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黒銀の決意 ~混沌転生~  作者: 愛卯
第二章 忌まれる狐編
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第25話 二週間の成果

 





 男騎士の首がゴトッと落ちて、断たれた傷口から鮮血が迸る。石の床は大量の血で汚れたが、先の戦闘で既に血だらけだったため、大きな変化は起きていない。

 濃い鉄の臭いに顔を(しか)めながらも女騎士は深く深く息を吐いて……こちらへ向いた。



「救援、感謝する。危ないところだった。怪我はないだろうか?」



 きりっとした表情で質問してくる女騎士に、「問題ない」と適当に返事しながら考える。

 考える事柄はこれからの行動だ。

 もし女騎士が俺を事情聴取か何かで連行しようとしたならば、状況次第で殺すか気絶させるか逃げるか行動をとらなければならないが……殺すのはデメリットが大きいな。

 こいつはさっきの処刑の宣言で暗に自分が領主の娘だと言っていた。その前にも男騎士にそのような事を言われていたし、おそらく間違いないとみていいだろう。


 もし領主の娘クラスの身分の者を殺してしまえば、親や立場の近いものは躍起になって犯人を捜すだろう。怒りからか怯えからか、保身からかは分からないが、相当数の兵士が捜索に動員されてしまうはずだ。

 逃げ切る自信はあるにはあるが、元々制限されていた行動範囲がさらに狭くなるのは確かだ。


 それ以前に、面倒になったから殺すというのは危ない思考だ。

 俺の邪魔をする奴は問答無用で報復するつもりでいるが、だからと言って殺戮一辺倒ではいずれ理性が消えてしまうかも知れない。

 ……いや、既に百人単位で盗賊を殺しているんだ。

 復讐に駆られ、既に壊れてしまっているのかもしれないな。


 少し話がずれてしまったが、少なくともこちらに殺意を持っているわけではないのだから、安易に殺すべきではないだろう。

 感覚的な事ではあるが、殺す殺さないを見極める事も必要だと、教わったからな。



 話しを戻して、あと取れる選択肢は気絶させるのと逃げるのだ。

 ……ふむ、盗賊の宝を奪っていくつもりだから、気絶させた方が無難か。


 さて、女騎士の返答や如何に。



「君のおかげで大事なく領地に帰ることが出来る。そのお礼を含めて一緒に来てもらいたいのだが……」


「断る」


「やはり、そうか……」


「? やはり?」


「いや……その…………君は、どこかの貴族の……暗部、出身なのだろう……?」



 なるほど、そういう考え方もあるのか。


 明らかに逸脱した身のこなし、剣技。普通とは思えない冷淡な会話、それから伝わるであろう人格。

 そんなものが身につくところと言えば、貴族の暗部ぐらいというのは妥当な判断だろう。ましてやこんな子供が、となるとむしろそれぐらいしか思い浮かばない。

 それに目を見て分かったが、おそらくこの女騎士は俺の身の上を勝手に想像して同情していると思われる。



「……野良(・・)、だ。誰かに雇われたわけじゃない。盗賊を襲って、食い扶持を稼いでるだけだ。」


「そ、そうか……」



 野良とは、貴族などに雇われていない武力を持った者を指す。

 誰かに雇われていると言ってもよかったが、こいつが裏事情をどれだけ把握しているか分からない。

 一応、俺の方でもいくつかの手段を用いて貴族の暗部に探りを入れてるが、こちらの情報を掴ませないように動くとなると限度があり、所謂上級貴族の暗部は少ししか分からなかった。


 エリプセ領は領地としてはなかなかの大きさであり、防衛都市ズューデンを最南端とした縦の楕円形の領地である。

 辺境とはいえ、大きな領地を任せられた貴族の娘。

 となれば、下手に適当な貴族の名前を出したり、変に隠すフリをしては逆に警戒されかねない。

 信じる信じないの判断の話をすればまた話は変わるが、こいつには正直でいいだろう。


 暗部出身であるという事は否定しないで置いた。出生がバレれば狙われる確率大なのに、わざわざ訂正したりしない。

 入れられそうになったから、あながち間違いという訳でもないしな。

 “今は”違うという事だけを強調すればいいのだ。



 女騎士の同情、もしくは憐れみはさらに増したようで、もはや悲痛な表情をしていた。

 女騎士は一つ決心をして、提案してきた。



「その……もし、可能であればだが、うちに、来てみないか? うちに来れば、もう、人を殺さなくて、いいぞ……? 痛いことも、怖いことも、私が、守って見せるから……」



 まさかの提案である。

 どこの馬の骨とも知らない者を引き入れようなど、こいつすぐに死ぬのではないだろうか。

 こういう奴はすぐに騙されるのがオチ…………いや、さっき騙されて盗賊に捕えられたばっかじゃなかったかこいつ。

 反省と言うものを知らないのか……。


 普通、敵対してくる、もしくは怯えると思ったのだが……あんまり言いたくないが、俺の声のせいだろうか。

 顔はフードで隠れているとはいえ、無駄に高い声は隠れていない。

 自分でいうのもなんだが、俺の声は自分の耳を疑うほど可憐である。

 出来るだけ低くしているというのにアルトに届くかどうかすら怪しい声音は、もし子供っぽく喋ったらさぞや保護欲を誘うだろう。

 一言で言うなら、幼女。

 ショタではなくロリータだと確信させるほどの耳が蕩けるような声なのだ。

 自分で言っててドン引きであるが、事実の為仕方ない。

 つまり、女騎士が想像しているだろう設定を考えると……


 ――不幸な境遇に見舞われ、人殺しでしか生きることの出来ない悲劇の美幼女。


 ……なるほど、それなんてヒロイン、と言いたくなる。

 溜息を何度も吐きたくなる現状にクラクラしながら返答をする。



「すまないが、世話になる気はない。遠慮させてもらう」


「そ、そうか……」


「……礼というなら、今日、俺を見たことは忘れてくれ」


「っ、……どうしても、だめだろうか……?」



 少ししつこい……。

 もっと独りよがりな善意ならば切って捨てるように言えるんだが……やり辛いことこの上ない。



「だめだ」


「……わかった。ならば、今日見たことは、忘れさせてもらう。これから私は領地に戻り、騎士団と父上に盗賊とオネストの事を報告しに行く。……その間に、誰かが盗賊の財宝を取っていっても、誰が、なんてことは分かりはしないだろうな」



 …………どこまでお人好しなのだろうか……。

 この国にこんな奴がいるのが信じられん。

 街で出会った人たちは、自分可愛さに弱者を貶めることを躊躇わないような者ばかりだというのに、実は何かの突然変異か?


 ちなみに本来のこの国の法律では、盗賊の財宝は手に入れた場合、すべて貴族及び国に渡すことになっている。

 それを利用してあくどい貴族がマッチポンプを行い、民から財産を搾取しまくっている所もあったりする法律だ。

 故に、最初は女騎士を気絶させようとしたのだが……なんだろうか、この居た堪れなさ。

 ………………はぁ。



「最後に、君の名前を教えてくれないだろうか……? おっと、私の名前を言って無かったな。私の名前はアリシア・エリプセという」


「………………テラスだ」


「テラスか。いい名前だ。もし何か困ったことがあったなら、私の住んでる館に訪ねて来てくれ」


「……どうしてもの場合は、覚えておこう。」


「では、新たなる出会いに幸運を」


「ああ」



 それを最後に俺に背中を向けて女騎士は歩き出す。

 せめてもの礼儀として本名を教えたが、迂闊だっただろうか。

 いや……――もし、これで足がついたなら仕方がないと諦めよう。

 一応、俺の指名手配にテラスなんて名前が付属されていないのは確認済みだし、あそこに住んでいたころは侍女ですら俺の名前を知らなかった筈だし、バレる確率は低いはずだ。


 少し対策するにしても、予定を早めてすぐに不帰の森に入ればいい。

 ……もう一つ、気の迷いを起こそうか。



「……アリシア、さん」



 敬語を使うべき相手、なのだろう。

 嫌味でも付き合いでもなく、敬語を使うべき相手だと、自分の薄くなった感情が呼びかける。

 女騎士、アリシアは一度立ち止まってこちらに顔を向けた。



「アリシアでいい。まだ子供なんだから、無理に取り繕う必要はないんだ。テラス殿」


「…………そうか。なら、俺も敬称はいらない。――最後に二つ、言っておく。一つは、西の鬼畜外道変態娘がエリプセ領に対してきな臭い動きを見せている。ここ数か月以内に入ってきた人員は注意しておいた方がいい。もう一つは単純に忠告だ。子供だろうが疑え。盲目の信頼は本当に大切な人にも危害が及ぶ。……それだけだ」


「っ! ……了解だ。情報提供、感謝する。それに、忠告も、ね。」


「隠しても利のない情報を教えただけで、もう一つは余計なお節介だ。気にしなくていい」


「それでも、だよ。……ありがとう」



 アリシアは微笑みと共に去っていって、その会話を最後に俺たちは分かれた……。




 ………………

 …………

 ……




 盗賊の宝を根こそぎ奪い、隠していた馬車に辿り着いて一息つく。

 今回の盗賊討伐は簡単だったが、同時に少し疲れた。

 しかし“切り札”や“罠”を使わなくてもいい相手だったのにも関わらず、投擲Lv4と交渉Lv3が手に入ったのは大きい。

 投擲は元から持っていたがLv3だったし、交渉は盗賊狩りをしている間には手に入らないだろうと思っていたスキルだ。

 なかなかにスキルも充実してきたし、不帰の森への準備は整っている。

 これが今のステータスだ。



 ========================

 テラス 混沌魔人 ♂ 6歳

 Lv22

[クラス] 混じる者

[クラススキル] スキル合成

[魔力] 48021/50420

[魔法] 全属性

 火3 水3 風3 土3 無3 爆3 氷3 雷3 木3 回復3 毒2

[スキル]

 《武器》剣術Lv5・短剣術Lv3・刺突剣術Lv2・棍術Lv2・斧術Lv1・投擲Lv4・弓術Lv2・盾術Lv2・絃術Lv3・罠術Lv3

 《体質》自然治癒Lv4・体術Lv3・収束Lv1・気配察知Lv2・夜目Lv1・威圧Lv2・潜伏Lv2・忍び足Lv1・交渉Lv3

[ユニークスキル]

 根源を喰らう者Lv2・叡智の選定者Lv1・超越する魂Lv1

[種族固有スキル]

 適応Lv2・思考加速Lv3・並列思考Lv3

 =================================



 たった二週間でこれほどの能力アップはなかなかのものだろう。


 レベルも22と、あと3レベルで【魂節】に届きうるところまで来ている。

 ただ、話や本での情報通り、レベルは加速度的に上がりにくくなっていっている。

 さっきの戦闘でも、もちろん上がってない。

 ここら一帯の盗賊の平均レベルが10代前半、親分クラスは20代前半ぐらいで、つまり相対的に経験値が足りなくなってきているのだ。

 本来上がるレベルはもっと少ないはずだったんだが、周辺盗賊を纏めていた組織を壊滅させたときにかなりの強者たちを倒したことから、ここまでレベルを上げることが出来たのだ。




 魔力の最大値成長度はおかしなことになっている。

 ……ぼんやりとしか知らないが、この国の筆頭宮廷魔導士の魔力量は大体一万程度だったか?

 そして、筆頭宮廷魔導士は少なくともレベル50以上のはずだ。

 俺はまだ22レベルで五万越え……これは後々強みとなるだろうな。

 今はまだ、大規模魔法の行使や超長期戦をしていないから有難みは強く感じないが、それも上級魔法を使えるようになれば変わるだろう。

 たしか、魔力量を良く成長させるコツは、

 ・成長期に

 ・レベルを上げつつ

 ・魔法をたくさん使う

 だったか。

 他のステータスもだいたい同じような成長のさせ方だから、そこを踏まえながら行動しよう。

 有って困ることは少なくとも、無くて困ることはたくさんあるからな。




 魔法は、もともと母さんをして“天才”(親バカの可能性が少しありだと俺は思っている)と言われるだけあり、持っていた魔法は短期間のうちに全て中級魔法の出力で出せるようになった。

 元々幼いにも関わらず密度の高い鍛錬を積んでいたのが開花した形とも言えるだろう。レベルの成長と並行したこともあり、瞬く間に目標としていた中級魔法を習得できた。

 威力としては、純粋な攻撃魔法でオークに対して十分決定打になる程度であり、成果は十分と言えた。




 そして、毒属性。

 数ある特殊属性の一つで、一部の暗殺者などに受け継がれているらしい(噂程度)。

 これはさっきも述べた大きな盗賊組織が持っていた魔法書を奪い、鍵となる【印】を読み取って使えるようになった魔法だ。

 魔法の精度がまだ足りず、中級レベルの出力は出せていない。

 毒属性の特徴としては、


 魔造型魔法の場合、自分が望んだ毒を作り出す。

 ただし、なんでも出来るという訳でもなく、初級程度の毒ではしょぼい効果しかない。

 例えば、効果【相手は死ぬ】という心臓麻痺の毒を初級魔法で作ったところで、直接飲ませてやっと余命5分以内の死にかけの人間が殺せる毒になるだけだ。一体どんな場面で使えると言うのか。

 しかも魔造型の性質を色濃く受け、効果はあまり持続しない。


 干渉型魔法の場合、既存の毒に活性化したりできる。

 ただし、活性化自体は時間制限有りで、使いどころが難しい。

 調合時は役に立ったりする。


 こんな感じである。

 もちろん、持続時間や効果は術者の力量に依存する。

 まとめると、戦闘時には使いにくい魔法だと言えた。



 ただし、この魔法には裏技がある。

 この魔法、使い方を変えれば“解毒”魔法としても使えるのだ。

 活性化の反対の鎮静化作用を起こし毒の周りを遅くしたり、別の毒を持って中和させたりだ。

 毒と薬は紙一重という概念は異世界でも適用されるようで安心? した。




 次に大量に増えたスキル。

 武器系は基本的に盗賊達のスキルがそのまま受け継がれている。

 例を一つ上げるなら、刺突剣術はようするにレイピアの事で、先の戦いの最初では応用的に使わせてもらった。


 中でも異質なのは、絃術だと言えるだろう。

 そう、糸で攻撃するのだ。

 鋼糸で切り裂く攻撃方法、学生時代に憧れる一つの技ではないだろうか?

 だがまあ現実はそう甘くなく、糸を飛ばしたり空中で自由自在に操ったりは出来ない。

 極めれば可能かもしれないが、出来ないうちは基本的にトラップとして使用する感じになる。

 俺が先の戦闘で密かに使っていた“罠”とはこれの事だったのだ。

 なお使用している糸はモンスター製である(元このスキル保持者からぶんどった)。


 罠術は色々と応用が利くスキルで、何もない時は環境自体を罠として使用できたりと、意外と使い勝手は悪くない。



 ちなみに俺が今主に使っているのは剣であり、武器もあれから新調した【赤紫の剣】である。

 赤鋼と紫土石の合金で作られているらしく、頑丈さ切れ味共に赤鋼の剣を上回っている。

【剣術】は多くの人間が持っていた事、盗賊の頭領が持っていた事などによりLv5まであがり、技量において初期とは比べ物にならないほど上がった。


 これらを用いて、片方の手で主力の剣を使いつつ、もう片方の手で別の武器、または敵から奪った武器を使うという変則二刀流のような戦闘方法が今のスタイルとなっている。

 多人数と戦う事、意表を突く事、武器スキルが多数あることなどからほぼ自然とこのスタイルとなった。



 あとは……体質系スキルにおける【自然治癒】の伸びが怖い。

 この【自然治癒】、持っている盗賊はいなかったため、自力で上げているのだ。つまり、正真正銘約二週間でLv4になったのだ。……どんな拷問にあったと質問されそうなほどの伸び方だ。

 本来、治癒系のスキルは伸びにくいらしいのだ……一般人の百倍速でも足りない速度で伸びていると言えば、その凄さが伝わるだろうか。


 おそらく、というか確実に【過度身体強化(オーバーレイズ)】のせいだと思う。

 体組織の破壊、再生、破壊、再生……これを繰り返した結果がこの自然治癒Lv4。

 今では骨折すら放置で一日で全快という結果すら出しかねないレベルだ。


 あと【収束】と言うスキルも自力で発現しており、魔力や気を一か所に集めるときに補正がかかるみたいだ。


 他はまあ、文字通りのスキルであり、その行動に補正がかかるものだ。

【交渉】はさっき手に入れたスキルだな。



 しかしスキル吸収、いや【根源を喰らう者】……優秀だな。


 ユニークスキルに関してだが、【根源を喰らう者】の能力の一つである魂力感知……これが、実用レベルまで至っていた。

 魂力、つまり“魂”を見ることが出来るスキルであり、隠れることは生物である限り不可能。

 まさに強力無比な感知スキルなんだが、今までまったく使用できなかったのだ。どうやら行使するには、スキルレベルではなく俺自身のレベルが足りていなかったらしい。



 このことから発展させていくつか調べたが、どうやら今現在も、ユニークスキルはあまりに強力過ぎるが故にいくつかの能力が使えない状態らしい。

 レベルが一ケタの時はそれが顕著に表れており、魂力感知などは自分にしか使えなかった。

 その他にも、【叡智の選定者】における鑑定を使ったときに現れる頭痛、これもレベルが足りていないが故の副作用、という事だ。

 いや、……“鑑定”、という言葉は似あわない。

 この能力、使えば使うほど“解析”といったほうがしっくりくる。

 これからはそう呼ぼう。


 話しを戻すが、まだまだ魂力感知の精度は低く、精々十メートルと言ったところだ。

 気配察知と併用して何とかしている感じと言ったところか。


 それだけでなく、魔力吸収という力も使えてないから、練習しておいた方がよさそうだな。



 最後に、思考加速は約10倍速まで可能になり、並列思考は9個に増えた。

 レベル固定ではなく、練度次第で少しは増えるらしい。



 ………………

 …………

 ……




 日が落ち始めた頃、馬車を止め、野営の準備を始める。

 ここからは仮眠をとり、次の日には目的地直前の街、防衛都市ズューデンに入る。

 仮眠にも慣れてきたが、やはり疲れがしっかりとれず辛いものがある。一人旅がここまで辛いものだとは思わなかった。



 睡魔に呑まれ、モンスターに食われそうになった時もあった(少し齧られた)。

 町の宿に泊まった時、夜盗が入ってきて殺されそうになった時もあった(なお宿屋はグル)。

 連戦によってミスをして、全身ボロボロで血だらけになりながら半日逃げ続けた時もあった。(馬車を置いていた反対側に逃げたため、回復後に戻って全員に仕返ししてから馬車を回収した)


 精神的、肉体的に追い詰められ、なお一人ですべてこなすには俺はまだ未熟過ぎたという事だろうか。

 何度も命の危険にさらされ、正直、疲れてしまった。

 しかも、馬車を使用しての約500キロでこれだ。

 鬱蒼とした森が続き、馬車を使えずに1000キロ以上進まなければならない不帰の森はどれだけキツいのだろうか。



 そして、未知のモンスターが潜んでいて、誰も帰ってこれないほどの危険度がある。



 生き残れる確率など、考えるだけ、無駄だ。



 無理……なの……か……無駄…………………………違うッ!



 クソッ、疲れがたまって弱気になってしまっている。

 もしここで諦めてしまえば、アイツを、俺の大切な母を殺したアイツを、殺せなくなる。

 アイツは、あいつ等は、許さない。

 絶対に、絶対に殺す!


 そのためなら、この程度、なんてことはない!


 ……ふぅ、休むか。



 さて、気を緩めずに行こう。


 まだまだ、始まったばかりなのだから。







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