案件0:探偵達
-5月16日 アキハバラ 郊外 廃墟ビル-
時間は9時を過ぎていた・・・廃墟ビルの真っ暗な廊下を走る。恐怖心はあるが、今はそんな事を言ってる場合ではなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
-ドンッ!-
走っている目の前の地面に何かが弾けた。
「ふふふ・・・早く逃げませんとあなた様の綺麗な身体に風穴があきますわよ?」
恐らく、自分を追っている者が所持していた銃を発砲したのだろう。
「ッ・・・!」
-バンッ!バンッ!-
自分も持っていたハンドガンで撃ち返す。ただ、相手を見ず後ろに向けて撃っただけなので、命中はしないだろう。いや・・・命中はさせたくない。
「どこを撃ってますの?本気で戦わないと殺されますわよ?」
「何者なんだ・・・あの人・・・」
この戦闘の始まりは30分前だった。一応、その前の時間の話まで戻した方が分かりやすいかもしれない・・・
-朝-
『・・・きてください。』
「ん〜・・・」
誰かに揺すられ少し不機嫌なうめき声をあげてしまう。
『・・・ぱい!・・・てください!』
「あと5分・・・」
『・・・きないと・・・」
-ぴゅっ!-
「うわっ!?」
何か顔に冷たいものが当たり俺は反射で飛び上がる。
「な、なんだ!?」
頬を触ると何か濡れていた。
「み、水・・・?」
「やっと起きましたね、先輩?」
「え?」
横を見ると、綺麗なピンク色で背中まで届く長い髪をした女の子が微笑みながらこちらを見ていた。それに右手に持っているのは、水鉄砲だ。
「ル、ルナ?」
「はい。おはようございます先輩。」
「まさか・・・それで?」
「先輩が中々起きませんから、水鉄砲で起こしちゃいました♪」
「あはは・・・」
確かに、目を覚ますのに、水は効率的だけど・・・
「ほら、早く先輩。フーカさんがもあ朝食作ってますから、急ぎましょう!」
「うわわ!引っ張らないでくれ・・・まず着替えるからさ。」
※
「おはよう、みんな。」
「もう遅い!」
自分の部屋の扉を開け挨拶すると、金髪でロングヘアのポニーテールをした女の子から一喝を受けてしまう。
「ショウが寝坊するなんて珍しいね。」
テーブルにはすでに朝食を食べている女の子がいた。短髪で分かりやすい薄茶色の髪色をしている。
「こら!食べる時はみんなが揃ってからって、言ったでしょ!?」
「もぉ〜・・・うるさいなぁ・・・」
「イリスさん。フーカさんは先輩なんですから・・・」
向かいの席に座りサイドテール(右側)で青紫の綺麗な色の髪色した女の子がイリスに注意する。
「別にボク達ルームメイトなんだから、敬語なんて関係ないよ。ね?ショウ。」
「ま、まあ・・・」
うんとは言えないので、とりあえず、気まずそうに答えておこう。
まず僕は篠川 翔拖郎。都立紅原高等学校三年生だ。
彼女達は少しツンとして厳しそうな感じの彼女は風桐 瘋花。僕と同じ三年生でクラスも一緒だ。まあ、みんなのお姉さんってところ。
イリス・A・リーニャー。出身地はイタリア。僕とは一つ年下で二年生。少し面倒くさがりやで先輩関係なく、タメ語で離すためいつも瘋花から注意を受けている。瘋花だけではなく、もう一人イリスの同級生 押川 フィリア。生真面目で瘋花と同じく少し厳しい。それとは裏に可愛い一面もあるけど、いずれ見る事もあるだろう・・・
そして、もう一人・・・
「みなさーん!トースト焼けましたよ!」
小走りで走ってきた彼女はルナ・ファルツア。出身地はイギリス。イリスとフィリアの同級生で同じクラスらしく、元気があって、見てるとこっちも元気になってくるような能力を持ってる不思議な女の子だ。あと・・・
「わわっ!?」
ドジっ娘でもある。
「おっと。」
何もないところで、躓いた彼女が倒れてきたので、両手で支える。勢いもあったので、胸に飛び込んできた形にもなるが・・・
「あっ・・・」
「大丈夫?ルナ。」
「は、はい・・・おかげさまで・・・」
彼女は顔を赤らませ気まずそうにそう言った。
「もう、そこの2人!いつまでもくっ付いていないで早く朝ごはん食べるわよ!」
「そ、そうですね・・・遅刻しますから・・・」
「う、うん・・・」
今頃恥ずかしくなってきた・・・
※
「そういえば、ルナとフィリアとイリスは今日から銃が支給されるよね?」
「そうだった!すっかり忘れてましたよ!」
朝食をとりながら、学校の話をする。自分達の学校は表向きに都立紅原高等学校となっているが、裏向きは違う。
"政府特別機動治安学校"・・・アメリカ公認でできた自衛隊とはまた違った訓練学校だ。訓練学校とは言っても、日本なので、一部を置いて過激な事はしてはいない。
「ルナはサポーターだから、ハンドガンね?」
「はい!先輩をサポートしますよー!」
サポーター・・・リーダーを補助するポジション。主に支給される武器はハンドガンだ。
「はは、よろしく頼むよ。」
「はい!」
ルナは自信あり気にポンっと胸を叩く。
「確かフーカさんはアサルトでしたよね?」
「そうね・・・アサルトは危険なポジションだから、みんなは来ないように。」
「誰に言ってんの?」
「む、向こう側の人に決まってるわよ!」
向こう側の人?・・・あまり深く考えないでおこう。
説明遅れてアサルトは主に任務の最前線に出るポジションだ。あまりパッとしないと思うけど、いわゆる先に偵察をしたり、応戦出来る重要な役を持っている。支給される武器はアサルトライフルとサブマシンガンだ。
「イリスはエンジニアだったね。」
「そうだよ。武器修理に電子機器にハック・・・そういう系ならボクにおまかせあれってね。」
「うわー・・・かっこいいですねー・・・」
「そうだろー。」
エンジニア・・・イリスが言ったとおり、武器修理や電子機器をハックして情報を得るポジション。支給される武器はサブマシンガン系だ。
「フィリアは・・・」
「スナイパーです。ショウさんは前から知ってたはずです。」
あ・・・少し不機嫌にさせちゃったかな・・・
スナイパー・・・遠距離から攻撃や援護をするポジション。支給される武器はスナイパーライフル。
「前から思ってたんだけどさ〜・・・」
「なんだい?」
「銃って自分で選べるの?」
「あっ!?それ、私も気になってました!」
「そうだね・・・支給されるとか言ってるけど、実はそれ適性で選ばれてるんだ。」
「て、適性ですか・・・?」
「うん。僕らも適性でね。」
「そうね。ハンドガンは、みんな支給されるけど、ポジション別の武装は適性よ。」
「自分とあった武装だと効率もいいからね。支給された後は、改造とかも出来るから・・・
「でも、それって、支給されたばかりはキツイですよね〜・・・」
確かに、そうだ。僕も一年前はお金には困ったものだ・・・
「その事ならみんなで頑張ればいいじゃない。」
「そうですね!」
「私たちは探偵・・・なんですから。」
「そうそう。」
「探偵・・・か。」
「そうですよ!私たち5人はソラヤマ探偵団なんですから!」
ルナが元気よく声を上げた。
ソラヤマ探偵団・・・僕が彼女達と始めて出会い始めて解決した事件をきっかけに結成した。学校内で探偵団が結成されるのは、珍しく少し注目を浴びている。ちなみに、ソラヤマというのは、僕の師匠の名前から来ている・・・らしい?
「もう分かったから早く朝ごはん食べましょ?本当に遅刻するわよ。」
「わわっ!?そうでした!」
「本当にルナは・・・」
「むう〜・・・みんなも話にのってたじゃないですか!」
ルナはムスッとなりそう言った。
本当に早く食べないと遅刻してしまいそうだ・・・
※
「今日もいいお天気〜♪」
「ルナは元気があっていいよねー・・・」
「当たり前じゃないですか!こんな晴れた日に元気じゃなかったら、損ですよ!」
「本当に元気だよね・・・」
雲は少しあるが、太陽には重ならず、日差しの温度が身体全体に渡って行く。
(つくづく思うのですけど・・・)
(なんだ?フィリア。)
(ルナさんってこの学校には似合ってない気がするのですけど・・・)
(確かに・・・)
あの元気な姿を見ていると、格闘術や銃を撃つ姿なんて考えられないな・・・
(でも、こういう場所でも、彼女みたいな存在は重要だよ。あのパワフルさでモラルが守られるんだからね。)
(そうですね。)
なんてフィリアと話していると。
「先輩とフィリアさん。どうしましたか?」
こそこそ話してた事に気づいたルナはこちらを見つめて来る。
「いや、ルナは元気が1番だなって。」
「そうです。ルナさんは笑顔が1番似合ってます。」
「えへへ・・・そうですか?」
「そうよ。ルナの笑顔を見ると、不思議にヤル気がでるのよね。」
「ボクも・・・そこそこヤル気は貰えるかな?」
「みんな・・・」
すると、ルナは涙目になり
「ちょっ、ちょっとルナ!?」
「ボク達泣かすようなこと言ったかな・・・?」
「ある意味は・・・ですね。」
「違うんです・・・嬉し泣きです。」
「ほら、もう泣かないの。」
瘋花がハンカチを取り出しルナの頬まで垂れていた涙を拭く。
(なんか・・・いい光景だな・・・)
そう思ってるのは、自分だけではなく登校している同じ学校の生徒もそう思っているだろう。
(今日もノーマルで行こうかな。)
空をふと見上げそう思った。
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