第8話
入学からはや1ヶ月。
座学ばかり、しかも初歩の初歩で習う必要のないものばかり。
魔法の訓練は有るものの魔物や魔獣を相手にした実践は未だに一度もない。
先生がいつもと違う号令を掛けた。
「全員いいか?明日は1年生が全クラス合同で入学後初の実践演習を行う!班分けは入学試験時の成績を加味した上で、此方で決めておく。
戦いやすい服を持参、若しくは着てくること。以上、解散!」
言ってる側から実践の予定が出来
た。
翌日
「え?僕は先生方と共に引率側?」
「あぁ、そうだ」
むぅ、強気なだけでピンチになると腰が引けるへっぽこ剣士とか気の弱いヒーラーとか妙に人付き合いのうまい斥候とかのパーティを期待してたのに、ちょっと残念。
「なんで、引率役なんですか?」
「それはな、君は実技試験の結果が優秀すぎてどこのパーティに入れても1人でモンスターを狩り尽くしてしまって他の子に実践の経験が行かない、と危ぶまれたためだ。
だが、誇っていいぞ。
今までこの様な特例的処置を受けたのは300年続いた我が学院で、君を除けば他には現勇者パーティの神官、フィーリア様と先々代勇者パーティの魔法使いでこの学院の学院長をしているマウフォード様だけだ」
どうやら入学試験の蒼炎柱が余程凄く見えたらしい。
あんなの、 試験会場にいた人達を巻き込まないために1/5の威力にしてたのに。
使ったMPはいつもと変わらない。
魔法毎に消費MPは一定で威力を削ろうとMPは持っていかれる。
人それぞれで威力が違うのは、魔力値の違いである。
それはともかく、引率側という事で先生から大雑把にやる事を聞いてみたら、生徒が死なない様に、しかしあまり甘やかさない様にしてほしいと言われた。
因みに、部位欠損などもNGなのだそうだ。
それはそうだろう。
貴族の子弟も多くいる訳だしね。
それはともかく、先生にもう一つ聞かなきゃいけない事がある。
「先生、ボクが引率する班はどんな感じですか?」
引率するなら、される側の情報を持っていても損はない。
「あぁ、まだ言ってなかったか。
剣士クラスの男子生徒でドリーゾ君。
魔法師クラスの女子生徒のマリノ君。
神官クラスの女子生徒でルーヒア君。
最後に斥候クラスで男子生徒のシーリャ君だ」
……え?それで終わり?
「あ、あの。
人柄とか性格とか教えてくれないんですか?」
「人柄も性格も知らん。
演習をするたびに引率する生徒が変わるんだ。
いちいち覚えてられん」
「は、はぁ」
「君には悪いがこれからも引率役に回ってもらうから慣れてもらうぞ」
そう言って先生は教員室に行ってしまった。
仕方ない。
自分でリサーチしよう。
という訳で剣士クラスへ来てみたのだが……
「人だかりができてる」
そう、剣士クラスの前に人だかりができていた。
しかも女の子ばかり。
キャーキャー言ってるがよく耳を澄まして聞いてみると……
「マルシェス様よ!」
「かっこいいわぁ…」
「妾でもいいから抱いてくれないかしら」
などと聞こえてくる。
一部7歳とは思えないのが聞こえてくるがスルーして、女の子達がみている先を見ると……
「うわっ、すっごいイケメン」
つい呟いてしまった。
確かにあれならキャーキャー言われるのも納得だ。
だけどボクの好みじゃない。ボクは日本人顔が好きなのだ。
おっと、目的を忘れるところだった。ドリーゾ君のリサーチに来たんだった。
マップで検索すると……いた。
男の子を見つめてる事がバレると恥ずかしいので隠蔽をかけて剣士クラスをちょっと覗いて見ると、目的のドリーゾ君含め男子達がイケメン君の方を見て話していた。
耳を澄ましてみると……
「イケメンって、良いよな」
「あぁ、羨ましい」
「俺と顔を交換してほしいぜ」
「全くだ。はぁ、モテたい」
と、学校の王子様とモテたい男子高校生みたいな感じになっていた。
結局、ドリーゾ君について分かった事はモテたい健全な男子って事だけ。
剣術の腕とかも知りたいが時間は無い。明日の演習で見ることにしよう。
次に向かったのは斥候クラス。
さっきの様にマップで検索して……いた。
マップの指す方を見てみると……
「今度は男の娘か……」
そう、とても男子とは思えない可愛い顔だった。
でもマップの表示ではちゃんと性別が男になってる。
ボクには隠蔽や偽装は効かないので間違いないだろう。
さて、彼の観察も隠蔽を使ってっと。
斥候クラスの前で隠蔽なんて『見つけられるなら見つけてみろ』的な挑発としても捉えられるな、と思った事は知らないふりをしておこう。
結局バレる事はなかった。
一年だからへなちょこなのか、ボクのスキルが凄いのかちょっと判断に迷う。
本代に戻ろう。
シーリャ君はクラス内では『斥候としての技術はそこそこ優秀だけど顔が可愛いため覚えやすく、目立ちやすい』という評価である事がわかった。
それと、一部にシーリャ君と他の男子を見て腐臭のしそうなため息をあげてる女の子がいたがスルーだ。
華麗にスルーする。
気にしてはいけない領域だと思う。
次に来たのは神官クラス。
神官クラスは、ヒーラー全般の職業を育成するクラスだ。
だから別に神官だからって宗教的に恋愛NGとかは無いのだ。
例によって例の如く、隠蔽を掛けつつ観察を開始する。
結論が出た。
彼女はあれだ、『ハチャメチャだけど能力があって慕われてる生徒会長』みたいな感じだ。
いやまぁ、本当に生徒会長かどうかは知らないが。
結局、色物ばかりだった。
え?まだ1人残ってるって?魔法師クラスの女の子?いや、あの人はボクと同じクラスだから知っている。
むしろ魔法師クラスで彼女を知らない人はいないだろう。
所謂『厨二病』というやつだ。
「私の魔法、業火と雷の前には何人も抗うこと叶わず!」とか言ってる。
しかも困ったことに彼女は魔法基本四属性の適正と雷の適正があり、持っている適正全てを初級まで使い、火と雷に至っては中級まで使う。
彼女はボクが居なければ今年度入学生最強の位置について居た。
とても、そう。
とても優秀な生徒なのだ。
7歳で厨二病発症とは些か早過ぎるが、あの素晴らしい世界に祝福(女神)を貰って転生した鬼畜のカズ○氏のパーティの魔法使いの一族よりはマシだろう。
それと、雷属性に至ってはボクより優秀だ。
座学も上位20名に入って居た。顔もいい。
ただ、生まれた年、若しくは入学した年が悪かった。
《はい。主人様の下位互換と評価されています》
《攻略本》に真正面から言われると余計、気の毒に思えてくる。
だが、彼女はめげない。
時々、魔法の訓練をしているのを見かける。
そんなこんなで分かったことは、色物枠の班だってことだった。
ボクは溜息を吐きながら、明日実践演習が終わった後、先生に文句の1つでも言ってやろうと思った。
本話も読んで頂き誠に感謝です。
誤字脱字、余計な文字や言い回しの不備など感想に報告いただければ幸いです。
いつだったか、主人公の未来の旦那がどうたらこうたら言いましたが、もう既にちょこっと、ほんのちょこっとだけで出てるとも言えなくもないです。でも、丸焼きオーク君じゃないですよ?あんな豚野郎に主人公は渡しません!まぁ、名前も出てないので杉下右京さん並みに感が良くないと見つけられませんでしょう。
さて、長くなりましたが次話も見ていただけると嬉しく思います。