攻められていなかったのだ。
だが、彼らは先日、最後の四天王を倒した。
結界は解除され、魔王城へ乗り込めるようになったのだ。
「そうか。ご苦労だったな」
「おいおいギルマスぅ。君がのほほーんとしてる間に、ボクらは必死になって戦ってたんだぜぇ?」
槍使い、銀髪のウルガーが、ため息交じりに言う。
「もっとねぎらいの言葉が、あってもいいんじゃあないかい?」
それを聞いたルーナが、苦笑交じりに言う。
「要約すると、がんばったんだから、もっと褒めろってことね」
「んなっ!? ち、ちちち、違うよ君ぃいいいいいいい!」
「図星か」「ウルガーさんかわいいです!」
弓使いミードがため息交じりに、、魔法使いイーライが笑顔で言う。
「ふん。馬鹿か貴様。まだ本丸の魔王が残っているだろうが」
俺はウルガー、そしてローレンス達を見回す。
「魔王を倒さないうちから、褒めて欲しいだと? 報酬の要求は、きちんと使命を果たしてからにしろ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
ウルガーが悔しそうに歯がみする。
と、そのときだった。
コンコン……。
「失礼します」
「カトリーナか」
受付嬢長、カトリーナが、俺たちのもとへやってくる。
「本日の宴会のご予約についての確認なのですが……」
「「「え、宴会……?」」」
……やれやれ。
カトリーナめ。あとで説教だな。
「宴会ってなによ」
火賀美と極東の勇者たちが、首をかしげる。
だがローレンスパーティたちは、納得気にうなずく。
「「「ああ、なるほど……」」」
「ど、どーゆーことっすか?」
困惑する元魔族ヴィーヴルに、ルーナが説明する。
「つまり、ギルマスは、わかってたのよ。四天王を倒して、その報告を今日、しにやってくるって」
「おれたちをねぎらうために! パーティの準備をしてくださったのだな!」
「さすがギルマス! 用意周到です!」
ローレンス、そしてイーライが、笑顔でうなずく。
「ほらウルガー。良かったじゃん。ギルマス応援してくれてるって」
ミードがニヤニヤしながら、ウルガーの背中をバシバシ叩く。
「ば、ばっか……ボクは別にぃ、喜んでなんて、ませんけどぉ~?」
ちらちら、とウルガーはこちらを見ながら、頬を赤く染める。
「ま、まあ! ボクらのなした偉業を考えれば! 宴会の一つや二つくらい、用意して当然だろうからね! それを享受するのも、ボクらの当然の権利さっ!」
「「「素直じゃないな~」」」
ローレンス達が、ウルガーをいじり倒す。
「お気楽なやつらね、ほんと」
火賀美が呆れたように言う。
「ま、だからこそ、強いのかもね。馬鹿ほど飲み込みが早いって言うし」
「貴様らも十分に強くなってるようじゃないか」
四天王を全て倒せたのは、ローレンス達が居たことももちろん、それを極東勇者達がサポートした面も大きい。
「ザコの掃除や、周辺住民の避難。貴様らの貢献も大きい」
「な、なによぉ~……もぉ~……そんな……照れるじゃないの」
もじもじ、と火賀美が顔を赤らめてうつむく。
「「「「火賀美様も、素直じゃないな」」」」
「うっさい!」
勇者とその仲間達に、暗い影はない。
彼らの表情は明るく、モチベーションも高い。
ふん……どうやら大丈夫のようだ。
「アクトさん!」
ローレンスがみなを代表するように、俺の前に立ち、頭を下げる。
「ここまでこれたのは、アクトさんがいたからだ! ありがとう!」
「ふん。勘違いするなよ」
「「「で、でたー!」」」
パーティメンバー達が、ガキのようにわくわくした様子で俺を見やる。
「ギルマスのツンデレだっ」
「どうせ大方、【貴様らはコマに過ぎん】とか、妙なことを言うんだろう?」
「すなおじゃねーよなぁ、ギルマスって」
ヴィーヴルは目を丸くして言う。
「なんかローレンスパーティのみなさん、ギルマスへの対応に慣れてますっす」
「ま、これだけ長く付き合ってたら、わかるんじゃないの」
やれやれ、と火賀美が首を振る。
「ふん。まあいい。今日はせいぜい、英気を養い、明日からの戦いに挑むのだな」
「アクトさんも、宴に参加するのだろう!」
「ふん。当然だ。金を出してるのは俺だぞ?」
「「「やったー! アクトさんと飲みだぁあああああああ!」」」
「ガキかっつーの……」「まったくっす」
かくして、ローレンス達は、決戦前の宴会に、参加することになったのだった。