123.ブラック錬金術師ギルドを追放されたポーション師2
俺は錬金術師ギルドを追放された少年、ショーンを保護した。
その足で、俺は魔道具師ギルドを訪れていた。
「あー! ギルマスぅ! お久しぶりじゃあないですかー!」
研究室のデスクに座っていたのは、丸眼鏡にお下げの少女。
妖小人のリタだ。
「まさか会いに来てくれたのですっ? うへへ~♡ うれしいなぁ~……♡」
「貴様に会いに来たのは私用じゃない、仕事だ」
「がーん! ま、まーそうですよねー……わかってましたよ、うん……」
しょんぼりと肩を落とすリタに、俺はショーンを紹介する。
「こいつの面倒をしばらく見てやってくれ」
「別にアクトさんの頼みなら何でも聞きますけど……その子は?」
「ショーンだ。錬金術師ギルドを追放されたとこだ」
「はぁー……なるほど。よろしく、あたしリタっていうんだぁ」
リタはショーンの手を握ってブンブンと振る。
「は、はい……あ、あの……アクトさん? この子、アクトさんのお子さんですか?」
「が、がーん! お子ちゃま……お子ちゃまだなんて……しゅん……」
その場にしゃがみ込み、いじけるリタ。
「違う。こいつは元、俺のギルドの構成員だ。こっちの方が適してると思って追放してやったがな」
「は、はぁ……」
ショーンはよくわかってなさそうだった。
リタはマジマジとショーン少年を見る。
「ギルマスが選んだって事は、この子もとんでもない才能を持ってるってこと?」
「ああ。こいつは才能がある。とびきりのな」
「ほぅ……なるほど~……」
一方でショーンは気落ちしたように言う。
「……ごめんなさい。ポーションしか作れない、落第錬金術師なんです、ぼく」
するとリタはきょとんと目を点にすると、首を振って言う。
「何言ってるの? ポーションって全魔法薬の基礎となる薬品じゃん」
「え、え? そ、そうなんですか?」
「うん! あれ、知らなかったの?」
はい、とショーンが素直にうなずく。
「錬金術師ギルドにいたんだよね? じゃあ上の人たちもポーションの重要性については理解してるはずなんだけど……これは基礎をおろそかにしてるパターンだなぁ」
ははん、とリタが納得したようにうなずく。
「おっけーおっけー。あたしが化学の基礎からみっちり教えてあげるよ!」
ぽんぽん、とリタがショーンの肩を叩く。
「な、なんで……そんな優しくしてくれるんですか? 見ず知らずの他人……しかも他のギルドのメンバーなのに」
リタは笑って言う。
「あたしもね、あなたみたいに昔は役立たずだっていじめられてたんだ。だから、あなたが辛いのよくわかるの」
彼女は微笑んで、ショーンの頭をなでる。
「アクトさんに育ててもらって、今のあたしがいる。ギルマスにうんと優しくしてもらったから、今度はあたしが同じように、困っている人にうんと優しくしてあげよーって思って……それだけ」
リタは俺の教えをきちんと守っているようだ。
成長しているな、フレデリカも、こいつも。
「でへへー♡ どうどうギルマス、あたし成長してるっしょー?」
「さてな」
こういう調子に乗るとこがなければ……一人前なのだがな。
「とにかく、貴様に任せるぞ。ショーン、しっかり教わってこい」
「はい! わかりましたっ!」
「良い返事だ」
強い意志の炎が彼の瞳に宿っている。
早晩、彼は才能の花を咲かすだろう。
「じゃ更衣室はあっちだから、白衣にきがえてきてね」
「わかりましたっ!」
たたっ、とショーンが部屋を出て行く。
残されたのは俺とリタだけだ。
「それで、ギルマス? どうしてあの子拾ったの? 今、忙しいんでしょ? なんかほら、勇者に頼まれごとされてるって」
俺は懐から小瓶を取り出す。
「ウルガーのやつから依頼されてな。瘴気と喚ばれる特殊な毒ガスの成分を調べ、中和する方法を模索して欲しいと」
「なるほど……それに彼がキーとなるわけね」
「そういうことだ」
俺は俺のため、野望を叶えるためにショーンを拾ったに過ぎない。
「うふふ、やっぱりギルマスは、優しいねぇ。そんなギルマスが、でへへ、大好きですよぅ♡」
「調子乗るな。しっかり頼むぞ」
俺はリタの頭にぽんっ、と手を載せる。
「あいあいさー! 彼をウルトラ最高の科学者に育て上げてみせるよっ!」