弐
アヴェルがルディアと出会う前のお話です。
拙いですが、読んでくださると幸いです。
面白くないと思ったらUターンをお勧めします。
最初の記憶は暗闇だった。
かび臭い土肌が剥き出しの湿気のある四畳位の広さ
それ以上は進めない。何故かって?決まってるだろう?とても頑丈な鉄格子。それだけでは飽き足らずご丁寧に足枷までつけられてるからな
コトン
足元の明り取りから一日二回の質素な食事が棒か何かで俺の近くまで届けると
「食え」
一言喋り男の声がした。今日はまた違った奴だな・・・
「・・・・・・」
俺は何も言わずいつもの硬いパンと言う食べ物を囓る。
「アヴェル」
「・・・・」
男は俺の名前を呼んだ。俺の名前はアヴェルと付いてると気づいたのはつい最近だと思う・・・・今まで他愛のない話をしていく奴らが話の所々で促すように呼ぶんでなんかの掛け声かと思っていた。
「今日は何を喋ろうか?あぁ、天気がとってもいいぞ」
「・・・・・・」
「この前俺の子供が産まれたぞ、因みに男だ」
「・・・・・」
それがどうした・・・・と喋ろうとしたが矢継ぎ早に話す顔も知らない男。だが、何故だか不快感はなかった。俺が何故ここに閉じ込められてるのか疑問に思ったが今ではどうでもいいと思えてきた。
「おい、聞いてるのか?」
「あぁ」
「おっ!!お前生きてたか?」
「生きてなかったら喋れない」
「里の奴らはお前が何も喋らないと心配していたぞ。顔も見ていないと」
「・・・・・だったらなんで俺はここに居るんだ?この場所にいるから顔を見せることも出来ないだろう」
何を当たり前のことをぬかしてるんだ?奴にわかりやすいように足枷の鎖を掴む。あたりにその音が木霊した。
「・・・・・」
「ここに閉じ込めただけでなくお前らは様々な知識を与えてくれる。俺は知識を知るたび不思議でならない。それに俺はあんた達の名前すら知らない」
「・・・・・」
それを喋ると必ずこいつらは黙る。気に入らなくて眉を潜めてしまう。ほんっと分からん。
「・・・・・はぁ、いいだろう教えてやるよ。お前が忌み子だからだ。お前を産んだ母親の腹を文字通り裂いて産まれた」
「はぁ!?何だよそれ・・・・意味わからん」
俺に母親が居たのか!という感情が一番強かったが・・・・昔聞いたときは別の奴が不幸のコウノトリが運んできたんだよ・・・なんて裏声でぬかしていなかったか?
「それでだな、お前の母親はお前を憎んだ。二度と子の出来ない体になっちまったからな・・・・お前の双子の弟も瀕死の状態が続いたせいで未だに手乗りサイズだ」
「俺に双子の弟が居たのか!?初耳だ!!それに手乗りとはどういうことだ?」
「当たり前だろう?初めて喋るんだ」
俺はいつもよりも目を見開いてしまった。顎が外れるかと思ったぞ・・・
「お、弟は何て名前なんだ?」
俺にアヴェルとついてるからには見たこともない弟も名があるはず・・・・いつか会った時に呼んでみたいじゃないか!!さぁ、教えろ!さぁ!!
「ん?あぁ、サヴェル・オルワ=ディシュンと言う」
か、っこいいな!!おい!!聞いたか?俺の名前よりも断然いいぞ!?サヴェル、古代語で【導くもの】という意味だな・・・・俺の名は【破壊と創造】と言うらしい・・・・・
「そうか」
俺は嬉しさのあまり声が弾んでるのが自分でも分かるくらいだった。
「っと、今日はここまでだな・・・・んじゃな」
「待ってくれないか?」
「んだよ?」
「あんたの名前はなんて言うんだ?教えてくれないか?」
「・・・・俺の名はギルだ」
「ギルか・・・いい名だな」
俺は初めて里の奴らに歩み寄った。
「初めて言われたぞ・・・・それ」
「何を言ってる?ギルは【全ての始まり】その名のとおりだ」
「何がだ?」
「俺は初めて里の、ギルに名を聞いた。俺にとって初めての一歩だ。俺は今までこの生活に諦めがあったが、外の世界を見てみたくなった」
「・・・・・・」
俺は自分の手のひらを見つめながら視界が開けるのような感覚がした。
「この慣れ親しんだジメジメ感もそう不快ではなかったが」
「ダメだ!!」
最後まで言い終わる前にギルは強い口調で怒鳴ったため俺はびっくりして喋れなくなった。
「・・・・・」
「だ・め・だ!!」
今度は一つ一つ区切ってもう一度ってきた。まだ何も言ってないだろうが・・・・
「いいか?絶対にここから出るなよ?」
「そういうが、ここからでられる要素すらないんだが・・・・」
「それでいいんだ・・・俺はもう帰る」
そう言うとギルは足早に離れていった。何をそんなに不快にさせてしまったんだろうか・・・・俺は小首を傾げながら真っ暗な天井をボーッと見つめていた。
ドックン
「ぅぐっ!!」
突然心臓を掴まれたかのように苦しくなる。俺は服越しに胸を抑えながら気休め程度に前に屈み痛みが引くのを待つ。
最近よく苦しくなるけど時間が経つと自然と収まるからあまり気にしてないんだが・・・・ふぅ、収まったな・・・・あー苦しかった。
ゴロンと仰向けになり深く息を俺は吐いた。
最後まで読んで下さり感謝します。