仰望
私があなたを思うとき。
私があなたを思うとき、私はなんとも不思議な気持ちになる。
あなたを思うと食事も喉を通らなくて。
あなたを思うと夜も眠れなくて。
あなたを思うと目の前のことなんてどうでもよくなってしまう。
あなたを思うと胸が苦しくなって。
あなたを思うと顔が熱くなって。
あなたを思うと体が芯から揺さぶられる。
私があなたを思うとき、あなたは何を思っているのだろう。
あなたはきっと一所懸命で。
あなたはきっと悩んでいて。
あなたはきっと目の前のことに精いっぱい取り組んでいるんだろう。
あなたはきっと疲れていて。
あなたはきっと苦しんでいて。
あなたはきっと心から充実している。
私は思う。
あなたの今の苦渋や必死が、いつの日かあなたを助ける剣に変じてくれることを。
私があなたを思うとき。
それはきっと、私の力量を超えた障壁が立ち塞がって、何かに縋りたくなったとき。
甘えたくとも甘えられなくて、
手を借りたくても差し伸べられなくて。
孤独の末路を辿った寂寞を感じた瞬間に、
私はあなたを思うのだ。
私はあなたを思うとき。
あなたが私の隣にいなくて、ほっとする。
あなたが私の隣にいないことで、
あながいま幸せであることを確かめられる。
あなたが私を忘れたことで、
あなたがいま、平安を手に入れつつあることを感じられる。
そんな素敵なひと時。
私は今日も、あなたを思う。
そして幸福な気分になる。あゝ、
この薬指が金属アレルギーになる日は、きっと来ない。




