伍
なんか書いててよく分からなくなった。
それでもいいぞ!!っていう方だけどうぞお進みください。
俺は何かに取りつかれたように里に生息している【火竜草】を探しては記憶を見た。狒狒の言葉はあまり信じてなかったがこの記憶は紛れもない事実だと感じることができた。
その記憶はとても暖かくて俺の頬を暖かい雫がつたう。空っぽだった俺はとても満たされていくのを感じていたと同時に虚しくも感じた。
なんで俺はあの洞窟の中に閉じ込められていたのか・・・・
あの洞窟での扱いはとても褒めたものじゃなかったし・・・
あの時聞いたギルの声とても必死だったな・・・・
最後に見た母の口調が合ってない。
分からない・・・・俺の記憶は暗闇だったし・・・
久しぶり・・・いや違うな初めて走ったが、流石にキツイな・・・・・はぁはぁふぅ~~~・・・・見つけた。
俺の慣れ親しんだ洞窟だとすぐにわかった。そこに【火竜草】があった。息を整え息を吹きかける。
眩い光を放ち記憶を開いた。
その景色は半透明でも確認でき、空は晴天で木々からは木漏れ日が漏れる涼しげな風景だった。洞窟の外の景色はこうなっていたのかと感心しながら見入っていた。すると遠くから歩いてくる少年が見えてきた。
だんだんと近づいて来るとその容姿が確認できてきた。
半透明の暁色の髪に黒に近い赤い瞳をした少年だった。どこかで引っかかるなっと思っていたら俺の双子の弟サヴェルだとわかった。
サヴェルは神妙な顔をしつつ洞窟の足元の明り取りしゃがみ洞窟の中を確認しようと覗き込んでいた。必死に手を伸ばし何かを掴んだのか口元をニヤつかせていたサヴェルよ人相が非常に悪く感じるのは気のせいだろうか・・・・?
サヴェルは慎重に掴んだ何かを手前に引き始めた。
ジャラ・・・ジャララ
・・・・・・サヴェルくん?その音はもしかしなくても俺が繋がれていた足枷じゃないのかな?・・・・・・・・・引きずられた記憶がないことは相当幼かったからか・・・?
サヴェルは俺の足を掴んだのか徐に足枷の鎖から手を離しゆくりと何かを触り安堵の息を吐く。
『よかった・・・兄様・・・・・はっ!!僕は兄様をまた引きずってしまった。・・・・ごめんなさい』
サヴェルは慌てて手を離し瞬時に直立不動になり勢いよく頭を下げていた。うん、別に気にはしてないけどまたって言った?言ったよね?
俺は自分の足を確認したがそれらしき外相はなかった。
『兄様・・・・今日は報告に来ました。』
うん?なんだい?言ってみるが良いぞ弟よ・・・・なんてな・・・なんか虚しくなってきた。
サヴェルは頭を下げたままだったが、徐に顔を上げる。その表情は苦渋の表情だった。
『僕・・・・いや、俺はずっと不思議でした。なんで母は【人間】に会うときいつも口調が変わるのか・・・・・・いつも警戒して俺達の方が断然力があるのに・・・・なぜ母は畏怖を【人間】に向けているのか・・・・・ずっと不思議でした。いつも母は言っていたんです。【人間に気を許してはいけない】と・・・・・俺は聞き流していたのかもしれません。恥ずべき行為でした。母の・・・里の皆が言うとおり【人間】はクズだった。俺は火竜の導き手なのにいつの間にか【人間】との共存を望んでいたのかもしれません。それを改める時が来たのです。私利私欲に目がくらみ古からの契約を破り里の仲間を攫い・・・・口に出すも悍ましい行為をしていた。里を・・・仲間に手をかけた時点で契約は白紙に戻りました。・・・・・・・兄様、俺は自分が怖い・・・・俺は火竜を導くことが不安になりました。だって・・・・【人間】は敵だと殺めろと俺の中の血が騒ぐんです・・・・・自分が我を忘れて暴走することがとても・・・・とても恐ろしくてたまらないんです。』
サヴェルの頬を雫がつたう。静かに泣いていた。それはとても幻想的でとても絵になる姿だったと答えておく。
『兄様をこの場に閉じ込めたのは俺達ですが、正直俺は兄様が羨ましい・・・・里の皆から守られている・・・・兄様が・・・・なんで・・・・なんで兄様が俺の兄として生まれてきたんですか!?なんでこの里に生まれてきたんですか!?紫炎竜が生まれたことは【人間】の極一部に知られてしまった。兄様がずっとその姿のせいで俺達がどんだけ苦労してると思ってるんですか?・・・・・・いい加減にしてください!!もう・・・・たくさんだ・・・・俺の婚約者が【人間】に犯されそれを俺に知られるのを恐れ自ら絶ってしまったんです。・・・・・・・・・・っ俺は・・・・兄様が・・・・・・大っきらいだ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘です。ごめんなさい・・・兄様・・・・兄様が居てくれたから俺は自我を見失かったんだ・・・・大好きです。とても、とても・・・・・でもかけがえのない存在なんです。たった一人の半身だから・・・ですが・・・・もう、隣に立つ資格がありません。たくさん・・・・たくさん人をこの手で・・・・・気づいたら俺・・・・・・』
サヴェルよお前の気持ちよく分かるぞ。俺も別の立場だったら同じことを考えただろうな・・・・やっぱり双子なんだなぁっと感じるくらいか?
サヴェルは徐に片膝をつき頭を垂れる。
『俺、諦めたくない・・・・兄様の隣に立つ資格がなくなっても・・・・傍にいたい・・・・だから俺、兄様を護る盾になる。兄様が安心して目覚めれるように護るよ・・・・・・・俺・・・・・―――・・・いや、我はサヴェル・オルワ=ディシュン―――アヴェル・オルワ=ディシュンにこの血肉が絶え果てるまで忠誠を誓うことを新たに誓う―――――・・兄さ・・・・・』
顔を上げ微妙に悲観顔を作っていたサヴェルは瞼を瞑り意を決したかのように真剣な面持ちになる。
『【火竜王】様・・・・・俺は貴方を支えることができれば本望です。サヴェルとは恐れ多すぎで俺には余る・・・・新たに【ギル】と名乗らせてください。・・・・・未だに未練が立たれなくて・・・・・俺がサヴェルの時初めて俺に向けて喋ってくれた兄様の言葉・・・・・・全ての始まり・・・・俺の始まりは兄様だったから・・・・・』
花がほころぶように笑ったサヴェル・・・・・もといギル。お前だったんだな・・・・・お前が必死に俺を洞窟から出るなといったのは俺を護るためだったんだな・・・・
『では、俺はもう行きます。失礼します。』
ギルは恭しく頭を下げ踵を返し去っていく。
待ってくれ!!俺はそんなの望んでいない!!気にもしてない!!俺の隣など資格など気にせず半身として・・・双子として傍にいるだけで良かったんだ・・・・だから行くな!!
行かないでくれ!!お前までいなくなったら俺はどうすればいい?もう里には誰もいない・・・・分かるんだ・・・・分かってるんだ・・・・・
俺は無我夢中で手を伸ばすが、当たり前に半透明のギルは霧に消えていった。それと同時に花は輝きを失い枯れ散っていった。
「また、探さなくちゃ・・・・・」
徐に立ち上がり彷徨うかの様に歩き出す。どれだけ歩いたかしれないが【火竜草】に触れようとしたとき何者かに勢いいよく腕を握られ振り上げられた。見るとさっき会った狒狒だった。
「それぐらいにするんじゃ」
「はなせ・・・よ・・・俺は見なくちゃいけないんだ・・・・」
「それは聞けんな・・・・よく周りを見なさい」
狒狒は周りを見渡す。それに吊られて俺も視線を上げ周りを初めて認識した。
木々が枯れていたのだ。里が跡形もなかったが、まだかろうじて緑はあった気がする。
狒狒は眉をしかめながら俺を睨んだ。
「儂が教えてしまったせいもあるしの・・・・【火竜草】の記憶を見るのはよしなさい。」
「なんでだよ?俺達にしか見ることができないのなら見てもいいじゃないか・・・」
狒狒のあまりの眼光の強さに慄きながら答えた。
「見てわからんか?これ以上【火竜草】を失えばこの森の生態系は壊れてしまうんじゃよ」
「え?」
「今まで、火竜が存在して魔力をこの森に無意識のうちに注いでいたから・・・・魔力が溢れていた。じゃが火竜が居ない今それを支えるのがこの花だけになっておるのじゃ・・・・お主とて本望じゃないであろう?火竜の・・・・里の・・・営んできたこの森を壊すことは・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わか・・・・った・・・・もう見ない・・・・だから下ろしてくれ」
「いいじゃろう」
狒狒は豪快に笑い徐に下ろしてくれた。
「・・・・あ・・・・の」
「なんじゃ?」
狒狒は顔を近づけて小首を傾げた。ちょっこわいな・・・・・
「教えてくれてありがとうな・・・・」
「あぁ・・・・・・・・時にお主はこれから何をするか決めてるのか?」
「さぁ?ここに留まり逃げて生きているかもしれない仲間が帰ってくるのを待つのもいいかもしれないと思ってる」
「うむ・・・・それには依存はないんじゃがな・・・・・」
「なんだよ?」
「前にも行ったが、お主の精神がまだその器に収まり切れてないから本能に飲まれてしまうと・・・」
んん?確かに言っていたな・・・・それが?
「ここまで言って理解せなんだか・・・・・・・・良いか?本能に飲まれるということは竜になって気力続く限り暴れ回るということじゃ」
「なっなんだって!?これ以上暴れることはしたくない!!」
「そういうと思ったぞ!儂から一つ提案があるんじゃがここより遥か南の方に樹海【カーノルド】と呼ばれる森があるんじゃが」
「それが?」
俺はよく分からず小首を傾げた。
「其処に住むと言われる森の守人と呼ばれる【バルディオ】族がそんなお主を何とかしてくれるかもしれん」
「かも知れないのか?」
「かもしれん」
狒狒は二度言った。
「その【バルディオ】族というので俺が助けられるのか?」
「その一族はなんとも不思議な力の持ち主らしい・・・・と聞く」
「らしいのか・・・」
「そうじゃ・・・・儂も【カーノルド】には行ったことがあるが、一度も出会えなんだ・・・・何年とその森を彷徨ったんじゃがの・・・・不思議なことに出会えなかった」
「えっ?ダメじゃん・・・・どっどうしろと?・・・・・・・・・んっぐ・・・・っは・・・・・っぃ・・・・・」
追求しようとしたら突然胸の痛みが走る今までの比ではないくらいの痛みだった。まるで心臓を握りつぶされるかのような痛みに耐えられず前のめりに倒れこむ
「ムッ!!いかん!!魔封じの結界から出たせいで今まで耐えられてきていた魔力が爆発しようとしておるんじゃ・・・・これを」
狒狒は何処からともなく大ぶりな真っ赤な魔石を取り出し俺に翳した。俺は無我夢中で手を伸ばしそれを掴む。
「なっおった」
不思議なことに魔石を掴むと痛みがじわじわとなくなっていった。その代わり魔石が微妙に削れていた。
「治っておらんわ・・・・魔石が暴れるホンの少しの魔力を削ったんじゃ・・・・こうしてはおれんのぅ・・・・今すぐその森を目指し逝くほうが良いじゃろう・・・・・気休めじゃろうがあと三つ位持っていけ」
「この魔石がなくなったら俺はどうなるんだ?」
「下手したらこの世界の半分が無くなるかもしれんのぅ・・・・あぁ、そんな顔そしなさんなその森に行ってもしはない・・・その森には強力な結界が張ってある」
「わからないじゃないか・・・・早い話が俺が・・・・」
言い終わる前に人差し指で静させた。
「それから先の言葉は死んでいった火竜達の為にもならん・・・・この世界の何処かに存在する火竜を導くんじゃからのぅ・・・・お主はなんじゃ?」
「そんなの決まってる。記憶のおかげで俺のすべきことは理解した。俺は火竜王の紫炎竜として火竜を護り導いていくんだ」
「よかろう旅立つが良い・・・・・お主の旅路を祝福する家族が居ない今儂が祝辞を唱えさせてもらうかの・・・・・火竜の為に、己の為に、これから出会う多くの出会いにお主に幸あれ」
俺に【火竜草】の花を大量に降らす狒狒に物申したい記憶を見るなと言った奴が舌の根も乾かぬうちに花を積んでいたという事実に・・・・それを追求すれば笑ってこれは火竜以外が摘んだぐらいでは記憶を見たときとは違ってすぐ生えてくると抜かいていてなんか複雑な気がした。
かくして俺は、慣れ親しんだ洞窟もとい里を狒狒が用意した即席旅セット抜かしながら渡されたリックを背負いながら大手を振る狒狒に苦笑しつつ小さく手を振って旅に出た。
まだ見ぬ【カーノルド】を目指して
最後まで読んで下さり誠に有難うございます。
今後も亀更新で投稿していきます。