103.悪徳ギルドマスター、王都へ
書籍版ギルドマスター、6月12日に発売されます!
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俺は王都にギルド【天与の原石】の支店を作るべく、ホームタウンを離れている。
「王都は久しぶりですわぁ♡ ね、ギルマス」
「そうだな、ロゼリア」
日中の王都。
俺の隣には、赤毛の麗しい美女【ロゼリア】が立っている。
「わたくしを従者に指名なさるなんて……ふふ♡ 嬉しいです♡」
燃えるような赤い髪をアップにしている。
すらりと背が高く手足も長い彼女は際だって美しい。
ただSランク冒険者である彼女は今、軽鎧ではなくシャツにスラックスというラフな出で立ち。
腰にはいつものレイピアを携えていない。
「貴様にもそろそろ人の上に立ってもらわねばならんからな。その練習だ」
ロゼリアはキャリアが長い。
戦闘力も申し分ないが、指導力に優れ、なにより人柄が良い。上に立つ才能がある。
そこを伸ばすべく、こうして王都出張に同伴させたのだ。
「わたくしはいつでも、あなたのおそばがいいのに……」
熱っぽく俺を見上げてくるロゼリア。
「バカ言え。いつまでも下っ端でいてもらっては困る。資源の無駄だ」
「そうではなくって……もう……ギルマスは酷いお人です」
「訳がわからん。いくぞ」
俺はギルド協会本部へと出頭する。
「まずはどこへ?」
「本部長に挨拶だ。そこから物件探しだ」
ギルド協会は相変わらず賑わっていた。
ここは冒険者以外のギルドもとりまとめている。
「み、みろ……アクト・エイジだ」
協会の建物に入ると、他のギルド員たちが遠巻きに俺を見やる。
「……あれがウワサの敏腕ギルマスか」
「……四天王を撃破したローレンス・パーティを育成したって言う」
「……貫禄あるなぁ」
ロゼリアは微笑みながら言う。
「さすがギルマス、有名人ですわね」
「くだらん。いくぞ」
俺は真っ直ぐに協会本部長のもとへとむかう。
本部長は俺が顔を出すと、笑みを浮かべて、ソファに座るよう促す。
「アクト、ついに次の本部長になってくれる気になったか」
この男は自分の後任に、俺を据えようと何度もしつこくさそってくるのだ。
「俺は王都にギルドを建てにきただけだ」
「そのまま本部長もやってくれるとぉ~……?」
「バカなこと言ってないで本題に入るぞ」
「チッ……! けちくさいやつめ。はぁーあ。アクトがやってくれたら安心して任せられるんだけどなぁー」
俺は天与の原石の、王都での営業許可に必要な書類を提出する。
本部長は書類に目を通し、審査を行い、承認のはんこを押す。
「ほいよ。何にも問題なし。好きに営業してくれ」
俺は書類をロゼリアに預ける。
「こんなに簡単に審査って通るものですの?」
小首をかしげるロゼリアに本部長は答える。
「まさか。アクトだからこそスルッと審査が通ったんだよ。こいつは口では悪役ぶってるけど、凄い実績があるからな」
「まぁ……♡ さすがギルマス、信頼されているのですね♡」
「知らん」
俺は俺のやりたいように動いてるだけだ。
誰にどう思われてるかなど興味もない。
「さてこれで王都での活動を認められたわけだが……これからどうするんだアクト?」
「ギルド会館を建てる。それと職員の補充だな」
営業許可だけでは活動できない。
拠点となる建物と、必要な人材を集めるのだ。
「建てるって……ゼロからか? 居抜き物件を借りれば楽なのに」
「ちょうど良い貸し物件がなかったからな。それなら自分で作った方が良い。土地は押さえてある」
「はー……もうそこまで考えて動いてるのな。さすが仕事が早いこと」
ロゼリアは首をかしげる。
「建物はどうやって建てるのですの?」
「商工ギルドに話はしてある。いくぞ、ロゼリア」
俺はソファから立ち上がり、本部長と別れる。
「王都は冒険者ギルドが多い。ギルド間のもめ事もホームタウンとは比じゃないだろう。が、まあおまえのことだ、なんとかなるだろ。ま頑張れよ」
本部長が笑顔で俺に言う。
「ではな」
俺はロゼリアを連れて、その場をあとにする。
次にやってきたのは商工ギルドだ。
「建設関係……つまり大工さんたちが所属してるギルドですのね」
「ああ。古い知り合いがここにいる。まずはそいつを訪ねる」
俺は商工ギルドのギルドマスターの部屋へとやってきた。
「アクトさん! ひさしぶりじゃあねえか!」
髭を生やしたドワーフの男が、喜色満面で俺に近づいてくる。
「【トーリョ】。久しぶりだな」
「この方も元【天与の原石】ですの?」
「ああそうだよ嬢ちゃん! 落ちぶれていたわしをアクトさんが助けてくれたんだ! いやぁ懐かしいなぁ……!」
トーリョが俺の背中をバシバシと叩く。
「こんな大きな商工ギルドのギルマスにまで育てるなんて……すごいですわギルマス♡」
「まったくだ! この兄ちゃんはマジで最高の人材育成者だよ! わっはっは!」
「くだらん話はそれくらいにしておけ」
俺はトーリョと打ち合わせをする。
ソファに座る俺たち。
「アクトさんには世話になったからな。全面的にバックアップするぜ! って言いたいところだけどよ、今は人手がたらねえんだわ」
「あら、なんでですの?」
隣に腰を下ろしているロゼリアが首をかしげる。
「ちょうど王城の外壁工事の仕事が入っててよ。そっちに人が行ってるんだ。すまねえな」
馬車に乗って王都へ来る際に、五月蝿くやっていたのが見えた。
なるほど、その関係だったのか。
「王命では仕方あるまい。いくぞ、ロゼリア」
「「え……?」」
目を丸くするロゼリア達。
「ぎ、ギルマス……どこへ?」
「まさか別の商工ギルドへ?」
「違う」
俺はロゼリア達を見て言う。
「人材がいないなら、探せば良い」
【※お知らせ】
先日投稿した短編が好評だったので、連載版、はじめてます!
【連載版】「あんたが神作家なわけないでしょ」と幼馴染みからバカにされたうえに振られた~陰キャな僕が書いたWEB小説が書籍化・アニメ化・映画化までされた後に、作者が実は僕だったと気付いたところでもう遅い
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