拾
まあ、そんなことあって無事に俺のもとに母の竜玉が戻ってきて良かった。だが、拳骨を頂いたのは不満だな・・・やっぱり好きになれないと思った。まる。
てなことがあって、今は何故か俺は、城下町に来ている。それも、ムカつく風竜の奴と一緒に・・・・
「なんて湿気たツラしてんだ?」
ヘラリと笑いながら俺の頭をガシガシと撫でるが正直荒い・・・・視界の端で結構な量の髪が抜けた・・・・ま、まだ若いはずだから生えてくると思いたいなぁ~・・・遠い目をしたのは言うまでもなかった。
「ほら、あれ喰うか?俺の中では今のところハマってるんだ」
俺の手を引っ張りながら屋台ってところに連れてかれた。串に刺さった肉に秘伝のタレをたっぷりとかけたと店主が自慢げに話しているが俺は信用してないだってまだ食べてないからな!
「喰わねえなら、俺が・・・」
ッパク!!
『あっつ!!!・・・・・旨いな!!なんて食べ物なんだ?それにこの甘辛いタレがまたよく合ってるな・・・店主流石だな!!』
「んだぁ?坊主、ここんもんじゃァねェな?なんて言ってるかわかんねぇな」
やっぱり俺の声は認識できないんだな・・・・どうせ訛りが強いって言いたいんだろうが・・・・
「旨いんだどさ」
「あんちゃん分かるんかい?でも、うっれしいね!気に入ったぜ坊主!もう一個喰いねぇ」
『ありがとう・・・店主に幸運が来るといいな・・・・・・・』
俺はお辞儀と一緒に店主に運が廻ってくることを祈ろう・・・それしかできないしな!!うん、旨い。またこれたらいつか来たいな。
「おまえ、なにやってんの?」
『何って?』
「無自覚かよ・・・」
『?』
風竜は頭の後ろを掻きながらぼそっと呟いたがよく聞こえなかったな・・・
「もういいよ・・・それ、あんまりすんなよ。面倒ことに巻き込まれたくなかったならな」
それってなんだ?そうこう考えてると風竜は先に歩き始めた。俺も慌てて後を追う。だって知らないところだし、人間がいっぱいいるし・・・・
『【コーカス】まって・・・!!!』
俺も走り出そうとしたら勢いよくUターンしてきて俺の口を塞いだ。
『おま、ちょ、なn・・・・・・・なんでそれを知っている?』
俺は口を塞がれているため喋れないんだが・・・・てか、顔が・・・怖いな・・・
『答えろ・・・なんで俺の真名を』
そう言いながらやっと俺の口から手を離し、見つめる視線が痛かったので俯いてしまったのは自然の摂理だと思う。
『だって、俺・・・こー・・』
『だぁから!その名を呼ぶな!!ここではガクトって名乗ってんだからガクトって呼べ!!』
物凄い形相で俺を覗き込んだため鼻の奥がツーンとしてきた。
『・・・・ガクトが先に行くからだろう』
「・・・・はぁ、だからって真名で呼ぶなよ」
落ち着いたのか深い溜息をし、威圧感を漂わせていた雰囲気も霧散したらしいので、ガクトを見上げると困った顔をしていた。なぜ?
『俺、ガクトの名前知らないし・・・・人間がたくさんいるところで風竜と呼ぶわけにもいかないだろ?』
俺は小首を傾げる。こー・・・じゃなかった。ガクトは顔に片手を当てしゃがみこんだ。どったの?
「確かにそうだけど・・・そうなんだけど・・・・なに?俺のペース、こいつのせいで乱されてねぇ?乱されてるよね?」
何か言っているが早口と小さすぎでよく聞こえない。
『こー・・・・ガクト?大丈夫?』
俺はリントが良くするあれをやった。頭ナデナデだ。ちょうどしゃがんでるしいいよね?俺も一回やってみたかったんだ。
なでなで・・・
なでなで・・・
なでなで・・・・・
ビッシッ!!!
おぉ・・・痛い。何も手を叩き落すことないじゃんかよ!!他にも嫌がり方があっただろうが!!・・・・・おりょ?顔が赤いぞ?耳まで・・・なぜに?色白だから赤いのがすごく良くわかるな~~
「っち!!き、気安く触んな!!」
真っ赤になりながら言っても迫力なんてないんだからね!・・・ガクトの真似をしました。すんません。
『ガクト』
「もう何も言うな・・・・ほら、お前の行きたいところ行けよ・・・俺もついててやるから・・・」
ガクトは溜息を吐きながら立ち上がり俺を見下ろした。俺は気になっていた方に歩いていこうとしたら・・・・・・ガッチリと手を掴まれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのね、お前俺の身長に合わせる気無いだろ?足が・・・足が浮くんだよ―――――!!
なんとか手を振りほどいた。てか、あっちが先に解いた。だってこいつ身長に合わせねぇわ、歩幅も考えなしで俺コケたもん。そんときだけ手を離すってこいつ鬼だ!!って思った。・・・・・あっ、違った、竜だ。
『二度と手を繋ぐなよ!!!お前とは金輪際ぜぇったいに繋がない!近づくな!!』
俺は擦りむいたとこを摩りながら睨む。真名を呼んで悪いことしたかな~って思ってたけど!撤回だ!撤回!!
「そういきり立つなって、謝っただろうが」
軽い!謝り方が軽いんだけど!?ムカつくな!!畜生・・・・
「あ、ほら、あれ見てみろよ移動式の見世物してるぞ?異国からの劇もしてるみたいだな?」
『なんだそれ!!行ってみたい!何処だ?』
さっきまでの痛みが嘘のようになくなった。俺は人だかりに向かって全力疾走だ!!
「あ、待てよ!!」
ガクトが走ってくる気配を感じながら振り切れないかなぁ~っと思いながら人だがりの海に飛び込んだ。小さいと楽でいいな目指すは最前線!!
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も亀更新で行く予定です。