戦闘
ネノイマから街へ繋がる南の小道その小さな道に大型な体型と高い知能を有するため人を乗せたり荷物を運んだり汎用性が高くこの世界では重宝されているパフレード大都市でも余り見掛けない10数頭の数が猛スピードで爆走している。
村の運送屋オロイのもう1人も相棒バフはその集団も後頭部に位置していた。
オロイさんは何か考えがあるらしいが村から離れ過ぎだ。村ではもう何もするつもりは無いのか?それは村長を置いて行く。つまり、見殺しにするのと変わらない。
「そろそろここで大丈夫だろう。ケイこれからは1人だ。ブフは頭がいいから何もしなくても街に送ってくれると思うがもし何かあったら。『とまれ』や『すすめ』、『つづけ』と命令すれば誰でも言うことを聞く。無事に着くことを祈っているぞ」
そう慶に指示を出すと体を外に投げ出し荷車から飛び降りる。
「オロイさんは何処に?」
「どこって村しかないだろ。あの村長は村にまだ人が居るからそいつを連れてくる。まぁ、自ら進んでミオグワンに攻めてくる村に残るもの好きだ。力づくになると思うがな」
しかし、疑問が出てくる。
「どうやって村まで戻るのですか?」
村に戻る移動手段はもうないはずだ。
「うしろだ」
首を降り方向を指示する。慶が振りかえると他のパフレードの比べものにならない速さで追いかけてくるプフの姿が見えた。
「プフ、もう回復したのか?」
「あいつにはラムビを食わせた」
「ラムビ?」
「知らないのか説明はしてなかったな、倉庫にあった赤と黄色が混ざった小さな実を覚えてるか?」
記憶をたぐるまでも無いあの巨大な倉庫の中で1番多くあった実だ。
「わかります。1番多く運んだ実ですね」
「あぁ、それをラムビと呼ぶんだがこの村で1番いや、世界で1番の出荷量を誇る回復薬だ。効果は体力と魔力両方回復する。その効果は世界で唯1つラムビの実だけだ。おかげでギルドの連中にいい値で売れる。今回は緊急事態だからプフに食わせた。こう見えて小食だから2キロ食うのに時間が掛かったが」
小食で2キロあの図体なら当然か、それで村に向かう訳か。それなら
「私も手伝います。連れて行ってください」
「はぁ? 何言ってる。どれだけ危険だがわかっているのか?」
「危険は承知です。迷惑はかけません。もし何かあった時は逃げきれるスキルは所持しています。オロイさんも言った通りこの事の原因は私にあります。このまま自分で何も責任を負ったままなど私には耐え切れないのです」
慶はオロイの目を真っ直ぐ見据え訴える。
「分かったよ、降りろ」
荷車から降りるとオロイはプフに跨る。後ろに乗れ狭いのは我慢しろよ。
「はい」
オロイに従いプフに乗り走り出そうとした時、横から足音が聞こえ黒いパフリードが見える。上に乗っている2人の鎧を着た兵士。
「オロイさん誘ってくださいよ」
「あなたの怖い顔は人間はビビっても魔物は怖がりませんよ」
ラッタとリッタだ。
「お前らわかったよ。心強いさっさと出発するぞ」
慶にオロイ、ラッタにリッタこのメンバーは村に戻るはずだったが。
「くるぞ」
オロイが指差す空には徐々に大きくなる黄緑色の鳥が近づいてくる。
「村長は失敗したのですか、だっだらもう...」
「いや、それは違うでしょう」
リッタのか細い声に慶が答える。
「もし、村長は何かあったなら1羽でけなのはおかしい。それにこいつはどう見てもさっきのいた奴のどれよりもデカイ」
「おそらく、別の個体。あいつがミオグワンのリーダーだろう」
オロイが説明を続ける。
「ミオグランは完全な実力主義の組織だ。下の者は上の者が生き残るための駒となる。このままだと俺たちはまんまと陽動に引っかかり頂点の者の餌にされるって訳だ。」
「私達が相手します。2人は村に戻ってください」
ラッタとリッタにパフリードから降りて戦闘準備を整える。
「変式槍術 伸槍」
ラッタの手に構えた槍が伸び巨鳥を襲う。
しかし、首を下にさげ伸びていく槍に視線を送ると巨大な翼を羽ばたかせ右に飛び、なに事もなかったように避ける。
「もう1本あるぞ、変式槍術 伸槍」
再び伸びたリッタの槍が襲う。
ミオグワンは翼を羽ばたかせ急降下する。伸びた槍を悠々と避けラッタとリッタに向ってくる。
「舐めるなよ、変式槍術 連弾突き」
ラッタの持っていた槍の射程圏内にまだ、届かない距離。少し伸びた槍の乱れ突きがただ何もなく向かってくるミオグランに突き刺す。
だが、左翼に突き刺さったままの翼は何もなかったようにで左翼を引き、それによって槍を引っ張られミオグランの方へよろけると素早く槍を外し翼を羽ばたかす。右翼がラッタの腹に直撃した。そのままラッタは吹っ飛び槍はリッタを飛び越え慶の前まで飛んだ。
「くそっ、だがこれでどうだ! 変式槍術 伸槍」
ミオグランの隙をつき、伸びた槍がミオグランの顔目掛けて突き進む。
「そこはまずい!」
オロイが瞬時に叫ぶが...
目の前に槍が見えているが避ける様子もなければ焦りもない。ゆっくりと大きな口を開くと舌を伸ばした。
慶が驚きの表情を浮かべる。
口から開いた舌はどんどん伸びていき槍まで届くと舌を器用に動かし槍を巻きつけ進行を防ぐ。更に、舌と上に動かしリッタの抵抗虚しく手から槍が離れたことを確認すると槍を宙に投げた。そして、伸びた舌は口に戻ることは無くリッタを襲う。
「くそっ」
必死に躱そうと体をうごかすが反応が追いつかない。鈍い音が響きリッタが倒れる。
「そんな...」
オロイは嘆く。慶は震える。ネノイマが誇る守護兵が手も足もでない、ミオグランの強さを肌で体感した。ミオグランは次に自分の邪魔になるだろう慶とオロイに目を向ける。
威嚇だろうが大声で鳴くミオグワンに思わず慶は後ずさる。
「お前は逃げろ」
わかりました。そう返事をして逃げようかと思ったが。寸前で冷静になる。
「オロイさんらしくないですよ。ここで俺が逃げて何に何ますか?リッタさんであれなのです。オロイさんが残って私が逃げても瞬間でやられます。そして、僕を追って村人を追うだけです」
「確かにそうだが、他に何をする?」
「崖っぷちな程やれる事は限られてきます。オロイさんはプフに乗って逃げてください。私はこの鳥を何とかします」
「お前こそ何言ってるんだ。瞬殺なのはお前も同じだろ!」
ここで少し嘘を交える。
「いえ、私のスキルで逃げることが可能ですので私がミオグワンを引きつけます。その間に村に向かってください。心配しないでください最初にミオグランに襲われましたが逃げ切れました」
慶の強い決意をオロイも感じたのだろうか。
「わかったよ。言うまでもないが前のとはスピードも何もかも違うぞ。気を付けろよ」
「わかってますよ」
オロイはプフを呼び込みオロイの元に駆けつけだす。
余裕なのか悠々と見守っていたミオグランもこれには反応して口から長い舌を出そうとしたが。
「こっちだよ」
慶はミオグワンに真っ直ぐ突っ込んで行く。勢い良く進む足とは真逆に心臓は
高鳴り上半身は震えが止まらない。ミオグランは視線をオロイから慶に移し舌をしまい、翼を広げ迎え撃つ。
このままでは死ぬ。もう一度。ふざけるな、俺は生き返えなくてはならない。あいつらともう一度。そのために頼むあのスキルを発動してくれ。
願いとともに足に力を入れる。対するミオグワンは慶が突っ込んで来るのは合せ翼で打つ構えを素早く整える。
ん? そうだこの感覚、自分の体では無い感覚。慶はもうスピードで迫ってくるミオグワンを見る。治まる鼓動、止まった体の震え。それは確信の感覚からだった。
ぶつかるように翼で打つためにスピードを上げたミオグワンその低空飛行の間を滑り込むすり抜く。慶の予想外の身のこなしにミオグワンも驚き一旦距離を取る。
やるじゃあねえか。プフに乗り脇道から村を目指すオロイもその姿を観て驚嘆する。死ぬんじゃねえぞ!! ケイ。慶から視線を外し村に向かって駆けて行く。
よかった、スキルがは発動した。やはり、スピードをあげる効果のようだ。そんなに強いスキルとは思わないが、今はそんなことは考えている余裕はない。
ミオグワンは慶の目にも止まらないスピードを警戒したのか、ほぼ地上と変わらない位置にいたのを辞め慶が届かない上空まで飛んだ。
くそっ、あの距離では攻撃出来ない。そして恐らく次奴の攻撃は。ミオグランは空からの安全圏から口を開き舌を伸ばした。この舌は厄介だなとにかく長い5メートルはあるのでは?とにかく避けなければ。
再び足に力をこめ顔面に目掛けてくる舌を横スッテプで躱す。よし、スキルを使えは当たるスピードじゃあ無い。このまま時間を稼ぐぞ。ミオグワンの長い舌が続けて慶に向かう慶もスキルを発動してかすりもしない。そんな攻防がしばらく続いた。
はぁ、少し疲れてきたか。何分続くんだこれ。いや、それ以前にいくらなんでも疲れ過ぎだろ。
慶は社会人になってもジムなので運動は欠かせない。運動神経も体力も自信がある。戦いの緊張感とスキルというものを使った影響か、このままじゃあオロイが村に着く時間も稼げない。理想はオロイがあの子って言う子を説得し村長も戻ってくるまで粘ることだ。このままでは無理だな。止まらないミオグワンの猛攻は躱しなが考える。再び長い舌が慶の顔面に迫っているが前までの攻撃と変わらない。幾多と同じ様に横にスッテプして躱そうとするが
何っ?舌が2つに裂け元の攻撃方向の胸では無い方向、慶に足元に向かい捉える。一瞬の出来事に出来事に何も反応ができず慶の左足首に巻き付いた。裂けた舌が元に戻り足首を更に縛る。
どうする、何か有効な攻撃手段は
「うわっ!」
慶の体が反転し宙を浮かぶミオグワンが翼を羽ばたかせ、みるみる空を昇る。
ここまでか、これで舌を足首から離せばそれで終わりだ。カッコつけて1人で立ち向かうなんてどうかしていたな、俺の責任で人が傷つくのが耐えかねないことも要因だが、異世界に生き返えされて負けない力なんてものを宛にしすぎたか。元の世界に帰りたかったがこんなデカイだけの鳥すら倒せないのでは魔王など話しにならないか。
慶の視線はマンションの最上階と変わらない高さ。足首にあった感触がなくなり視界が地に近くなる。全てを諦め視界を暗くする。ドンと鈍い音が響き渡る。
「何ぜだ?」
慶は立ち上がった。高度から落ちたダメージは擦り傷がいくつか出来た程度だった。スキルの影響か?スピードをあげるものじゃないのか。何にでも負けないスキル。つまり、誰の攻撃でも避けれるスキル、速度の上昇だと思っていたが他にもあるのか?防御が上がるスキルとかか?いや、1つだけ速度も上がり防御面も向上するスキルがあるか。
とにかく、前の攻撃で避けるには限界だ知っていてもあの裂けた舌の攻撃はよけられない。つまり、反撃するしかない。だが方法が推測が当たってなければ今度こそ終わりだな。
ミオグワンから伸びた舌、今度は初めから舌が2つに裂けて攻撃を仕掛ける。先に襲ってきた舌を避けるとすかさずもう1つの舌が襲う。
頼むぞ。もう1つの舌に合せ右手で拳を握り舌を攻撃する。慶の拳が舌にめり込み吹っ飛ぶ。やはり、力も上がっている。俺が与えられた力は肉体強化か。