第6章 初戦闘は模擬戦
初めての戦闘シーン…本当に難しい。
今度は知っている天井だ。
「目が覚めたか慧殿」
あの時と変わらずベットの近くにはジャッカルさんがいた。
「おおよそ半日眠り続けていたので大丈夫か不安だったが…」
「だいぶすっきりして目が覚めたよ」
なんだか普段より体に活力がみなぎっているような気がする。
これも魔力が全身に循環されるようになったからなのだろうか?
「早速で申し訳ないが、この後私との模擬戦闘になります」
「ほんとに忙しいな勇者は…でも、体に力もみなぎっていて運動したいところだったしちょうどいいかな」
昨日よりも足軽に俺は部屋を出た。
「ここが訓練場か…」
観客席のようなものがあり、中心は戦うことができる場所、所謂コロッセオみたいなところだな。
「今回は木でできた模擬剣を用いて行う」
そういってジャッカルさんは俺に模擬剣を投げ渡す。
重さは…2㎏くらいかな。
素振りを何回かしてからジャッカルさんに向けて構えを取る。
「私のほうからは攻撃するつもりはない。全力で打ち込んでこい」
ジャッカルさんの口調も戦闘態勢ということで少し荒くなっている。
「では、胸を借りる気持ちで……いくぞ!」
俺はジャッカルさんに向けて駆け出した。
「っ!なかなかの踏み込みだが!」
ジャッカルの左肩めがけて振り下ろした剣はあっさりとはじき返された。
だが…
「はぁ!」
右足を軸に回転して右の胴を狙う!
最初から力でも速度でも勝てるわけがないんだ、それならはじき返された力と速度も利用して攻撃に転じる!
「ほう…だがそれでも遅い!」
「くぅ…!」
これも当たらないか…!
俺も父さんが死んだ後も素振りや瞑想、トレーニングはしていたが実戦経験の有無はやはり大きい!
「ふぅ…」
一旦距離を話して考える。
正直今の俺が一撃を当てることなんて全くイメージできない。
「こんなものか!?」
ジャッカルが一歩も動いていない状態から言う。
つまり俺はさっきの2回での攻撃でジャッカルをその場から動かすこともできなかったのだ。
「魔力がある世界なんだ…それをブースターみたいに使うことはできないものか」
「魔法の中には身体強化や加速ができる無属性魔法がある。しかし、それは慣れていないものが使うと体を壊す可能性があるから使うことは推奨しないぞ」
こちらの説明にも丁寧に答えていただき感謝だし、言っていることは至極正論だ。
だが…
「やってみなければわからない!」
魔力の運用方法なんて全く知らないが、イメージする事ならできる。
魔力を制御できた時のように意識を自身の中に沈める。
俺がわからないのは魔力の使い方で、魔力自体は感じることができる。
幸いあちらから攻めてくることはないので一安心だ。
…感じる。
体の中を駆け巡る血液のように全身を駆け巡る力を!
この力をより速いスピードで全身に駆け巡らせる。
そしてその力を…
「四肢に集中!はぁぁぁああ!!」
まずは足に集中させて速さを出す!
「っ!?これは!」
ジャッカルが驚いているようだがそんな表情を見る余裕はない。
一足でジャッカルに近づく。
振り下ろす際に足に使っていた力も腕に込めて一気にたたきつける!
「くらえぇぇぇ!!」
「なめるなぁ!!」
ばきぃ!!
打ち付けた俺の模擬剣は真ん中から折れてしまった。
「その魔力を武器にも込めておくべきだったな。しかし驚いた、最初の戦闘で魔力を使うとは…」
「あいにく自分にできることをできずに負けるのが一番嫌いなもんでね」
こうして俺の初戦闘は終わった。