第8章 ようやく休める、わけではないらしい
なかなか登場人物を増やすことができない…テンポの悪さを痛感します
「私のほうから説明していなかったのは謝罪するが、まさか魔力切れを起こすまで訓練するとは…」
「魔力数10万とか言われたから結構いけると思ってました…」
車でガソリン50L入りますって言われても1時間でどれくらい使うのかわからないなら限界なんてわからないんだよなぁ…
なんか体がだるいと思ってもつづけた俺が悪いんだけどさ…
部屋で魔法の訓練を初めて2時間後、俺が気絶して1時間後にジャッカルが様子を見に来たときに発見された。
「訓練を続けるのはいいが、あまり根を詰めすぎるのもよくない。今日はとりあえず休むんだな」
その言葉を言った後、ジャッカルは部屋を出て行った。
「…ふぅ」
異世界に来てから初めて落ち着いて休むことができる。召喚、魔力の測定から魔力路の開放、模擬戦、魔法訓練となかなかに忙しかった。
今ならすぐに寝れそうだ…
「………ん?」
部屋の外に人がいる…ような気がする。
魔力を使えるようになってからいろいろ敏感になった気がする。
「………」
「………」
部屋の入口からこちらを見る女性がいた。
「………」
「………」
目が合ったのに変わらずこちらを見続ける。
なんだこいつ…
「あー…気になるなら入ってきていいぞ」
「!よろしいですか!?」
今までは片目でじっと見ていたが、その言葉で全身を露わにした。
きれいなセミロングの金髪に、青い目、白いドレスに身を包んだその姿はまさしくお姫様だった。
「夜分遅くに失礼します、わたくしリセス・ヴァン・スパーダと申します。スパーダ王国第3王女の地位にいるものです。夜分遅くに大変失礼かとは思いましたが、召喚された勇者様を一目見たくて…」
「あー…お初に?お目にかかりますリセス…様?私は蓮城慧と申します。よろしくお願い…つかまつる?」
だめだ、最初の時は怒りで王様に食って掛かったけど、冷静に考えると相手は王族だ。
全く正しくはないにしても敬語くらいは使ったほうがいいだろう。
「ふふっ…敬語に慣れていないのでしたら無理に使わなくてもいいですよ。あなたも勇者という地位の高い位にいるのですから」
「リセス様にそう言っていただけるなら…すまない、慣れてないもんで」
相手が言葉遣いとかを気にする人じゃなくて良かった。
年齢も同じくらいに見えるし無理に敬語を使わなくて済むなら大助かりだ。
「にしてもいくら勇者が相手とはいえ、第3王女様がこんな夜に一人で部屋に来るのはあまりよくないんじゃないのか?」
「大丈夫です。しっかりメイドに伝えていますし、私自身魔法を使うことができますから」
ずっと笑顔は絶やさす、さらに自分の力を誇示するように腕に力を入れる。
すごい話やすく明るいお姫様だ。
「おとぎ話の中では勇者様はすごいイケメンで最初から強そうに描かれていましたけど…いい意味で話しやすそうな方でよかったです」
「それは逆に今の俺がそんなにイケメンではなくて強そうではないってことですよね…」
やや天然な気がするお姫様だ。
「ふふっ…傷ついたならごめんなさい。でもあなたは優しい方ですね」
「ん?なんでそんなこと風に言えるんだ?」
なんか優しくしたかな俺…
「第1声が私を心配する言葉がけでしたし、もうお休みになるところだったのに、こうやって私とお話しをしてくれたではありませんか」
そんなもんかな…
「大変お疲れかとは思いますが、少しお話をしてもよろしかったでしょうか?」
「大丈夫だ」
こうして俺とリセス様二人の会話が始まった。
「……………」
そんな俺たちを一人の女性が恨めしそうに、そして歯ぎしりをしながら見ていたことをこの時の俺は知らない。