参
続きです。
拙いですが、読んでくださると幸いです。
ゴロンと仰向けになり深く息を俺は吐いた。
《やあやあ、また来たよ》
どこからともなく声が聞こえだした。俺は昔から聞こえるこの声が嫌いだった。何故かって?負の感情を纏ってるからだ。コイツの声を聞くと激しい頭痛になるんだ。
《君は何も喋らないんだね、本当に》
顔も分からないはずなのにほくそ笑んでいるだろうと思うくらいのテンションだ。
《君が今日聞いたギルという奴の正体を知りたいと思わないか?思うよね?》
俺は正直どうでもよくて何も言わずに目を閉じた。その様子を同勘違いしたのかペラペラと聞いてもいないことを喋りだした。
《あいつはお前を恐れている。本当さ、私がこの目で確かめてきたんだから確かさー》
そんなことどうでもいい・・・・だって出られないんだから・・・・まぁ、出ようとすら思わないんだが・・・・
《君も早く逃げたほうがいいんじゃない?狩りに遭うかも知れないよ?》
狩り?なんのことだ?また戯言を・・・・少し黙ってくれないかな・・・・ふぁ~ぁ眠いんだが・・・
《あぁ、寝てはダメだよ?起きてなきゃ何が起きるかわからないんだから》
声は心配そうな言葉を喋るが声は弾んでいた。その様子にイラっときたが睡魔には抗えなかった。意識を飛ばすのも時間の問題だなと思うまもなく暗転した。
あちこちの痛みで意識が戻ってきた。霞む視界を瞬きながら周囲を把握しようと目を凝らしたらビックリした。
俺が貼り付けられていたんだから当たり前か・・・・・
「さぁ、言え紫炎の玉の在処を」
下卑た笑いで俺に刃物を向ける男が視界に入った。その奥でうつ伏せに倒れながら親の敵のように睨む若い女がいた。
「妾はそんなもの知らん!!それにそ奴がどうなろうと関係ない」
その女はあちこちに傷を作っていた。初めて見る顔だな~と思ってると首筋に痛みが走った。いって~な!!俺は男を睨んだ。
「なんか文句でもあんのか!!あぁ!!?」
そう言うと俺を殴り始めた。正直意味分かんねぇよ・・・ご丁寧に猿轡を噛ませやがってくそが!!
「!!やめよ!!そ奴は忌み子じゃ!!憎らしき化物なだけじゃ!!消えるのは構わんが妾の前では殺してくれるな」
女は必死の形相で叫ぶ。い、いや、なんか矛盾してません!?よくわかんないんだが・・・・
「そなたも何を打たれておるのじゃ!!反撃をせぇ、反撃を!!妾はお前がどうなっても構わんのじゃぞ!!」
そう言い女は近くにあった手頃な石を震える手で俺に向けて投げてきた。弱々しく飛んでくる石を男が避ける。と、同時に俺に当たる。
「す、すまぬ!!」
自分で投げていて謝るってどゆことだ!!
「くたばり損ないが!!死ね!!」
男はしびれを切らしたのか弱った女に刃物を振り下ろした。
「っぐ・・・・に、逃げよ・・・・アヴェル」
女は呻きながら俺の名前を呼ぶ・・・・名も知らぬ見たこともない女に俺は直感で母親だと感じた。
母は力なく俺に手を伸ばし絶命した。
一度も会ったこともない母を殺させて俺は激しい虚無感に囚われる。そしてふつふつと怒り、憎しみ、憎悪、恨みが湧き上がる。俺はギルから聞いていた話を信じていないわけではないが母の態度が理解できなかった。何故俺に逃げろと言う?聴き方によっては俺を守ろうとしているみたいじゃないか・・・・
「んだよ、ちっぽけな竜玉しか持ってねぇじゃねぇか・・・・雑魚が・・・・小銭にも成らねぇじゃねぇかエッらそうに他の奴らが護衛するから相当強いと期待していたが肩透かしを食らった気分だぜ」
母の骸から綺麗な小さな赤い玉を男は取り出しながら舌打ちした。
俺達竜族は命とも言える玉をもって生まれてくる。それは死んでもなくなることのない玉その者の分身とも言える。力の宿る玉を目当てに乱獲が問題になってると里の者が言っていた
俺は母の玉をぞんざいに扱う男になおも怒りが募る。
風もないのに俺の髪がうねるのを感じた。
沸々と力が湧き上がるのを抑えることができない。
体が熱を持ったかのように熱くなる。だんだんと男が小さく見えてきた。俺を見上げている・・・・その表情は恐怖一色に染まっていた。
「ま、まさか・・・紫炎竜だ・・・と?」
何を恐れる?お前は俺の母を里の仲間を殺したくせにお前が恐怖するのはお門違いだろ?
俺は可笑しくて笑ったら獰猛な獣の声があたりに響いた。あぁ、やっぱり天はこいつを見逃さなかったんだな・・・・
「た、助けてくれ!!」
獣に食われるがいい
一瞬で終わらせないようになじわじわ殺ってくれると嬉しいな・・・・お前がいくら懇願しても失ったものは帰ってこないんだから
腸が煮えくり返るとはこのことなんだなとその時理解した。怒りで何も見えなくなったし、感じなくなった。ただ、遠くで男のうめき声が聞こえたような気がしたがどうでもよかった。
最後まで読んで下さり感謝します。
今後も亀更新で進んでいきます。