朝食
王立学園は週五日授業
残りの二日は安息日と休日で授業は無い。
ただ、この二日間は授業が無いだけだ。
図書室、保健室、訓練場、食堂、迷宮は自由に使える。
勤勉な生徒は自習日として訓練を積むか迷宮に出る。
学費が足りないものは冒険者ギルドに顔を出し依頼を熟して学費を稼ぐ。
街に出て買い物を楽しむなど安息日の過ごし方は人それぞれだ。
俺?
お城で仕事ですが何か?
~ガリア王城 王室食堂~
「え、アキラさんは狩猟祭には出られないのですか?」
「ああ、折角だし弟子に任せるつもりだ。」
安息日は城に顔を出し、朝食を取りながらクラリスと談笑している。
王立学園の教師の前に、アリシアとクラリスの師匠でもあるからだ。
これも仕事だ。
王女と公女の家庭教師……最も今日は公女は迷宮に潜ってるんだけど。
といってもお茶したり、心理学や魔法談義する位だけどな。
「【活性化】は祭りとして処理できる程度の危機だろう?なら楽しい祭りになるように裏方に徹して表は弟子に任せるさ。」
「そうですね師匠が背中に控えてくれたら安心ですねものね。でも【大侵攻】が起きたら師匠の出番ですよ。」
「そんな出番が無いのが一番、いいんだけどな。」
大侵攻
俺とナミの子供が誕生と共に魔王化することで起きる大災害。
世界規模での魔物が活性化、凶暴化し、俺の子供に向かって大移動を開始。
途中にある人族と文明を破壊しながら進んでいくという。
蝗の大群を竜の大群と置き換えれば災害規模が分かると思う。
しかも魔王軍と違って言葉が通じない飢餓、発情状態の魔物の大群だ。
数ヶ月前、それは未然に防がれた。
召喚者に唆された七英雄の一人マリアがナミの危険日を狙って俺の周囲の女性たちを固有スキルを使って扇動、洗脳した事件だ。
この大侵攻とソレを防ぐ名目で聖戦を勃発させようとしてた。
戦争にしろ、災害にしろ多くの命が失われる事になっただろう。
狩猟祭なんてお祭りどころではない。
人類が血祭りにされるわ。
「ふふふ、富や名声、力を一度に手にするお祭りですのに、欲が無いのですね。」
「この世の全てを手に入れたからな。俺が居なくても若い連中に任せるさ。」
世界を攻略するにあたって富、名声、力は手にした。
表での歴史や未来はこの世界の若い連中に任せるさ。
後は裏で煽動して無用な争いを起こそうとしている召喚者共をボコるだけだ。
それで決着が付く。
まぁその前に朝食だな。
相変わらず、エリクさんの料理は美味い。
「もしかして料理長また腕を上げた?」
プレーンオムレツなのに滅茶苦茶美味いんだけど。
思わず、服を脱いでリアクションを取りかけたぞ。
「成長するのは何も弟子や若い連中の専売特許じゃ無いんだぜ?」
王女の後ろに控えていた料理長のエリクさんがニヤリと笑う。
すげぇ王族の料理人なのに、未だ高みを目指すか。
弟子任せの自分が恥ずかしいな。
「あはは、エリクさんには敵わないな。」
「うふふ、私の自慢の料理人ですから。」
そんな質素なのに何処か繊細で且つ料理人の高いスキルが詰まった朝食に舌鼓を打つ。
ああ、平和な俺の王城での一日は始まった。
◆◆◆◆◆
~学園迷宮 二一階層~
- リーパー -
「いや~迷宮の守護者としての対処に迷う光景だね。」
「オイ、同僚に朝食を作らせる貴女に守護者の自覚があったとは驚きだぞ。」
「だって、千ちゃんメイドじゃん、料理も美味しんだもん。同じ女でも惚れ惚れするよ。」
二十一層は庭園だ。
補給所も兼ねてるから自然の幸が多いんだよね。
小川で泳いでいる魚を塩焼きにしたり、茸や野草、木の実で調味料も手に入る。
豚も何匹か放逐しているし、何匹か狩って下ごしらえした物も吊るしてある。
そしてその素材を無駄にしない料理人こそ、二十階層の守護者。
ゴーレム四人衆筆頭
液体金属型のゴーレム。G-1000 通称【千ちゃん】
歌って戦って家事も出来る戦闘メイド型でもある彼女。
守護者なのに家事、料理スキルも充実している。
このスキルは活かさないとね。
彼女が用意した川魚のソテーや目玉焼きとサラダにパン、豆のスープに舌鼓を打つ。
ホント、迷宮で用意したとは思えないクオリティの料理だよ。
ちょっと口が悪いのが玉に瑕だけどね。
「デハ、私は仕事場に戻りますが彼らの相手はしませんよ?」
「いいよいいよ、中々楽しめそうだし、食後の運動には丁度いいよ。」
そう、二十一階層の入り口にはテントが幾つも設置されている。
全員、王立学園の生徒だ。
迷宮は授業で使う施設だから定時になると強制的に一層へ飛ばされる機能がある。
だけど休日の二日間はその限りじゃない。
それを利用して生徒たちが迷宮に拠点を設営しだしたのだ。
昨日のジーク君の入れ知恵だね。
邪魔してもいいんだけど、それだと面白く無い。
ボクを倒す算段も気になるしね。
「ソウイウトコロ、ご両親にそっくりだな。」
「ありがと、最高の褒め言葉だよ。」
ヤレヤレといった口調で千ちゃんは二十層へと歩き出す。
生徒たちが、少々ざわめいたが一切を無視して自分の持ち場へ帰っていった。
うん。やはり彼女は自分の持ち場を突破した生徒には攻撃しない。
ボクと違って守護者の鏡だね。
さて、朝食が終わったらお仕事、お仕事っと。
◆◆◆◆◆
-アリシア-
「陣形はどうします? 対七英雄用の陣形を組みますか?」
前衛三名、遊撃一名 後衛二名の計六人で行う複列陣形。
最もバランスのいい陣形で多対一で戦う集団戦法。
「俺と副会長そしてバァル君が前衛、遊撃はフィオナと後衛はマグドレアさんとサクストン(姉)だな。」
ジークが向こうで朝食中のリーパーを睨みながらも、学食のおばちゃんに作ってもらったサンドイッチを食べながら、冷静に作戦を立てていますね。
どうやら、此方から手を出さない限り、襲ってこない様です。
昨日も帰る際は見逃されましたし。
こういう所は師匠というよりカグヤ様に通じる所がありますね。
礼儀正しく、強者独特の余裕を感じます。
かくいう私は師匠の軍隊レーションを食べています。
お、ドライフルーツが入ってて甘々です。
皆、それぞれ軽食を食べながら作戦を決めていきます。
◇前衛
騎士のジーク タンク
魔法拳士のベルゼ君 アタッカー
精霊剣士の私 サブタンク、サブアタッカー
◇遊撃
弓使いのフィオナ。
◇後衛
祓魔気功士 クレアさん ヒーラー
精霊魔術師 サクストン(姉) ヒーラー
遠近問わず、高い戦闘技術を持つ守護者相手を数の利で攻め、後方支援は治癒術を主体として白魔法と精霊魔法で味方の援護に徹する。
あ、サクストン(妹)のマリアさんは『休みとは休むためにあるっス』といって今日は家でカウチポテトだそうです。
まぁ彼女は七英雄の一人ですから頼る気はありませんが。
私達でこの階層を突破しなければなりません。
彼女の代役として義理の姉クリスタ・サクストンさんが参加してくれました。
精霊魔術と白魔術を扱う優秀な後方支援魔術師なので助かります。
王立学園でも新入生、留学生、生徒会メンバーが揃った布陣。
最も勝算が高い布陣と言えるでしょう。
それに、私の武器は2本ともリーパーに有効打を与えることができる。
「先ずは俺達が攻めていく。他の面々も後方で回復魔法と援護魔法をして、盾をしっかりと構えて術者を守っていくし、補給物資も揃えている。 順次交替しながらチクチク攻めていこう。」
「昨日の雪辱戦だな。」
「確かに彼女に勝てなければアキラさんに追いつけませんから。」
新入生の二人は昨日、ジークと一緒に挑んで負けたようです。
やはり、あの裏技を何とかしないと正攻法では難しいですね。
彼女の攻撃をジークとベルゼ君が防いで私が攻撃。
順次、人員を入れ替え数で押す。
それが作戦の第一段階です。
それにしても、アキラさんの料理は相変わらずいい趣味をしています。
軍隊レーションが充実して軍属としては嬉しい限りです。
◆◆◆◆◆
軽食を終え、私達は守護者と対峙する。
そして私達にとって、最も長い安息日が始まる。
走れ! ガリバーくんをイメージしました。
王様 アキラ、クラリス
ガリバーくん 王立学園生徒の皆様
課題 迷宮の守護者を倒せ。
守護者を出し抜け。
21層を突破せよ。
◇王様の朝食メニュー
王様の料理人の本意気朝食
シェフの本意気プレーンオムレツ
新鮮サラダ
コンソメスープ
焼きたてガリアパン。
紅茶、搾りたてオレンジジュース
◇リーパーの朝食メニュー
20層守護者 千ちゃん手作り料理
採れたて茸と野草のスープ。
釣れたて鮎の塩焼き
採れたて卵で作ったフレンチトースト。
小川で汲んだ回復の水。
◇ガリバーくんの朝食メニュー
夕食の残り&七英雄提供レーション。
昨日の夕飯を挟んだサンドイッチ。
マグドレア教会提供、アキラ協賛 携行食クッキー。
暗黒大陸輸入ものインスタントコーヒー ヨッシー提供。




