最弱にして最強の職
基本職は戦士、僧侶、斥候、魔術師です。
他にも魔物使い、召喚士、賢者など多様にありますが、大別すると上記の四つになります。
斥候
それは最も生存率が低い、過酷な職業。
戦士のような攻撃力、防御力はなく。
僧侶の様に自身を癒すことも強化も出来ず。
魔術師のようなに外敵を焼き払う魔法も退ける壁も出せない。
外敵を察知し、罠をくぐり抜け、逃げ隠れを常とし、情報収集と奇襲を武器とする邪道のジョブ。
勝利や栄光を手にするのは彼らではない。
だが、勝利と栄光の道を切り開くのは彼らなのだ。
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アキラの一言で場の空気が凍りつく・・・・・・
巨像を一撃で葬った黄金の槍や悪魔の大軍を葬ったのも武器やクルトの女神の力で自力の力では無いというのが、大衆の見解であり、一部の実力者や王室関係者を覗いてその実力を正しく認知するものは少ない。
つまり、武器や契約した精霊が超一流であり、彼、本来の実力は二流という評価が国外、ブリタニアと帝国を除いた王国連邦の認識である。
学校での尊敬も指導力、知識は一流でも実力は一流では無いと一部の者から影で蔑まれている。
知識を絞り尽くしてしまえば用済みとしようとする派閥も存在する。
医療、兵站の発明、死都奪還、黄泉の入口攻略、ガリア内戦、魔の森の決戦という功績があるにも関らず、斥候ごときがそのような戦闘能力を有する筈がないという固定観念も原因にあったのだろう。
その認識もアキラの思惑通りだということは一部の権力者か彼と戦ったもの、命を救ってもらったもの以外知る由もない。
しかし、今日のアキラは自らその状況を捨てさる【禁句】を発したのだ。
「自分から戦いを挑んでくれるなんて嬉しいですね。 何か心境の変化でも。」
「まチャンネルで構ってくれるって言ってたろ? 」
「ええ 何時でも、何処でも貴方の相手なら歓迎ですが・・・生徒の前で恥をかくことになりませんか?正面から戦うとなると私の方が有利ですよ?」
そういいながらお互い武器を取り出し臨戦態勢になる。
アキラは片手剣をカグヤは日本刀を構える。
「精霊化や大規模な魔法アリでもいいぞ。結界はナミが張るから。頼んだぞナミ?」
そういって自分の相方に指示をだすアキラ。
「ふーんだ 私は所詮、主様にとって便利な女なんですね。都合のいい時だけ私を呼び出して・・・。」
「ナミ?」
ところがナミは唇を尖らしてソッポを向く。
「何時も何時もこの世界の探索、研究に明け暮れ、家庭を省みない人で・・・・・・私たちの愛の巣に美人秘書を入れるだけでなく、学校まで一緒に・・・・・・その上、女帝まで口説いて、親密な間柄になって!」
目に涙を浮かべる一六の少女、頬を紅潮さえ膨らませて拗ねる愛くるしい姿ではあるが言ってる内容は昼ドラのそれである。
「あ~? どうした?」
「慰めなんていりません! 余計に惨めになるだけです! 出番も減らされてどこぞの受付嬢みたいに形骸化していく宿命の女に同情なんてしないで!」
先程までシリアスでバトルな雰囲気を全力で破壊する空気を放ちメタな発言を放つナミ。
呆然とするカグヤ。
「その上、新しい女との逢瀬の手伝いをしろなんて私を馬鹿にするのもいい加減にして下さい!実家に帰ろうと何度思ったか!」
「・・・・・・」
「でも でも主様に必要とされた時、声を掛けられてその瞳が私だけに向けられていると心に喜びと安らぎを得る私もいます。 馬鹿な女と私を蔑んでください。私は貴方から離れられないんです。主様以外に興味を持てないんです・・・・・・」
自分を抱きしめ、ういんういんと可愛らしく首を振るナミ、口説いようだが、可愛らしい仕草と昼ドラのセリフが悲しいぐらい一致していない。
「ナミ?聞いてくれるかい?」
うつむくナミ。
蟀谷をヒクつかせるルー。
何か思案するアリシア
アキラをゴミを見る様な目で見るマリア。
嫉妬に怒り狂う男性陣。
事の成り行きを見守る女性陣。
アキラのミリ飯を食べるアニ。
そろそろ突っ込むべきか悩むガコライ。
興味なく雑談するノエル達。
置いてけぼりのカグヤ。
「俺には君が必要だ、昔も、今も、これからも俺に付いて来て支えてくれないか?」
ナミを抱き寄せ衆目の前にも関らず唇を奪って口説きにかかる。
プロポーズにも取れるが、空気が、先程までのやり取りからとても額面どうりに受け取れるセリフでは無い。
女を惑わす魔性な男の物言いに、男性陣の中で何人か血管がブチ切れ、血を吹き出しながら剣を手にかける。
「ハ ハイ///」
完全に騙されている哀れな少女ナミ。 瞳は潤んで顔を紅く染め、喜びに打ち震える。
「「小芝居はいいからとっとと準備しろ(せんか)!!」」
初代・二代目のツッコミを二人同時にかわし、距離をとるバカップルの主従
達、混乱する観客。 やっと終わったかとアキラ達と付き合いの長い駐屯兵団の面々。
「プークスクス なんどよガコライ、ルーはせっかちだな~。」
「ええ お二人共、今のは少し突っ込みが早いですよ~。」
小芝居をやめていつもの二人に戻る。
「なんで急にイチャつくんだよ! 前回ドヤ顔で女帝に勝負申し込んだろ!なんでドロドロした恋愛演出してんだよ! 子供が見てんだぞ!それでも教師かオイ!」
「流石初代ツッコミ! ルーも負けてられんな!!」
「なんでだ!!」
全くついていけない観客其れを見て溜息をついて説明するアキラ。
「あ~さっきのお芝居は戦う前に相手を油断させたり、闘争の空気を弛緩させる一種の手だ。怒り狂ったり、俺を蔑んだり、呆然として平常心を乱した者はあのまま戦ってたら確実に死んでいたぞ? 生徒諸君と兵士の皆さんほかの人の背中、項を確認してください。」
そうしてアキラの仲間達を除いた観客達が声を上げる。全員の項にバツ印が書かれているのだ。
「注意を逸らして音もなく奇襲をかける。 斥候の基本にして奥義だ。」
そう言うとアキラの輪郭がボヤけて消え去る。
「動くな。」
そう言ってカグヤの背後に現れ身動きの取れないように片手を占め抱きしめる形で片手剣を首にあてがうアキラ。
先程の小芝居に気を取られ、油断して背後を取られたのだ。
「このように簡単に後ろを取れる。このナイフに先日のダンジョンの毒が塗ってあれば詰みだ。」
そう言ってフィオナ、ジョンを見るアキラ。
「あのダンジョントラップを見破り、尚且つ武器にする着眼点は及第点だが、ボス相手に何の情報も無しに挑むのは減点ものだ。先日の敗因は、斥候が先にボスの間に入って偵察をせずに、しかも正面から挑んだのも敗因だ。最初から認識された状態では奇襲攻撃も半減する。 先行して偵察を行うか、あとから援軍、伏兵として戦闘に加わればもう少しまともに戦えたぞ。パーティーの生命戦を握るのは剣でも魔法でもない・・・情報だ。其れを専門に扱う斥候だ。其れを肝に命じることだ。」
その言葉に反省と感銘を受けアキラに尊敬の念を送るジョンとフィオナ、感情を乱されまくった自称スパイのマリアも自分の未熟さと対象の手ごわさを改めて認識した。
「参りましたね・・・・・・精霊化も裏技も出させずに破られるなんて。」
「栄光と勝利の道を切り開くのは剣や魔法だけではないってことだ。 ま 不完全燃焼だろうけどこの埋め合わせはまた後でな?」
「ええ 楽しみにまってますわ。」
そう言ってアキラから離れ、マリア達の方を笑顔で振り向くカグヤ。
「いい師を持ちましたね。 皆さん。」
「はい! 私たちの師は最高です。」
アリシアが誇らしく応え、生徒たちの心を代弁した。
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この日を境にアキラの実力と斥候職の認識が大きく変わる。
最弱にして、最強の職、斥候と認識され、ルーの愛読書のNINNJAもベストセラーになり、七英雄アキラのジョブという事も伴って一大人気の職となるのだが、それはまた別の話。
斥候職のプレゼン回でした。




