第29章 ダンジョンにいた少女
「このダンジョンは犬型の魔物がほとんどのようね…」
「そうですね…」
ダンジョンに入って30分くらいだろうか…遭遇した魔物がすべて犬であったためフィーネさんと俺は結論付けた。
「仲間を呼ぶ雄叫びが厄介…逃げたとしても嗅覚が優れているから逃げられない…これは面倒かもしれないわねぇ」
「さすが犬ですね…聴覚や嗅覚が異常に発達している」
それにこの魔物たちは基本的に個々での活動ではなく、集団での活動をしている。
とても統率が取れているように感じた。
「ここのダンジョンマスターが司令塔なのかしらねぇ」
そう呟きながら悠々と先頭を歩いているフィーネさん。
防御は水魔法、攻撃は雷魔法と用途によって使い分けられる魔法は、ここまで3桁くらいの魔物に襲われてもお互い無傷であることからとても強力であることがわかる。
『…き…て』
「さっきから聞こえるこの声は何なんだ…」
入った直後から聞こえるこの声…さすがに何度も聞こえるから気のせいではないのかもしれないがフィーネさんには全く聞こえないらしい。
なんなんだろうか…
『慧さん』
「ん?デュランダルか?珍しいな、話しかけてくるなんて…」
俺の脳内にデュランダルが語り掛けてくる。
精神世界での訓練以外はあまり話しかけてこなかったデュランダルだが…何かあったのだろうか?
『懐かしい気配がします』
「懐かしい?」
懐かしいということは先代の勇者の関係者だろうか…
そんなことを思っていると…俺の足元が急に光りだした。
「えっ」
「勇者様!?」
次の瞬間、俺は今までいた場所ではないところに転移させられた。
「フィーネさん!ってあれ…ここどこだ?」
俺の目の前にはフィーネさん…ではなく、一人の少女が鎖に縛られていた。
「…」
10歳くらいの少女…だろうか。
藍色の髪に白いワンピースを着ているが…何よりも目立つのは頭の上に生えている耳だった。
「いわゆる…獣人というやつだろうか」
警戒しながら少女に近づく。
「ん…」
すると目の前の少女が目を覚ました。
「…ケイ…ト?」
「ん?」
少女は俺に対し『ケイト』といった。
「やっと…戻ってきてくれた!」
「え」
少女は己を縛っている鎖を粉砕し、俺の胸元に飛び込んできた。
「ん…ん?…この匂い…ケイトのだけどケイトだけじゃない?」
「俺は蓮城慧だが…」
何やら人違いをしているのだろうか…
「でもこの匂い…これって…」
『久しぶりですね、ルー』
デュランダルが急にしゃべりだした。
でもこの声って俺にしか聞こえないんじゃ…
「ん…この声って…」
『覚えていてくれましたか』
どうやらデュランダルの声はこの少女…ルーにも聞こえるらしい。
『ルー、この方はケイトではありません…ですが』
「ん、なんとなくわかる」
何やら二人で会話しているが肝心な部分の話しをしてくれない。
「紹介が遅れた、私はルー。よろしく」
「あー…よろしく?」
とりあえず握手した。
「ん…いく」
「行く?」
どこに行くのだろうか…
するとまた俺の足元が光りだし…
目の前にフィーネさんがいた。
「きゃっ…勇者様、お怪我はないですか!?」
普段のおっとりした口調ではなく慌てた口調になりながらフィーネさんが俺の安否を問う。
「大丈夫です…俺もなにがなんだかわからないのですが」
「無事でよかったですわぁ…急な転移の魔法に反応できずすいませんでしたぁ」
謝るフィーネさんだが、あれは仕方ないのではないかなと思う。
「にしても勇者様…後ろの子はどうされたんですかぁ?」
「あー…転移した先にいた女の子で、ルーっていうらしい」
「ん…よろしく」
ペコリと行儀よく挨拶するルーだが…
『慧さん、この少女は敵ではありません。面倒を見ていただけないでしょうか?』
「いや面倒を見ろと言われても…俺も面倒を見てもらっている立場だし」
城に居候状態の俺が面倒なんて見れるのだろうか…
「勇者様…この子はどうされるんですかぁ?」
「うーむ…デュランダルには世話をお願いされているし…連れて行っても大丈夫でしょうか?」
「それでしたら問題ないかと思いますよぉ」
あっさりと承諾された。
いいのだろうか?
「獣人族はかつてスパーダ王国と友好を結んでいた国の原住民の方々なので、悪いことにはならないと思いますのでぇ…」
「そんなもんですか」
とりあえずルーが仲間になった!…ファンファーレは鳴らないが。
「不測の事態も起きましたしこれで偵察を終了しようと思いますぅ」
「わかりました」
そうして俺とフィーネさんにルーも追加された3人は帰路につくのであった。
しかし、最初はあれだけ遭遇していた魔物に遭遇しなくなったのは気のせいだろうか?




