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高橋

「馬屋橋トンネルか……」


 高橋は、自室のパソコンの前で呟いた。いくつかの心霊口コミサイトを巡ってみたが、馬屋橋トンネルの噂はどこでも話題に上がっていた。心霊現象にはさほど詳しくないが、これなら信用しても良さそうだ。


 サイドテーブルのオレンジジュースを一口飲み、高橋は満足げに頷いた。場所は有名なほど良い。馬鹿で暇な人間がたくさん集まるからだ。それに例え心霊現象が嘘だったとしても、事故や喧嘩なんかが起こる可能性もある。カレンダーを確認する。金曜日。夜中出歩くにはうってつけだ。高橋はジュースを飲み干し、鼻歌混じりにクローゼットのドアを開けた。こういうときに着るのは、お気に入りのベージュの上着と決めていた。袖を通し、鏡で着こなしをきっちり確認する。


 ちゃりん、と音をたてて車のキーを取り、高橋は意気揚々とガレージへ向かった。


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