間章 王と騎士の語らい
小説を書くたびに自身の文才のなさとほかの作家さんの文章力に尊敬の念を抱きます。
「慧殿は落ち着かれただろうか…」
「あそこまで錯乱するのは想定外でした。これまでの記録ではそのようなことが起こったことはなかったとのことでしたが…」
スパーダ王国の王であるカイング・ヴァン・スパーダは自室で騎士団長であるジャッカル・フォードと話していた。
スパーダ王国はこれまでも異世界から勇者の素質があるものを召喚し、魔王の討伐を依頼してきた。しかし、過去の文献を見ても今回ほどの動揺をしたこ者はいなかったとされている。
「『俺には日本でやらなければならないことがある!そのためだけに生きてきたのに!それをお前たちの都合でこんな場所に呼び出しやがって』…か。確かにスパーダ王国などという自分が知りもしない国を救うために呼び出されるのは怒りという感情以外湧いてこないのは当然のことかもしれないな…」
「ですが、スパーダ王国を救うためにはどうしても勇者の力が必要です。彼には申し訳ないですが、そのために死に物狂いで戦ってもらわなければなりません」
カイングの苦悩の表情とジャッカルのやむなしといった表情が対照的に映る。
「彼が生まれ故郷である二ホンに帰れるかはわからんが…彼には強くなってもらわなければならん。ジャッカル、彼のことは任せたぞ」
「はっ!」
そう言ってジャッカルは部屋を出た。
部屋にはコップに入った水を飲みながら窓の外を眺めるカインズが一人残った。
視線の先には勇者として召喚された蓮城慧が使っている部屋があった。
「今まで召喚された勇者は戦闘の経験がない分、勇者として与えられた力が強大だった。しかし慧殿は…」
『屈強な戦士を取り押さえているみたいでした』
慧が取り乱した際に取り押さえた兵士が言っていたこと。
その発言以上にカイングの印象に残っているのは、まるで親の仇を目の前にしたかのような目だった…