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黒銀の決意 ~混沌転生~  作者: 愛卯
第一章 悔恨の幼児編
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第16話 亜人狩りの一味

 






「……ん? おお、親分! 起きたようですぜ!」


「そうか! 目が覚めないなんてなったら商品価値が下がっちまうからな。助かったぜ」


「それにしても親分、本当に大丈夫なんですかい? こいつはオークを倒していたんでしょう? しかも、魔法を使っていた跡もあったって見回りの奴は言ってやしたが…………」


「大丈夫大丈夫。こんなちっこいガキがそんな強いわけねぇだろう? 大方、馬鹿なオークがドジ踏んで転んだところに斧でもあっておっ死んだんだろうよ」


「しかし、すごい戦いの跡があったって見回りが言ってたんでやすが……」


「ぐちゃぐちゃうるせぇなぁ!! だあってろ!!! ……はぁ、たっくよう、猿轡(さるぐつわ)してんだから魔法使えねぇんだし、体もギッチギチに縛ってんだからそんな心配すんじゃねぇよ、この臆病もんが! だいたいよう、この俺が負けるはずがねぇだろうが。おらぁ一人で何匹ものオークを蹴散らしたことがあるんだぜ? ガッハッハッハ!!!」



 あたりに数人の男どもの大きな笑い声が響く。

 何日も洗ってないであろう薄汚れた服、檻状になっている馬車の中には獣人が数人、そして、俺を商品(・・)と言うその下品な顔。

 馬車は上等な事から、おそらく奴隷商に雇われた盗賊上がりの亜人狩りであると思われる。

 獣人の死んだような目と、男どもの会話からおそらく間違いないだろう。

 まったく、まだ俺の災難は終わってくれないらしい。



「しっかし親分、人間の売る当てなんてあるんですかい?」


「なあに、俺らを雇ってくれた主はよ、そんなもんも扱ってるんだってよ。禁止にされてるからこそ高く売れんだとか小難しいこと言ってたが、要するに俺らの報酬が増えるってこったな。それに、ガキとはいえ将来美人になりそうなかわいい嬢ちゃんときた。ガキはおれの趣味じゃねえが、変態貴族にたっけぇ値段で売れんじゃねぇか?」


「おお! そりゃいいや! 金がはいりゃあ女も食いもんも選び放題だ!」


「「ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」」



 捕らぬ狸の皮算用。

 その言葉を心から送りたい。

 この程度で俺を拘束できると思っているなら大間違いである。


 何気に俺を女と勘違いしている発言が出たが、俺の容姿は母さん似だと自負してるので特に怒りは湧いてこない。父親似だとか言われればブチ切れると思うが。



 さて、……とりあえずもう少し待とう。

 どうやら目的地は俺が向かっていた町と同じなようだし、せっかく運んでくれるなら回復に努める方がいいだろう。

 戦闘からあまり長い時間は経っていない様だが、一度眠ったことが功を奏したのか、気の方はほとんど回復している。


 まだ脱出しないとなればやることがない。レベルが上がったようなので、【叡智の選定者】の能力の一つである記録(ログ)確認とステータス確認を行っておこう。






 ========================

 テラス 混沌魔人 ♂ 6歳

 Lv8

[クラス] 混じる者

[クラススキル] スキル合成

[魔力] 5999/7373

[魔法] 全属性

 火2 水2 風2 土2 無2 爆2 氷2 雷2 木2 回復2

[スキル]

 剣術Lv3・自然治癒Lv1

[ユニークスキル]

 根源を喰らう者Lv2・叡智の選定者Lv1・超越する魂Lv1

[種族固有スキル]

 適応Lv2・思考加速Lv3・並列思考Lv3


 記録(ログ)

 レベルが8にアップしました。

 第一魂節(五レベル)を超えたことにより、通常スキルが取得できるようになりました。

 スキル、剣術Lv3、自然治癒Lv1を取得しました。

 種族固有スキル、適応、思考加速、並列思考が1レベルアップしました。

 =================================



 ……おー……。レベルが一気に6も上がっていた。

 これは驚異的なスピードである。本来、レベルというものはそんな簡単に上がるモノではなく、長い人生の積み重ねによって上げられるものだ。


 確かにレベルが一ケタのうちは特に上がりやすく、一年で5レベル程上がるのはそんな珍しい話ではない。

 だがそれも、一年で、である。

 一回の戦闘で6レベルなんて、本来ありえないほどの大幅レベルアップだ。圧倒的に格上であったオークを単独で倒したことによるものだと思うが、おそらくそれだけではない。


 俺のユニークスキル【根源を喰らう者】の能力には、倒した相手の魂を喰らい尽くす効果があり、それによってレベル経験値の大幅upをしているのだろう。

 いったいどれほどの上昇率があるのかは分からないが、早急に力を得たい俺にとってはすごく助かる能力だと言える。

 まあ、この【根源を喰らう者】は特に謎が多く、いまだ全然使いこなせていないのだが……そこは今後に期待だな。



 レベルが8になったことによって、レベル五の第一魂節、所謂特定のレベルの区切りを超えることが出来たようだ。それによって通常スキルが開放されたようだが……これは本には書いていなかった。

 あまり知られていないことなのであろうか。

 魂節を迎えた前後では稀にクラスチェンジが起こるらしいが、今回は起こらなかったようだ。



 そしてスキルである。

 剣術は、母さんと同じ3レベルまで上げることが出来ていたようだ。まだ母さんに届いたようには思えないのだが……。

 確か単純な技量だけでなく、適性、才能など様々な要因が関わっていると聞く。そういうものが原因なのだろうか。

 いや、スキルを得たことによって、剣の技量が大きく上昇しているのだろうか。そうだとしたら、とても楽しみだと思う。


 自然治癒は……、母さんとの鍛錬の頃に回復魔法があるからって無茶してたのと、最近二回もフルボッコにあった結果、だと思う。

 特に二回目は、オークに殴られたことで骨も内臓も完全にやられていたし、過剰な身体強化で【気】にまで損傷が加わってしまったほどだ。


 応急処置として内臓の方は回復魔法である程度治療したが、それも【気】には効果が無いと悟ったあたりで、肋骨の負傷は放置してしまっていた。そのことを思い出し、まだ少し痛む内臓と、折れて…………――――いや、違った。


 これは…………砕けている…………。


 急いで回復魔法を使って治療する。

 何とか【気】は正常に流れてくれているようで、回復魔法の効果は問題なく表れてきた。

 まったく、こんなボロボロならすぐに気づきそうなものだが…………もしかしたら、スキル:痛覚耐性でも手に入れてしまうかも知れない。

 なおに回復魔法は盗賊達にバレないように、縛られた後ろ手で行っている。



 種族固有スキル達も軒並み上がっているようで何よりである。

 特に適応。どうやって上げればいいか分からなかったから、上がったことに安心感を覚える。



 スキルもこんな簡単に上がらないはずだが、これは【叡智の選定者】の効果の様だな。少しだけ、【超越する魂】も一役買っているようだが、どれぐらいの割合かは全然わからん。



 魔力量が基本平均の100を逸脱した、かなりおかしなものになっているが、そんなものは知らん。

 どちらにしろ、中級魔法が使えるようになると言われている第ニ魂節(LV10)、

 上級魔法が使えるようになると言われている第三魂節(Lv25)までレベルを上げないと、出力がしょぼ過ぎて主力としては扱えない。



 大体のステータス確認が出来たところで、回復魔法を使用しながら辺りを見回す。相変わらず死んだ目をしている獣人が四人、檻の中一緒にいるだけだが……。

 気まぐれに何か質問しようにも猿轡をされているため、ぐぐもった言葉にならない声しか出ない。

 外すことは可能だが、バレては面倒なため我慢する。


 状況を【叡智の選定者】も使い正確に把握すると、青年獣人二人と、女性獣人一人と、子供獣人一人。全員茶猫人族の獣人の様だ。

 服も麻のような生地で、模様もなく緑単色で簡素にできている。

 レベルは、青年は17と11、女性は10、子供は3レベルで、スキルも青年二人に爪術なんてのがある以外は別におかしなことはない。

 獣人をしっかりと見るのは初めてで軽く感動を覚えるが、特に有益な情報は無かったのですぐに他に興味を移す。



 馬車の御者をしている二人、会話から推測するにリーダーの盗賊とその手下、あと後ろに連結された荷台に手下がさらに三人いる。この合計五人が、警戒すべき人間の様だ。

 ちなみに全員男である。

 盗賊家業をするにしても若干少ない気がするが、俺には好都合だ。


 レベルは、親分が15、御者をしている手下Aが7、後ろの荷台の手下Bが10、Cが7、Dが6という具合にあまり強そうには思えない。

 スキルは、親分が剣術Lv2、手下Aは無し、手下Bが潜伏Lv2、手下CとDは無し、という感じだった。


 こう言っては何だが、盗賊親分が一人でオークを倒したことがあるなんて絶対嘘だと思う。口ぶりからしても、戦ったことすらないのではないだろうか。


 獣人は人間より高い身体能力を持っているらしい。ならば今捕まっているこの獣人たちは、なぜこんな奴らに捕まったのだろう。

 いや、子供を人質にでもすれば、あるいは盗賊たちが勝てるのかもしれない。そうでもしないとこいつらが勝てるとは思えないのだ。


 魔法も生活魔法すら使えるやつがいない様だし、身体面でも微妙そうなのだから、どう思わざる負えなかった。


 とにかく、戦いになったとして警戒すべきは、人数差と、何か切り札的な道具を持っていないかぐらいだろう。



 完全回復するためにゆっくりと時間を掛けて治癒しているうちに、だんだんと空がオレンジ色になってきた。

 そんな空色になって、やっときっちり治った体を身動(みじろ)ぎすることで確かめ、溜息を吐く。縛られているため、体を動かせないのだ。


 喉が渇いたが、体内には魔法陣は展開できないし、口元に魔法陣を展開してバレたらまずいのでこれも我慢するしかない。まったく不便なことだ。



「あとどれぐらいで着くんです?」


「ああ? 明日の昼にゃあ着くだろう。早く行って換金してーし、今日は暗くなるまで進むぞ」


「わかりやしたぁ」



 口を開けない俺が今もっとも気になっていたことを、御者をしている手下Aが聞いてくれた。

 手下A、良い奴だな。爪ほども思ってないが。


 バレないで確認できるスキルを一通り確かめたところで、震度3はあるんじゃないかという馬車で、先に睡眠を摂ることにする。聞いた距離から考えて、今日の夜脱出するのが得策だと考えたのだ。

 それに備え寝ようと目を閉じると……一度寝たというのに意外なほど簡単に睡魔が襲ってきた。

 今日のオーク戦を考えれば当たり前のことだが、相当疲れていたらしい。



 俺はガタガタと揺さぶられる馬車の中、ぐっすりと眠りについた……………………。












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