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黒銀の決意 ~混沌転生~  作者: 愛卯
第二章 忌まれる狐編
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第34話 期間と二人の鍛錬





 そして、朝が来た。


 朝はさらに肌寒く、凍えるような空気だった。

 一応、洞窟の入り口を閉じていたのだが、呼吸のために開いている小さな通気口だけで、かなり気温が下げられているようだ。

 体を起こし動かすことによって、少しずつ冷めきった体を温めていく。

 魔法で入口を開け外を見てみたが、まだ朝の鐘も鳴っていないほどの早朝で、起きるには少し早すぎたかと考える。しかし、二度寝するのもあまりよくないと思い、そのまま起きておくことにした。



 体が温まるまで一旦洞窟内を温めようと、火魔法を使う。

 火とは本来、燃料と酸素と温度の三つの条件が必要だ。火はそもそも何かの物体に酸素が結びつく酸化現象なのだから、当たり前だと言えるだろう。


 しかし、魔力だけで現象を起こす魔造型の場合はこの限りではなくなってくる。魔造型の火はすべてを魔力で補うため、三つの条件を必要としないのだ。

 干渉型はもちろんその三つを必要とするのだが、魔造型の火は極端な話、水の中でも発生させることが可能だ。威力や効率が極端に下がってしまうがな。


 その特性を生かして洞窟内の酸素を奪わずに火魔法で温度を上げていく。洞窟内の空気は少しずつ温められていき、その影響か、メイレーが起きてきた。

 メイレーは目を手でこしこしと擦りながら、眠そうにこちらへ近寄ってくる。てくてくと覚束ない足取りで、今にも転んでしまいそうだ。



「おはよう、メイレー」


「おは、よう…………」


「どうした、あまり眠れなかったのか?」


「少し……」


「まだ起きるには早いから、寝てていいんだぞ?」


「ううん、起きてる…………」


「無理はするなよ? とりあえず、顔洗ってうがいするか」



 そう言ってメイレーに魔法で作ったお湯を渡す。

 場所は洗面所の代わりにお風呂場で朝支度をすることになっている。俺が居なくてもそこにある水瓶から水を補給できるようにだ。その代わりお風呂内に洗面台は存在し、元日本人としては少し変則的な風呂場になっていた。

 俺も朝支度のため、火魔法を継続しながら手洗いうがい歯磨き等をしっかり行う。もちろんメイレーにも教えて、一緒に歯磨きをした。


 歯磨きを終えた辺りで朝の鐘が鳴り、もうすぐ日の出であることが分かった。

 その鐘の音につられて、ゲンとハイリも起きてくる。


 ……ゲンの髪が、爆発してる。



「ふぁぁ~、おはようー」


「おはよう、二人とも。これはテラスの魔法? なんか暖かいけど……」


「おはよう、これはただの火魔法だ。とりあえずお前ら二人も顔洗ってこい。あとハイリ、ゲンの頭をどうにかした方がいいと思うぞ?」


「それはどっちの意味? まあとにかく、寝癖の方はいつもなんとかしてるから、任せて」


「ん? あれ、今俺、さらっと馬鹿にされたような気がする……?」


「気のせいよ。ほら、さっさとこっちに来る」


「はーい」



 ……どっちが年下かわからんぞ。


 その後は昨日の鍋の残りを温めなおして朝ごはんにする。

 メイレーが眠そうなのが気になったが、それ以外は特に問題もなく朝食は終了した。



「それで、朝はまずどうすんだ?」


「とりあえず正午までは買い物だ。体が小さいから、何から何まで特注になってしまう。その注文をしに行く。だから、良い防具屋を教えてくれ」


「わかった!」




 予定を告げ、朝食の片づけをしていると、やけにハイリがそわそわしていた。ゲンやメイレーと共に手伝ってくれるのは嬉しいのだが、傍でそんな仕草をされると正直鬱陶しい。

 面倒なのもあって、正面から聞いてみた。



「さっきから何をそんなにそわそわしている」


「いや、その、えっとね。テラスに頼みたいことがあるんだけど……」


「ふむ、とりあえず言ってみろ」


「あの、魔法、教えてくれないかなって……」



 言葉尻に緊張を含ませながら、ハイリにしてはとても分かりやすくオロオロしてた。


 魔法を教えていくことについて考える。本格的に教える、となればずっと付いている必要があるだろう。武道と同じく反復練習が大事な項目であるが、横に指導者がつくかどうかで大違いなのだ。

 とはいえ、ゲンと同じくそこまで面倒を見る気はない。故に、



「概要、基礎を教える程度なら構わない、片手間で出来るしな。知っている限りの呪文も教えよう。お前達では魔法教本を手に入れたり出来ないだろうからな。それでいいか?」


「う、うん! ありがとう。ちなみに、テラスが使っている魔法を教えてもらう事は?」


「……構わんが、呪文詠唱の魔法より数十倍難しいらしいぞ?」


「それでも、お願い」


「……基本的なやり方だけだぞ」


「それで十分よ、ありがとう」



 魔法に関しては誰かにやり方、呪文を教えてもらえなければ発動すら出来ないだろう。最低限条件を整えてやるぐらいは良いかと、一緒に暮らしていくことも考慮して認める。直接展開式魔法は無理かもしれないが。

 言葉通り基礎とその後の練習方法だけを教えればいいと当たりをつけつつ、カリキュラムを脳内構築しながら片づけを終えた。




 話と片付けを終え、街の方へと繰り出す。

 しばらく歩き、連れてこられた防具屋はこじんまりした様相をしていた。

 木造で、扉は開けられており、中は八畳ほどのスペースしかない。奥に作業場があるようだが、大きく繁盛しているようではない様だ。


 立地的にも微妙な位置であるこの防具屋、いや、武器も売っているようだから武具屋か。ここを選んだ理由は、店主の差別が無く、ボッタくらないかららしい。

 注文してから品物を受け取るという工程をとるタイプの売買は、信用が一番大事だから、こちらとしてはありがたい。

 さっそくゲン達の地理知識に助けられた形と言えるだろう。ゲン達が騙されてなければだが。


 少なくとも二人に嘘は無いようで、ゲンとハイリは一緒に入ってきているし、二人とも警戒心無く武具たちを眺めている。

 だからと言って忌み子への差別心が無いと決まったわけじゃないので、メイレーにはフードをかぶったままにしておくように指示しておき、店主と話をつけていった。


 店主の見た目は、おじさんとお兄さんの相中といった感じで、茶色の髪と目をしている。どうやら店主にも何かしらの過去があり、その影響で差別をしないよう気を付けているようだが、特に興味ないので話を掘り下げたりはしなかった。

 採寸をしてもらい、防具のタイプを言っていく。


 俺が注文するのは要所要所だけを守る身軽なタイプの防具だ。

 重く動きにくい鎧の防具を着て、俺の長所である速さを殺すなどあり得ないから、当然の選択と言えるだろう。


 メイレーにも作らせるか迷ったが、今は辞めておいた。

 メイレーが使う武器によって防具も変わってくるだろうし、メイレーの能力がどれだけのものかもわかっていないからだ。

 そのあたりが決まってから注文した方がいいだろう。


 最後に、店主との相談でいくら出せるかという話に移る。

 武具はその性質と、武力を持つ人の経済事情から高いものが多い。兵士は高給なのだから、仕方がないことだと言える。



「大体決まってきたな。しかし、こんなサイズの防具を作るのは初めてだから、時間かかるし、金額もそれ相応だぞ? しかも、もう一セット作るかもしれないって……」


「いくらぐらいで出来る?」


「うーむ、一応全身じゃなく急所や関節だけだから…………全部で最低金貨一枚、出来れば三枚欲しいところだ。サイズが小さすぎて既存の防具を調整するより作った方が早いからな。どうしてもオーダーメイドは高くなっちまう。値段はこれが限界だ」


「じゃあ五枚で作ってくれ」


「……は? いや、五枚って! そ、そんなに大丈夫なのか!?」


「問題ない」



 そう言って金貨を見せる。

 金を安易に見せる行為は賊を呼び寄せかねないからあまりしたくないが、この容姿じゃ今のは嘘だと思われかねんからな。俺が金貨を出したことにゲンとハイリも驚いている。

 メイレーは、お金の価値というものを分かっていないのか、みんなの反応に首をかしげているだけだ。



「もちろん、それ相応のものを作ってもらうぞ?」


「それはもちろんだが……。……あんた実はどっかの貴族様の子か? やけに綺麗な顔してると思ったら……。そんな金額を出してくれるなら、一か月くれないか? いいものを作るにはどうしても時間がかかる」


「詮索は不要だ、気にしないでくれ。…………一か月、か。しばらくしたら、こいつの防具を注文したり、武器を頼んだりしたいんだが、それを含めるとどれぐらいになる?」


「そういえばもう一セット作ると言っていたな……どちらにしろ手作業だから一つずつ作ることになるし、あとから注文というのは構わないんだが……それだとさらに半月掛かるぞ?」



 予想以上に時間がかかると言われ、戸惑う。

 しかし、焦り過ぎてもダメなのは確かだ。防具無しで不帰の森に突っ込むのは得策ではないし、ここは我慢すべきか。



「……わかった。それで、武器は?」


「とりあえず、今使っている武器を見せてくれ」



 言われたとおり、背負っている剣を見せる。

 刃は両刃で刀身は俺の身長の3分の2程度の、赤紫の剣。固有名なんてものは無いが、この国で作られる剣の中では最高水準の物だ。

 だが、それも度重なる戦闘で痛んできており、刃毀れも見られる。不帰の森に入る前に変えておきたいが、変えるなら良いものにしたい。



「結構いいもの使ってんだな……これ以上のものとなると、オーダーメイドより既に作ってある輸入品の方がいいぞ? 質が違う。ここじゃなく他を当たった方がいいと思う。ここ以外でも、国産は良いものはあんまりないだろう」


「どこで輸入品の剣は買える?」


「あー…………これはさらに遠い。二か月後に大きな行商が来る。それならいい武器があると思うぞ。ただし、値段は高いがな」


「二か月か…………。教えてくれてありがとう、助かる」


「いやいや、こっちは大きな依頼が入ってきて家計も大助かりなんだ。お互い様だよ」



 その後、細かい打ち合わせをしてから店を出た。

 話し合いの結果二か月は滞在することになりそうで、いくら指名手配がおざなりとはいえ、少々危機感が出る。あまり目立たないように暮らしていくべきだろう。





 午前の買い物が終わり、途中食材を買って、昼食を食べてから鍛錬に入る。まずはハイリだ。

 なぜハイリかというと……



「さてハイリ、まずはお前の鍛錬からだ」


「えー、俺はー?」


「心配しなくてもハイリの指導はすぐ終わる」


「? どういうこと?」



 渋るゲンを(なだ)め、ハイリと向き合う。



「ハイリ、自分の魔力を感じ取ることは出来るか? 魔力が多ければそう難しくないはずなんだが……」


「わかるわよ? お腹の辺りにあるこの、温かい? やつよね?」


「感じ方は人それぞれ違うが、おそらくそれで合ってる。それを動かせるか?」


「……動かすの?」


「どれぐらい動かせるかどうかで、魔法の練度が変わってくると言っていい。基礎の基礎であり、一番大事でもある工程だ」


「わ、わかった。どんな感じにやればいいの?」


「ふむ、簡単に言うとその魔力を意識しながら、動けー動けーと思い続ける感じだな」


「…………そんな簡単でいいの?」


「ところが、そう簡単でもない。例えて言うなら、魔力を新しい手足として動かせるようにならなければならないのだから、かなり難しい。感覚的なものだから、教えるのもあまり出来ない。ある程度動かせるようになるだけでも時間がかかって、根気がいるぞ」


「ん、わかったわ、じゃあそれをしてればいいのね?」


「ああ。……さて、次はゲンか」



 ハイリが集中し始めたのを見計らい、ゲンの指導に入る。

 ゲンとメイレーは、さっきの説明を聞いて自分たちも実践しているようだった。っっと、危ない。



「メイレー、ストップだ」


「? どうして……?」


「理由は後で説明するが、魔力関係の鍛錬は俺と一緒にやるように。わかったか?」


「わ、わかった」



 メイレーの魔力移動を止めて、今度こそゲンと向き合う。

 ゲンは未だにうーん、うーんと唸って魔力を移動させようとしていた。



「ゲンも自分の魔力を感じれるのか?」


「一応、これじゃないか? っていうのはあるんだが……動かん……」


「魔力の鍛錬をするのは構わないが、今は剣の稽古にするぞ?」


「うぐー、わかった」


「ゲンが得意としているのは、オーソドックスな両刃の剣でいいのか?」


「ああ。だけど、普通より短めかな。前に持たせてもらった剣が重くて重くて、持ち上げる事すら辛かったんだ」


「そうか、じゃあ普通のショートソードを作るか」


「作るって……ああ、そういうことか」



 ゲンが俺の非常識に脱力したのを確認し、ゲンの為に剣を創造する。

 剣は土魔法で周りの硬い岩石に干渉して作るのだが、せっかくだから五連土魔法にして上級魔法に匹敵する出来の石剣を作る。


 そうして作られた石剣は、下手をすれば鉄にすら届きそうな頑丈さを持っていた。

 流石に金属の強い粘りは再現出来なかったものの、単純な丈夫さは十分だと言えた。


 それをゲンに差し出したのだが、やはりかなり重そうだ。



「重心には気を使ったつもりだが、不具合があったら教えてくれ」


「それは大丈夫だとは思うんだけど、結構重いな。これを片手で軽々と持てるテラスって……かなり馬鹿力なんだな」


「ある程度力をつけないと剣を振ることすらままならないんだから、これからは筋力の鍛錬もしっかりさせるぞ?」


「うげぇ……筋力鍛錬って重いモノを持ち上げたり下ろしたりするんだろ? おれ、剣を振っていたいよ」


「ああ、大丈夫だ。剣を振らせてやるぞ?」


「本当か!?」


「ああ」



 ゲンは剣を振ることを嬉しそうにしていた。口振りから、剣を振る機会が少なかったのだろうか?

 だとしたら、ゲンにはしっかり剣を振ることを楽しんでもらおう。


 まず基礎を固める為に、たくさん素振りをさせないとな。



「まずは素振り千回。50回毎に回復魔法で筋肉の疲労は回復させるから、安心して振ってくれ」



 ピシッという音を立てて、ゲンが固まった。

 ハイリが俺たちの会話に興味を示したのか、魔力移動を中断して話しかけてくる。



「テラスって回復魔法まで使えるの?」


「ああ、使う事が多いから、実は一番得意だったりする」


「へぇ……テラスって、本当になんでもありね……」


「そこじゃないよね!!?! 気にするところそこじゃないよね!? 千って、千って! 国の正規兵ですらそんなたくさん振らないぞ!?」


「そうなのか。まあ、がんばれ。見てるから」


「そんなぁぁ……」



 ゲンが涙目で訴えてきているが、習いたいと言ったのはゲンだ。責任もってしっかりやってくれたまえ。

 俺は壁際に腰かけて、ゲンに素振りを促した。


 メイレーはちょこちょこと隣についてきて、ストンっと座った。


 半泣きになっているゲンが素振りを始めるのをしっかり見て、きちんとまっすぐ振るように指導する。

 ある程度問題なくなってきたら、フォームが崩れてないか見張りながら並列思考で魔法の練習をする。せっかく時間があるのだから、自分の鍛錬もしっかりと行おう。



 ――あとは、メイレーと話さないとな。



「メイレーの本格的な練習は、明日にする」


「え……どうして?」



 メイレーは眉を寄せ、今にも泣きだしそうな表情をする。突き放すようなセリフに大きな不安を覚えたのだろう。だが、俺は別にそういうつもりで言っている訳じゃない。



「メイレー、今日寝れてないだろう。ずっと眠そうにしていただろ?」


「……うん」


「メイレーの持つ“力”は、解析した限りかなり強大なものだ。暴発しないよう細心の注意が必要だし、寝不足の状態でするのは危険すぎる。だから、今日は見送るべきだ」


「…………ごめんなさい……」


「環境が変化して眠れなくなるのは変な事じゃない。もちろん今後は色々な所に行くつもりだから慣れてほしいが、最初からしろなんて無茶は言わないさ」


「……わかった……ごめんなさい……」


「………………メイレーはなんで、眠れなかったんだ?」



 メイレーは俯いて、泣きそうな声で、語る。耳はシュンっと俯き、尻尾は垂れ、表情も暗い。

 見てるこっちが辛くなるような様子に、何か理由があるのかと尋ねずにはいられなかった。出来るだけ声音を柔らかくして、怯えさせない様に尋ねる。



「眠りたく……なかったの……」


「……なぜ、眠りたくなかった?」


「こんな、こんなに、暖かいのは、私には、きっとありえないから」



 メイレーはポロポロと涙を流し、グシャグシャな声で語る。隣に居る俺にも届くか怪しいぐらい、消え入りそうな声で。



「こんなしあわせで、こんなに、欲しかったものが、たくさん、手に入って」



 メイレーは、自分の気持ちを、吐露する。俺は、半ば無意識にメイレーを撫でた。

 するとメイレーはさらに泣き、感情の発露を強くする。



「きっと、夢だから…………眠りたくない…………幸せな夢が、覚めてしまったら、嫌だから、怖いから……眠りたくないの…………ぇぐ……」


「そう、か…………」



 まだメイレーとの会話も多くなく、事情を深くまで知らない俺ではすべてを察することは出来ない。想像はできても、真に理解することは出来ないのだ。理解には、長い時間が必要だろう。

 だから、今はメイレーが少しでも安心できるように。それだけを願い、出来る限り優しく撫で続けた…………。





 ………………

 …………

 ……




 夜。


 晩御飯を食べた後、ゲンとハイリは疲れからか泥のように眠り、今この部屋には俺とメイレーだけだ。

 日の光を取り入れる穴も今はほとんど閉じられ、薄っすらとした月明かりしかなく、スキル【夜目】を使わなければ何も見えない。


 そんな場所で、俺も夜の鍛錬を終えて眠るところ、なのだが…………このままだと、またメイレーは眠れないだろう……。


 ……仕方ない。



「メイレー」


「なに……てらす……?」



 子供の体で眠らないなどとんでもなくきつい筈なのに、放っておくなんてできない。朧げな声で返事をよこしたメイレーを見据え、俺は言う。



「……こっちの布団に入ってこい」


「えっ、で、でも、私なんかがっ……」


「いいから」


「きゃふっ」



 渋るメイレーを無理やり一緒の布団に入れ、頭を撫でる。


 初めは目を白黒させていたメイレーだったが、次第に落ち着いてきて、撫でられるのを気持ちよさそうにしている。出会ってからの日にちで考えれば嫌がられてもおかしくない程なのに、こんなに無警戒で受け入れてくれることに、罪悪感と憤りと、少しの喜びを感じる。

 そんな感情を隠しながら、メイレーを抱きしめて、ゆっくりと安心させる様に語り掛けた。





「メイレーが眠るまで、このまま頭を撫でてやる。メイレーが眠っても、このまま抱きしめておく。俺が起きるときは、メイレーも起こす。……だから、安心して眠れ」




 その言葉に安心したのか、メイレーはゆっくりと目を閉じて……1分もしないうちに、眠ってしまった。


 ……よほど、疲れていたんだろうな。


 俺はメイレーを抱きしめながら、深く息を吐いて、意識を沈めて行った……。






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