136.勇者パーティ、遊びに来る2
俺の部屋に、ローレンス、極東、2組の勇者パーティが遊びに来た。
部屋の中の人口密度が一気に増す。
なにせ、ローレンスたちは6人。
火賀美たち極東パーティは5人。
合計で11人だ。
簡易テーブルとソファをフレデリカが持ってきて、全員が腰を下ろしている。
槍使い、銀髪の青年ウルガーが、長い足を組んで言う。
「こんなに素早くソファなどが出てくるってことは、ギルマス、僕らが来ることを予見してたのかい?」
「さて、どうだろうな」
俺は紅茶を啜ると、ローレンス達は「おお……」と感心したように言う。
「さすがアクトさんだ! やはりすごい!」
「いやあんたら、ちょっとこの人のこと神聖視しすぎじゃない……?」
極東の勇者パーティのリーダー、女剣士火賀美が、呆れたように言う。
「どーせ偶然でしょ? 無愛想で何も言わないから、勝手にあんたたちが想像してるだけじゃない?」
「む! そんなことないと思うぞ!」
「しつれいしまーす!」
がちゃっ、と扉を開けて、俺の弟子、ユイがカートを押して入ってくる。
「アクト様! 言われたとおり、お昼ご飯もってきましたー!」
カートの上には、11人分きっかり、昼食が用意されていた。
「な! アクトさんはおれたちが来ることをわかってて、腹を空かせてるだろうと思って昼食まで用意してくれてたのだ! どうだ、すごいだろう!」
「はぁ……まぁ……。てゆーか、なんであんたが誇らしげなのよ」
笑顔のローレンスに、火賀美が呆れたようにため息をつく。
「なぜなら! アクトさんは! おれの恩人だからだー!」
元々ひょろくて使えぬガキだったこいつを、俺が拾って磨き、世に放ったのだ。
「そうだ。だから、その恩はきっちり返せよ?」
俺が言うと、ローレンスが実に嬉しそうに、うなずく。
「無論だ!」
「ローレンス様! 先に昼食を召し上がってください」
「ありがとう! ユイくん! みな、食べるぞぉ!」
「「「おー!」」」
ローレンス達がガツガツ、とうちのギルド特製のサンドイッチを食べる。
「うまい! うまい! うまあぁあああああああああああい!」
「ちょっ、ローレンス、食べながらしゃべらないでおくれよ」
ウルガーが迷惑そうに顔をしかめる。
「アクトさん考案のランチは本当においしいですっ。さすがアクトさんですっ!」
「いやだからイーライ、別にアクトがすごいんじゃなくて、作ったヤツがすごいんだと思うわよ……」
目を輝かせるイーライに、火賀美がため息をつく。
「でも、考えついた人が一番すげーよ」
「それはそうよね」
うんうん、とルーナとミードがうなずく。
火賀美はその様子を見て、大きくため息をつく。
「あんたたち、ローレンス・パーティじゃなくて、アクト様ファンクラブにでも改名したら?」
「「「「…………なるほどっっ!」」」」
「冗談に決まってるでしょ!? バカじゃないのあんたら!?」
「おお、じょーしきてきな意見っすね~」
俺の隣で、もしゃもしゃ、と元魔族のヴィーヴルがサンドイッチを頬張っている。
「貴様、ナニをしてる?」
「あ、いえ。ギルマスがサンドイッチたべてなかったので、いらないのかなーっと思って、食べてあげたっす! どれもう一口……」
ダンッ……!
と、テーブルの上に、氷のナイフが突き刺さる。
「うひぃいいいいいい!」
「……これは、マスターの、ものです」
フレデリカが極低温の視線を、ヴィーヴルに向ける。
あと数センチずれたら、ヴィーヴルの手にナイフが突き刺さるところだった。
「勝手に食べるとはどういう了見ですか? 死にたいのだと……解釈しても?」
「ごめんなさい命はまだおしぃっすぅううううううううう! 助けてアクト様!」
がたがた! とヴィーヴルが体を震わせ、俺の後ろに隠れてる。
「騒々しい、静かにしろ。食事中だ」
「ほーら! 聞きましたヴィーヴル様?
マスターは食事中なのですよ! そこから離れなさい!」
「貴様も少し黙ってろ、フレデリカ」
「「ひゃい……」」
しゅんっ、と駄犬と馬車がうなだれる。
その様子を、火賀美が呆れたように言う。
「伝説の魔獣フェンリルと、対超勇者兵器の邪神すらも、アクト様ファンクラブの一員とか……やばいわね、ここ……」
ほどなくして、勇者達が飯を食い終わる。
食後の茶を飲みながら、ローレンスが言う。
「アクトさん、今日おれたちは、報告にきた!」
「ほぅ、何の報告だ」
ローレンスは真っ直ぐに、俺を見て……こういう。
「おれたちは、魔王との最終決戦に、いよいよ挑む!」




