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鱗少女と僕の世界の歩き方  作者: スコップ坂本
3/3

過去と過去の話

食べ終わった後、暖炉の前で僕達は向かい合った。アリアを眺めているとつい聞きたい事がある。

なぜアリアは異教者となってしまったのかを。これはただの興味本位で聞かなくていい事かもしれない。しかし僕は僕の口を止める事が出来なかった。

「ねぇ…。アリアは何で異教者として追い出されたの?」


アリアは少し躊躇い、言葉にして答える代わりに上着をめくった。

アリアの体には竜の鱗のようなものが体の至る所にあった。

「こ、これは…?」

「龍皮症って言うらしいです。竜の鱗のような皮膚なので」

アリア脱いだ上着を着ながら続けた。

「竜は魔女の使いとも言われています。だから龍皮症の人は魔女の使いという扱いになり、異教者扱いされるのです」


言葉にならなかった。龍皮症という病気だからっといって存外な扱いをされるなんて。アリアに怒りをぶつけても無意味であり、きっと彼女を困らせるだろう。僕は言葉が出ない代わりに優しく強く抱きしめた。

アリアもその行動の意味を理解したのかそっと僕の背に腕を回し、素直に気持ちを受け取ってくれた。


アリアは自分の過去について話してくれたのだ。僕の過去も話さない訳にはいかない。


「僕の過去の話を聞いてくれないかい?」

アリアがコクリと頭で返事したのを見て静かに話し始める。


「まあこの時代によくある話なんだけどね。僕の母は誰彼構わずに優しく、救いの手を差し伸べてたんだ。しかしそれが魔女の布教行為と思われて、母は魔女という扱いになり殺された。そして僕は魔女の子として異教者のレッテルを貼られた。そこからは命からがら街から逃げ延びてここに住み着いたという訳さ」


話終えると黙ってしっかりと聞いていたアリアが今度は覆い被さるように抱きしめられた。

まさか自分より半分ぐらいしかない子に慰められるとは。しかし今の僕にとっては人の暖かさが何とも心地よく、体を巡る。


僕らは自分たちの過去を共有し、お互いの存在が身近なものになったのを感じた。


それからは何も話さないままゆったりと時間だけが過ぎていった。今の僕らには言葉は無粋な事さえ思え、優しく頭を撫でてゆく。気づけばアリアは僕の脚を枕にして昏昏としていた。それにつられるように眠った。


気づけば西から淡い陽が差す。

ゆっくりと起こさぬようにアリアを床に寝かせ、暖炉に薪をくべる。その後はせかせかと家事を済ませる。

アリアが起きた頃には完全に陽は沈み、梟が鳴いていた。


「白湯でも飲む?」

「頂きます」

雪を溶かして出来た白湯を渡す。熱そうに口に運んだ。

「あの、旅をしてみない?」

「えっ?急じゃないですか?」

「今すぐじゃないよ。この家はそろそろ限界でいつまで保つかわからないんだ。限界が来る前新しい家を見つけなければならない。それにここじゃない所では僕らを受け入れてくれるかもしれない」


アリアには言わないがいつ異教者狩りが来るか分からない。身の安全という点でも此処から離れた方が良いと判断した。


「分かりました、旅をしましょう」

とアリアは了承した。


「ちなみに何か見たいものとかある?」

「そうですね……。海と砂漠を見たいです!」

「分かった、じゃあとりあえずコオナ山を越えてソル港に向かうか」


最初の目的は決まった。ソル港に向かい海を見る事。目的が決まれば一気に旅というものが現実味を帯びて、楽しみではあるが少し不安を覚える。

だが言い出したのは僕であり、アリアは海が見れると顔を輝かせている。もう取り消しは出来ない。

なんとしてでも無事に辿りつかなければ。


明日から忙しくなる為今日のところは早めに寝よう。

既に毛皮を下に布を被りアリアは寝る体勢をつくっている。アリアに布の端を少しだけ譲ってもらい一緒に寝る。


身体は少し出ている分寒い筈なのに昨日より暖かく感じた。


昏昏は深く眠るという意味です

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