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異世界攻略のススメ  作者: 渡久地 耕助
狩猟祭りは甘い香り。

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舞台裏のススメ

お待たせしました。

更新再開します。

今週より週間連載を心掛けます。

 


 ギルドナイト達に包囲されました。

 馬鹿騒ぎを鎮圧するには過剰殺傷オーバーキルな戦力だが俺相手には丁度いい布陣である。

 最も先頭で頬を少し膨らませているリンだけでも十分だと思うが。


 彼らには包囲されたのはこれで三度目だろうか。

 一度目はシアが王都から召喚状を持ってきた時。

 二度目もシアが夏の恋騒動(トゥエンティーフォー)と呼ばれる馬鹿騒ぎに連れてきた。

 そして今回で三度目。


 嫉妬に狂った若い連中相手に無双してたらシアの姉である実行委員(リン)がギルドナイトを引き連れて駆けつけた。

 

 ギルドナイト。

 ギルドと騎士団から集められた精鋭中の精鋭。

 通称「暗部」でガリアでは悪い子にはギルドナイトに連れ去られるとかナマハゲ的存在である騎士。

 存在は公だが、構成員の素性は長であるマイヤール公爵家以外、全て不明。

 

 それもそのはず、彼らは普段はギルド職員だったり、宿屋の店主、町内の奥様、メイド、冴えない一兵卒といった一般人としての顔と職業を持って生活している。

 

 しかし有事の際は、一般人の顔を隠して逸般人ギルドナイトとして暗躍する集団である。

 怖い。


 彼らは全員があらゆるスキル、装備、魔法で素性を隠している。

 仮面に鴉の羽根つき帽子の銃士服と仮装集団。

 仮装しているが、実力は仮初めではなく、本物だ。

 その証拠に諸外国から来た参加者、観光客、密偵達は彼らの来襲に戦慄している。 

 

 ――あ、あれがギルドナイトか?

 ――武装中立国、ガリアの切り札か。   

 ――何故、彼らがこんな馬鹿騒ぎに出てくる?


 七英雄を止める為には出てきます。

 すいません、精鋭中の精鋭の皆さん。

 忙しいのに俺相手に人員を割いて。


 絶賛、ジト目で俺をみていたリンだが、やがて腰に手を当てため息をついて同行を求めた。


「詰所までご同行願います? 被り物のお兄さん?」 

「はい、正直、すみません。」

 

 降りかかる火の粉を払ったのだが、わざわざ火中に飛び込んだのだ。

 逃げ隠れせず、暴れる手段をとった自分への戒めとして大人しく従う。

 売られた仔牛の如く、ドナドラ言いながら、俺は詰所まで連行された。

 

 後に残された集団は呆気に取られつつも、冒険者相手に無双していた仮装男を連行していったギルドナイトを有する武装中立国ガリアに、只々戦慄するのだった。


 〜〜実行委員会本部詰所〜〜


 大人しく、連行される俺に安堵の息を吐き、謝意を込めた視線ををナミとテレサに向ける精鋭中の精鋭達ギルドナイト

 

 詰所の大天幕の一角に通され、二名を残し、忙しなく街の警護に飛んでいった。

 彼らに今度、差し入れでも持って行こう。

 

 彼らを見送るとリンが奥からティーセットを出し、俺達に茶を出しながら釘を刺してきた。


「本当に困りますよ、アキラさん? オフとはいえ、参加する人は真剣なんですから。飢えた男達の前で女性を連れて練り歩いたら、怒りを買うのは当然でしょう?」


 口調は小言だが、困った様な顔をして少し頬を膨らませながらなので少し、ほんわかしてしまう。

 これが、王族やら、受付嬢、暗部と様々な肩書きを持つ彼女の話術スキルだろうか。

 やはり、侮れないな。


「悪い・・・ 仮装したら大丈夫かなってガリアの熱気油断してたわ。」

 

 素直に謝罪の言葉が出るのだから、恐ろしい。

 いや、悪いのは俺なんだけどね。


「まぁ始祖様と女神様ですから、姿を隠しても私たち、子孫であるクルトの民は感じるものがあるのでしょうね。」


 ガリアとブリタニア、一部の魔族の先祖にあたるクルトの民の血には精霊因子とよばれる遺伝子がある。

 この因子の方で、人間には使えない精霊魔法を、他種族以上に使いこなせるのが【クルトの民】と呼ばる。


 その血が大元であるナミや契約者の俺に強く反応し、男女ともにナミを崇拝する。

 一方、女性は俺に惹かれる傾向にあるが、男性は嫉妬の感情が起きる。


 エディプスコンプレックス


 子供が母親を手に入れようと思い、また父親に対して強い対抗心を抱くという心理的抑圧だな。


 その言葉に思うところがあったのか、護衛のギルドナイトから微妙な空気と視線が俺とナミに注がれる。

 事情を知っている彼らは他の冒険者達と違い、殺気や嫉妬といったものは感じない。

 茶を飲みつつも、|俺(父)と腕を組もうとしてイチャつこうとする|ナミ(母)をみて、居た堪れないような、生暖かい視線を注ぐ様なそんな感じだ。


 裏事情に精通しているからこそ、信仰対象として自分たちの気持ちを整理できているのだろう。

 

「げに恐ろしくは、嫉妬の力・・・いや、この性分は」

「ええ、あまり認めたくないと言いますか・・・」


 俺と腕を組むのを諦めて茶を優雅に飲みつつ俺たちの視線に戸惑うナミ。


「ん? どうしました? 二人とも? そんな心を通わせた様な視線を交わすなんて・・・ハッーー逢瀬の約束ですか、アイコンタンクトですか⁉︎」


 ちょっと煩いので彼女の頭を撫でつつ、大人しくさせる。

 突然の俺のスキンシップに嫉妬を霧散させ、頬を赤らめつつ、大人しくなるナミ。

 それをみて、リンも物欲しそうに、少し首を下げて頭を撫でてもらおうとするが、すぐに首を振り、咳払いしつつごまかす。


「(ナミの)血筋だろうけど流石はクルトの民といった方がいいのか。」

「二年前では大人しいものだったのですが、やはり大元ナミさんが近くにいるからでしょうか、表面化してしまって・・・特に色恋に関しては呪いに近いでしょうね。」


 そして呪いの大元のナミの鬱憤が年に一度の悪霊、魔物の凶暴化なのだから笑えない。

 謂わば、ナミのご機嫌とり、ガス抜きがこの祭りの起源なのだ。


 なんか、本当に済まない。


「兎に角、アキラさんは本当に気をつけて下さないね?」

「ああ、迷惑かけちゃったな。」

「ふふ、じゃあ今度、埋め合わせをお願いしますね。」

「あんまり無茶な要求でなければな」


 受付嬢特有の真意を隠したリンの笑顔に送られ、俺たちは詰所を後にした。


 ◆◆◆◆◆


「魔物側について参加します。」

『どの街から落とします?』

「舌の根も乾いていなーーーうひゃあ!?」


 俺の発言に、即座に肯定するナミ。

 テレサは、真祖口調が崩れて素で驚くが壁ドンして黙らせます。


 因みに騒ぎを起こさない様に、現在、俺は精霊化にょたいかし、ナミは俺の中にいる。 

 男の好色な視線を鋼の心で無視し、テレサの顎を持ち上げて、火を近づけながら小声で話す。


「そ、そんにゃ、ひ、人が見てりゅ、と、時と場所を考えてくだしゃいお姉さま」


 いや、何キャラだよ。

 キャラ崩壊しすぎだよテレサちゃん。


「いや、新人戦に俺たちがハンター側で参加しても迷惑だし、魔物や悪霊の弱体化という事でこうして砂糖を吐きかねないダブルデートをして大本?のナミとテレサを発散させてたけど、弱体化だと新人たちの成長を阻害するから、魔物側にテコ入れしようと思って……仮想も効果無いし、周りの嫉妬を買うより昼間からにゃんにゃんするわけにもいかないでしょ? それともーーーしたいの?」


「や、やぁ〜」


 どうしよう、テレサがかわいい生き物になってる件について。


『私はいつでもウェルカムですよ〜』


 対してナミはブレません。

 融合しているから、嫉妬よりもテレサが可愛いという意見に同調するまでである。

 精霊化の為か、ナミの変なテンションのまま口説く事になっているが、ここからは真剣な話に切り替える。

 

 テレサに壁ドン顎クイを継続しながら今後の方針を小声で述べていく。

 

 あわあわと、顔を真っ赤にする初心で耳年増な真祖。

『後で私にもお願いします。』と俺の中で騒ぐ大精霊ナミ

 

 今の俺の発言は独身貴族からすれば、銃殺刑ものだが、今の俺は見目麗しいお姉さん『きあら』だ。

 二刀流のお姉さんを止める剛の者はいない。


「真面目な話だ、そのまま聞いてくれ。」

 

 目と口調を一瞬だけ変えてテレサを正気に戻す。

 少し残念そうな表情になるが、冷静さを取り戻したのをみて念話で作戦を伝える。


 バカな発言だろうと思うだろうが、俺がこの祭りに参加しているのは何も息抜きだけでは無い。

 消化試合を完全試合にする為の布石を打つ為だ。


「た、確かにカグヤ様に比べてその者らや、ロマリアの深部はどうとでもなるかも、し、しれにゃいけど十分きょういじゃろ? カグヤ様に協力を仰いだ方が。」


 俺の吐息に当てられ、息も絶え絶えの真祖。

 前々から思ってましたが、ちょっとMっ気が強すぎやしませんか?


「カグヤは頼らない。政治的理由もあるけど、彼女の近くには駆除屋のニノが潜伏している可能性もある。」


 一時は俺を追い詰めた手腕に加え、弟子のジョン君共々、高い返信能力、偽装、隠密能力を持つ。

 あらゆる生物をしとめる原罪をベースにした固有能力と、ゴブリンやオークを絶滅させ、七英雄すら一時的に戦闘不能に追いやった薬学知識は侮れない。

 協力を仰ごうとすれば、寝首をかかれかねない。


「それよりも、彼女、性格というか、戦い方がイケイケすぎるから、周囲の被害が半端ないから無理だな。」

「確かに難しいですね。政治的にも周囲の被害的にも難しいのですね。」


 何せカグヤは勇者や魔王を差し置いての最強だ。

 加えて強大な国力を有している上に今の停戦状態に亀裂を与えかねない。

 帝国が負けることは無いが、そもそも戦争が継続、ないし、何方か一方が滅ぶ事が召喚者の狙いなら可能な限り現状は維持しておきたい。

 

 七英雄でも国家に属さない俺とヨッシー(事後承諾、拒否権も慈悲もない)だけでやるしか無い。

 

「それに俺を殺せなくなった勇者とその裏にいる奴らが標的を俺の周りに変えてくる可能性もある。」

「……まさか、生徒たちが?」


 俺が迷宮に手を加えて若手を育てている事を知り、自身のクラスメイトでもあるの身を案じるテレサ。

 だが、彼らはもう十分、強い。


『他の皆さん|私の加護(精霊因子)があるますから、洗脳や魅了の類は大丈夫だと思いますが?』

「そ、そうじゃ、それに主様の周りは強者で揃っておるじゃろう。弟子と生徒もいい感じにそだっておるじゃろ!」

「いやアリシア達は大丈夫だ。 あいつらの心配は去年、俺がこの国を出た時から心配はしてない。」


 迷宮での訓練で鍛えられた彼らは、もう一人立ちできるレベルだ。


「ちょっと狩猟祭と武術会それぞれで課外授業・・・・をする為に舞台裏で暗躍する。」


 俺は狩猟祭、武術大会で行う授業計画と参加する生徒の名前を告げる。

 課外授業の対象者は二名。


悪魔使いマリア神剣シュウの七英雄 この二人と狩猟祭り、武術大会で再戦する。なに、カグヤ相手に比べたら消化試合で練習試合だろう。」 


 ーー死亡フラグが建ちました。


 再び、聴こえだした幻聴を耳にしながら、俺は狩猟祭の舞台裏である魔物を狩場へと転移した。

 



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