表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界創ることになりました  作者: 黒本悠希
第1章
7/7

二色の虹

お久しぶりです。

長らくお待たせいたしました。

 視界はネゴフットさんの体で一度塞がれたが、すぐに戻った。

蛇が赤い舌を揺らしている。


ちらりとネゴフットさんを見た。

わずかに緊張したような表情をしている。


それもそうだろう。

梟と蛇だ。力の差は互角だろう。


思わず右手を前に出した。

口にする言葉は決まっていた。


火花(スパーク)

「ユリア!」


ネゴフットさんの怒鳴る声が聞こえたが、もう私は呪文を唱えた後だ。


火に包まれて苦しむ蛇を横目に、ネゴフットさんに話しかける。


「他の蛇が来る前に早く帰りましょう。早くしないと周りに火が燃え移って大変なことになりますよ」

「逃げろと言うたのに……」

「ネゴフットさんは先に行っておいてください」


呆然とした様子で蛇の燃えるさまを見ている彼の背中を押す。


「ユリア、お主は」

「お、私はまだここですることがありますから」

「これほど惨いことをして、他に何をする気じゃ?」


星空の瞳に、恐れが見えた。


「酷いことはしません。楽にするだけです。さぁ、早く行ってください」


木々に燃え移った火が迫ってきている。

さすがに恐れをなしたのか、こちらを心配そうに見ながら木陰の隙間に消え去った。


ネゴフットさんがいなくなったのを見届けで、私は蛇に向き合う。


「……」


口を開いて、何も吐き出さずに口を閉じた。


「今楽にしてあげますよー」


いつものユリアの口調で、歌うように語りかけた。


(リウビア)


雲一つない晴れた空から、雨が降り出す。

この世界に虹は存在するのだろうか。


火が消えた。

燃えた木々は異臭を漂わせ、蛇は白い眼を空に向けていた。

皮はぱりぱりと白く固まっている。


上を見ると、二色の橋がかかっていた。赤色と黒色。

青空に映える組み合わせだ。


「あぁ、そういえば」


ネゴフットさんのところに戻らないと。


祖国で聞いていた歌を鼻を通して歌った。

ゆっくりと歩いていた足が、リズムに乗って走り出す。


住居がある樹の前まで来て、自分一人では上がれないことを思い出した。


「ネゴフットさーん」


……。


「ネゴフットさーん! ユリアちゃんが帰ってきましたよ―!」


ばたばたと音が聞こえた。


やがてひょっこりと顔? (どこまでが胴体なのかがわからない)を出したネゴフットさんが慌てて降りてきた。


「ネゴフットさんってば、私が一人で上れないこと、忘れてましたね? もー、うっかりさんなんだからぁ」

「いや、すまないな……」

「ん? どうかしたんです?」

「い、いや。何でもない」


難しそうな顔をしているネゴフットさんに遠慮なくしがみついた。


いやだって、しがみつかなきゃ落ちるんだもん。

決してもふりたいわけじゃないよ?

仕方がないの。


ふよふよと樹洞まで上っていく。

降りる時とは違って、とてもゆっくりだ。


べたり。

と、樹洞に転がり込んだ。


「お主、重いのぉ」

「失礼な!」


乙女になんてこと言うんだい!


「ユリア。今夜日が暮れたら話がある」

「え、なぁに? 今じゃダメなの?」

「わしはもう寝る時間なんじゃ……。お主を待ってる間に日が昇ってしまった」


あぁ、そういえばネゴフットさんは夜行性なんだった。

私も疲れたし、寝ようかな。


昨日ネゴフットさんが作ってくれた寝床に横たわった。

よほど疲れていたのだろうか。

堅い藁を寝苦しいと感じることもなく眠りについた。






















ユリアが深い眠りについた一方で、ユリアを除いた転生メンバーは丁度目を覚ましたところであった。


「おはよう、ソニア姉さん」

「おはようメリィ」


朝日を浴びてきらきらと輝く金髪をかき上げるソニアの腕を引っ張る人物がいた。


「おはようございます。ちょっと来ていただけます~? 不思議なものが出ているんですよ~」

「おはようございます。ドロテーアさん。……あの、あんまり胸を押し当てないでいただけますか?」

「あら~、ごめんなさい~」


謝りつつも一向に直す気のない様子と、悪びれない笑顔に、ソニアはただ困惑した顔で腕を引っ張られていた。


「ほら~。虹が出ているんですよ~」


二色の虹だ。


「青空に映えますけど~、なんだか不気味ですわね~?」

「虹って雨が降らないとできないはずなんだけど、雨を降らせる雨雲が一切見当たらないんだよね。不思議だと思わない?」


伺うように顔を見つめるドロテーアとメリィに、ソニアは困惑しながら声を返した。


「ユリアちゃんがあそこにいるかもしれないっていうこと?」

「まぁ、そういうことだな」


後ろから聞こえた女性にしては少し低い声に、三人のうちソニアだけが驚いて肩を揺らした。


「アドリア―ネさん。起きてらっしゃったんですね」

「一番最初に起きてあれを見つけたのは私だ。雨音で目が覚めたんだが、私が見たときにはもう雨は降っていなかった」

「まぁ、そういうことだから、とりあえず男性陣をたたき起こしたらあそこに向かおうと思うんだよね」

「虹はいつまでも残ってないから~、行動を起こすなら速めがいいのですよ~」


女性陣の意見はまとまっているようで、後は男性陣を起こして向かうだけだ。


「起こすのは私がやろう。準備は三人に任せた」

「一人だけは危ないから、僕も行くよ。準備はドロテーアさんとソニア姉さんで出来るでしょ?」

「お任せください~」

「二人だけで大丈夫?」

「大丈夫だよ。じゃあ、よろしくね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ